中国配車サービス大手の滴滴出行は乗客の殺害事件を受け、一週間相乗りサービスを停止すると発表した(STR/AFP/Getty Images)

中国滴滴ドライバー、女性客殺害 「色白で足が長い」と評価共有

中国配車サービス大手滴滴出行(以下は滴滴)は利用客の女性が殺害された事件を受け、同社が展開する相乗りサービス「順風」(Hitch)を1週間停止すると発表した。中国のインターネットでは、安全性を懸念する多くの声が寄せられている。

殺害されたのは河南省鄭州市に住む客室乗務員の李さん(21)。5日深夜、仕事を終え新鄭空港から市内の自宅に向かうため、「順風」に配車を依頼した。「順風」は同じ目的地に向かう車に相乗りするサービス。到着後、お互いを評価してサービスが終了する。李さんは乗車した直後に、SNSから同僚に送ったメッセージで、ドライバーから卑猥な言葉を掛けられたと不安を訴えた。それ以降、李さんの消息は途絶えた。警察当局は8日、刃物で数十回刺された李さんの遺体を発見した。殺害前、李さんは性的暴行を受けたという。12日、市内の川から容疑者とみられる男の遺体が発見された。

事件を受け、滴滴の配車サービスの安全性についての議論が高まった。中国全国で、毎日約2000万人が同サービスを利用している。

香港メディア「東網」の報道によると、滴滴のドライバーによる刑事犯罪のうち、性的暴行が少なくとも11件、乗客への暴力行為は7件に上る。そのほか、乗客の金品や持ち物を奪う強盗事件も多発しているという。

滴滴は、容疑者の男はプラットフォームに登録した父親のアカウントを使って、配車予約を受けたと説明した。乗客から配車を依頼された場合、ドライバーの顔認証が必要で、登録情報と一致してはじめてサービスを提供できる。しかし、その日この安全措置が「システムの欠陥で機能しなかった」と滴滴は説明した。

またこのアカウントについては、セクハラを働いたとの苦情が過去に滴滴に寄せられていた。滴滴はアカウントの登録者に連絡してみたが、つながらなかったとした。アカウントの閉鎖などが行われず、ドライバーはサービスを提供しつづけていた。

一部のネットユーザーは、SNS上で滴滴ドライバー同士が共有する乗客への評価情報を公開した。ドライバーは、配車を依頼した乗客に対するこれまでの評価を見ることができる。

このなかには、女性乗客について「肌が白くて足が長い」「化粧していなくてもすごくきれい」「声がかわいい」など女性の外見に関する発言が目立っている。

ネットユーザーは、この評価を共有するシステムが「性犯罪の温床だ」と非難した。国内メディアによると、今回の事件を受けて、西安市に住む女性が自身のアカウントに「物静かで美人」「美女」「とてもかわいい」などのドライバーからの評価を削除するよう、滴滴に要請した。しかし、滴滴側は「削除できない」と回答したという。

滴滴は、世論の不満を沈静化させるため、10日、被疑者についての情報提供者に対して最大100万元(約1700万円)を支払うと発表し、事件については「利用者の信頼を裏切り、責任を否定できない」との声明を発表した。

2年前、深セン市でも滴滴のドライバーが強盗殺人事件を起こした。

中国では、タクシー不足で2014年から自家用車を使った配車サービスが台頭した。中国政府は2016年3月、配車サービスを許可した。事業者側はこれまでも「インターネットを通じた配車はドライバーと乗客の利用記録が残るため、むしろ犯罪は起きにくく安全性も問題はない」と主張してきた。中国政府も「都市の渋滞を緩和し、環境汚染の軽減に役立つ」と後押しした。

(翻訳編集・張哲)

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