東シナ海で米軍にレーザー攻撃被害20件以上 中国漁船から=米誌
東シナ海で活動する米軍兵は、中国漁船が関わるレーザー光線による攻撃を受けている。専門誌の取材に答えた米軍関係筋は、同様の事件は東シナ海で20件以上報告されているという。
米国のインド太平洋司令部関係筋は、軍事情報誌「アビエーション・ウィーク」の取材に対して、東シナ海におけるレーザー攻撃は、ある「海岸」からと、中国漁船の両方から放たれていたという。「海岸」は、どの地域や島を指すのは明らかにされていない。
東シナ海における在日米軍基地には、バトラー基地(沖縄県)、普天間基地(沖縄県)がある。
中国によるレーザー攻撃は4月、東アフリカのジブチでも報告されている。米国防総省ホワイト報道官は5月3日、米空軍パイロット2人が、中国軍事基地から数時間にわたり発射されたレーザー攻撃で、目に軽傷を負ったと発表した。
「米国は深刻に受け止めており、攻撃の意図を中国側に問いている」とホワイト報道官は述べた。また、被害は立て続けに起きており、中国側に公式に苦情を申し立てたという。
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2017年、中国はジブチで海軍基地を開設した。わずか13キロ離れた場所には米軍、フランス軍、日本の自衛隊の基地や海外拠点がある。中国は基地を「補給拠点」と説明しているが、装甲車や重火器類を扱う装備と海兵隊が派遣されている。
「海上民兵」になる漁師 操作の容易なレーザーガン
(レーザーガン「Dazzler」US Military Channel@Youtube)
「アビエーション・ウィーク」によると、レーザーガンは、通常兵器のように弾丸は必要なく、特別な技術指導を受けなくても比較的容易に操作できる。そのため漁師でも、他国の民間・軍用機に対する致命的な攻撃を与えることも可能だという。
同誌はまた、中国の漁師は共産党当局の補助金を受けた「海上民兵」であり、大挙する漁船群は「艦隊」になりうると分析。中国漁船は、東シナ海や南シナ海で主権を主張する領域で「先陣」となり、周辺諸国の海洋警備隊や漁船の航行を難しくしている。
ワシントン拠点のシンクタンク「プロジェクト2049」研究所は4月、中国の海洋における軍事的活動についてまとめた報告で、中国共産党政権による沖縄県の尖閣諸島や台湾への侵攻は「民兵になる漁師が先陣となり、海警が護衛する」作戦になる可能性が高いとした。
参考:中国、日本から尖閣奪取に「短期戦争」計画 2020年からの10年の間に=米シンクタンク
中国人民解放軍広報誌の「中国軍事ネット」は2015年、「中国は近年、さまざまな戦闘活動に対応できるよう、国産のレーザー兵器を開発している」と記されている。「レーザー兵器は、短距離では相手の視力を失わせたり、暗視装置を損傷させたりできる」と説明している。
中国も米国も、国連の「特定通常兵器使用禁止制限条約」に加盟している。ここでは、対象者の視力にダメージを与える戦闘機能を持ったレーザーガンの使用は禁止されている。しかし、殺傷力のないレーザー攻撃は、条約に違反していないとして、両軍はレーザーガンを備えている。
しかし、レーザーガンが非致死性の兵器かどうかは線引きが難しい。パイロットが一時的にでも視力を失えば命取りとなりかねない。2015年、FBI職員はワシントン・フリー・ビーコンの取材に対して「低空飛行する航空機やヘリコプターを狙った、地上からの強力なレーザー攻撃は、1マイルまでなら到達する」と述べた。
米国防総省は5月、今夏のハワイ沖で行われる環太平洋海軍合同演習「RIMPAC(リムパック)」から中国軍の招待を取り消した。同省は、南シナ海における係争地域での人工島建設と軍事要塞化を批判している。同誌は、中国軍を除外したのは、ジブチや東シナ海で発生した中国側によるレーザー攻撃事件も関連している可能性もあると指摘した。
(編集・佐渡道世)