あの時 米ホワイトハウスで叫んだ女性は今
「ブッシュ大統領、彼を止めて! 大統領、どうか彼に法輪功学習者を殺させないで!」
2006年4月20日、米ホワイトハウス。王文怡(ワン・ウェンイー)さんは、世界中のメディアが注目する歓迎式典で、ブッシュ大統領と胡錦濤・中国国家主席に向かって叫んでいた。
記者の身分で立ち入りを許可されていた彼女は、すぐに警察に口をふさがれ、その場から退去させられた。
胡錦濤主席の耳に彼女の言葉が届いたかどうかは分からない。ただ、この騒動は欧米メディアで大きく取り上げられ、法輪功学習者に対する迫害に世界が注目するきっかけとなった。彼女が必死に訴えた「殺さないで」という言葉の裏には、どのような背景があったのか。
法輪功迫害の実態
1999年7月、当時の中国政府トップ江沢民は、法輪功学習者を「辱め、経済的に疲弊させ、根絶やしにする」ことを定め、迫害を始めた。数年後、それは単なる信仰団体に対する嫌がらせにとどまらず、「彼らの臓器を摘出し、移植が必要な人たちに売りさばく」というレベルにまで達した。
中国当局に拘束された法輪功学習者たちに対してまず行われるのが、身体検査と血液検査だ。臓器移植を必要とする患者が現れると、医師はリストの中から、血液型がマッチする法輪功学習者を探し出し、彼らの臓器を注文する。注文が入った学習者は、警察によって監獄から引きずり出され、生きたまま臓器を摘出された後、そのまま焼却炉へ投げ込まれる。
通常、自分の血液型とマッチする臓器ドナーを見つけるには、5年~10年はかかるが、中国では長くても2週間程度で見つかる。つまり、どのような血液タイプの患者が来ても、常に対応できる程の大量の生きた臓器バンクが存在しているのだ。
国内外から患者を集める中国で、臓器移植はすでに巨万の富を生み出す一大産業に成長した。そこには警察、軍隊、政治家、医師らが複雑に絡み、人類史上類を見ない残虐な大量殺人が行われている。
今も後悔していない
ネットを始めとするすべてのメディアが統制されている中国で、一般市民が法輪功学習者の境遇を知ることは不可能だ。王さん自身、直接中国の市民に伝えたくても、帰国は許されていない。このような状況で、中国人を含む世界中の人たちに迫害を知ってもらうには、あの場で叫ぶしかなかったと話す王さん。行き過ぎた行為と一部のメディアから批判を受けたが、彼女は今でも後悔していないと話す。
「それは良心に基づいた行為です。極悪非道な大量殺人が中国で行われているのに、黙っているわけにはいきません」
現在、「臓器の強制摘出に反対する医師団」のメンバーとして活動する王さん。迫害が止まり、彼女が再び中国へ帰国できる日が来ることを願っている。
(翻訳編集・郭丹丹)