ウイグル会議代表「身体検査を受けた人はもう2度と戻ってこない」中国臓器狩り民衆法廷
ロンドンで開かれている「民衆法廷」では、臓器移植のために無実の人々が大量殺害されているとの証言が世界各地から集まっている。
4月6日から7日まで開かれた法廷で、研究者、ジャーナリスト、医療専門家、および収監を経験した人々など十数人が証言した。出廷した専門家らは、中国の気功法・法輪功の学習者や、少数民族ウイグル人などの迫害対象となった人物から、中国共産党政権が系統的に拘束、管理、病院、軍にまたがる臓器移植ビジネスのために、人々から臓器を強制摘出していると証言した。
民衆法廷は、国際法上問題があると考えられる議題を有識者らが検証する模擬裁判。これまでイラン、ベトナム、北朝鮮における人道犯罪などを取り上げ、世界各地で開かれてきた。
中国当局による国家ぐるみの臓器収奪問題を検証する、民衆法廷は初回の2018年12月で、弁護士や医師らからなる陪審員7人が、中国では無実の囚人から「かなり広い規模で」強制的な臓器の摘出が行われているとの暫定判決案を下した。
最終判決前に暫定結果を公表するのは異例。議長によれば、その目的は、臓器収奪問題の迅速な世界的周知により「罪のない人たちを危険から守る」ためだという。
中国当局による臓器強制摘出・臓器狩りは2006年、カナダの人権弁護士デービッド・マタス氏と元閣僚デービッド・キルガー氏の報告書により公にされた。今回の民衆法廷は、同問題について世界初となる独立した公開検証となる。議長は、旧ユーゴ国際戦犯法廷で検察官を務めたジェフリー・ナイス卿(Sir Geoffrey Nice)。弁護士や医師ら6人が陪審員役を務める。
陪審員の一人でロンドン拠点の弁護士ハミッド・サビ(Hamid Sabi)氏によると、法廷は中国衛生部や在英中国大使館職員を含む中国政府の代理人として法廷参加を求めたが、返答は得られなかった。
中国で拘禁を経験し、その後釈放された人々は、収容施設で血液検査や医学検査を受けたことを証言した。
ウイグル人のMihrigul Tursun(ミフリグル・ツルセン)さんは2018年、米議会委員会公聴会で、新疆ウイグル自治区の北西部にある収容所で拷問と虐待を受けたと証言した。4月7日の民衆法廷では、収容者たちは、血液検査や健康診断、超音波検査など、詳細な健康診断を受けていると述べた。
米国務省や人権および宗教専門家は、過激派の脅威に対抗する反テロ・キャンペーンを名目に、中国共産党政権は100万人以上のウイグル人、カザフスタン人、およびその他のイスラム教徒の少数派を新疆ウイグル自治区で収容していると推定している。
ミフリグルさんは、2017年4月に3日間尋問と拷問を受け、その後、布袋をかぶせられ、手錠を付けて身動きが取れない状態で病院の診察室に運ばれたという。
「腕から2回、採血を受けました。どれだけの量の血を採られたのか、私にはわかりません」とミフリグルは述べた。彼女はここで、血圧検査や他の医学的な検査を受けた。
ミフリグルさんはその後、病院の地下室と考えられる暗い部屋に連れて行かれたという。担当者は、彼女にかぶせた布袋と拘束具を外し、衣類をすべて脱がせ、胸のあたりに検査する装置を付けた。額、肩、胸部、両足に特殊な液体をかけられ、ガラスの機器に入り、10を数えるまで身体を丸くかがめているように命じられた。機器のなかで、彼女は何の音も聞こえなかったという。
「とても怖かった。彼らは臓器を取るかもしれない。今日、私は死ぬかもしれないと思いました」と彼女は述べた。
新疆で1年以上拘留されていた別のウイグル人女性Gulbahar Jelilovaさんもまた、収監中、定期的な血液検査と超音波検査を受けたと証言した。
ウイグルの権利団体で世界ウイグル会議のドルクン・イサ会長は4月7日に証言した。会長は、元ウイグル人被収容者から、施設内では広範な医学的検査が行われていたという話を聞いたり、証拠を受け取ったりしていると述べた。彼らの話によれば、検査を受けた人物は収容施設に二度と戻ってこない。
米国務省中央および南アジア担当局大使は、イサ氏と9日に面会し、ウイグル自治区における状況を聞き取っている。
疑わしいデータ
中国の臓器移植について、2016年にカナダの人権弁護士デービッド・マタス氏、同国政府の元アジア太平洋地域担当大臣デービッド・キルガー氏、在英ジャーナリストのイーサン・ガットマン氏が調査報告書「血塗られた臓器狩り/大虐殺―更新版」を発表した。それによると、中国では肝臓と腎臓を移植するのは712の認可病院で、年間6〜10万の臓器移植を実施しており、中国衛生部発表の約1~2万件と大きな開きがある。
また、報告書では、手術件数は認可病院に限っており、未認可病院における手術件数は含まれていない。3人の報告書では、本人の意思に係わらず臓器提供者となった人々は、中国共産党政府が体制維持の脅威とみなす「ウイグル人、チベット人、家庭教会信者、法輪功学習者」だと推計している。
中国当局は、公式ドナー志願者数は増加していると主張する。しかし、自発的なドナーの数には不自然な点があると、研究者は4月7日に法廷で語った。
元大紀元記者でオーストラリア国立大学の大学院生マシュー・ロバートソン(Matthew Robertson)氏は、統計学者レイモンド・ヒンダ(Raymond Hinde)氏とイスラエルのテルアビブ大学外科教授ジェイコブ・ラビー(Jacob Lavee)氏の指南を受けて、中国臓器移植反応システム(COTRS)からのデータと、中国赤十字のデータを調査した。
ロバートソン氏によると、中国赤十字社が公表した臓器提供志願者の総数は、2015年12月30日から翌31日の間に、2万5000人増加したという。「不可思議だとしか言いようがない」とロバートソン氏は述べた。この研究は現在、科学雑誌の査読を受けており、試験版として発表されている。
中国臓器収奪問題に関する民衆法廷は6月17日、国際犯罪があったかのかどうかを決める最終判決を発表する予定。
(文Cathy He/翻訳編集・佐渡道世)