中国漢方の材料目当て ケニア最大湖でナイルパーチ乱獲

初夏。日が高く上がった、ケニアのビクトリア湖畔のドゥンガビーチ。漁獲量を計測する仕事をしているベルナルド・オルオチ(Benard Oluoch)さんは、一夜漁から帰ってきた漁師から、魚を買い付けたばかりだ。この魚河岸で卸をしているベルナルドさんに、1メートル越えの、よく太ったナイルパーチを見せてもらった。

6月11日、ケニアのビクトリア湖で、魚の卸業を営むベルナルド・オルオチ(Benard Oluoch)さんから、漁師から買い取ったナイルパーチを見せてもらった(DOMINIC KIRUI

ベルナルドさんによると、このビクトリア湖の卸業のなかで、ナイルパーチは最も多く獲れる大型魚の一つ。地元では「ムブタ」とよばれ、湖周辺の漁業従事者、女性雇用など、周辺住民の生活を支えている。

ナイルパーチの浮袋は、中国当局が漁獲規制を敷くチャイニーズバハバの代替品となっている。スズキ目ニベ科のチャイニーズバハバの浮袋は、中国漢方の材料となり、高い需要がある。浮袋から抽出したゼラチンは、不妊治療、妊娠中のつわり緩和、関節の痛みを癒やすスープのダシ、さらには創傷を縫合するための細い糸を作る材料にもなる。

「中国人が高値で買い取るので、地元漁師たちはナイルパーチの獲得に躍起になっている」と、ベルナルドさんは答えた。「中国人は浮袋だけに興味があるんだ。50キロのナイルパーチには、1キロの浮袋があり、3万5000ケニアシリング(約3万5000円)で手に入る」

国際的な市場の浮き袋は1キログラムあたり4万5000~10万ケニアシリング(約4万5000~10万円)。

2016年、銭江晩報によると、浙江省台州市で取り扱ったミャンマーから輸入のチャイニーズバハバ1匹は100万元(約1850万円)で取引された。実際の市場価格は2倍以上になる見込みという。

同じくドゥンガビーチで魚の卸売業を営むエウニカ・アキニュイ(Eunice Akinyi、25歳)さんは、6月11日、その日、漁師から買い取った小さなナイルパーチの浮袋を見せてくれた。彼女は市場に卸すために、買い取った魚の処理をする仕事を7年間してきた。魚河岸に上がる前の魚の処理は、主に女性たちの仕事になっている。

「最初、私たちは魚のはらわたを取り除いて、捨てていた。最近、一部の人が、これらを高額で買い取ると言ってくる」エウニカさんは述べた。 「はらわたをどうするのか、私にはわからない」

中国の漢方材料の輸入関係者は、東アフリカの漁師や手作業の女性たちの、漢方材料の需要に関する認識不足を利用している。東アフリカの豊富な資源を現地に還元せず、自国の需要のために搾取している。

ベルナルドさんによると、中国人が高額でナイルパーチの浮袋を購入するようになってから、現地の漁師たちは昼夜を問わず、より大物を釣り上げるために、漁に出ている。

これは乱獲に繋がる恐れがある。ケニア海洋水産研究所ホレス・オウィティ(Horace Owiti)教授は、大型のナイルパーチは繁殖期を迎えているため、これらを乱獲すれば産卵時期を逃すと警告している。中国の長江に生息していた淡水イルカは漁民の乱獲で絶滅した。

国連食糧農業機関(FAO)の報告によると、ナイルパーチはケニアにおける貿易輸出の主要な魚種であり、ケニアでは総魚輸出量の約90パーセントを占める。ナイルパーチは、英国植民地時代にビクトリア湖に放流され、繁殖した外来種。

オウィティ教授によると、ナイルパーチはビクトリア湖の3つの主要魚の中で最も価値がある。しかし、多くの漁師は浮袋のために乱獲し、他の可食部はぞんざいに扱われるようになり、可食部の取引価格は低下した。市場はすでに流通量の規制が行われているという。

「おそらく、全国の7〜12社の漁業貿易会社のうち1社ほどしか生き残れなくなる」とオウィティ教授は語る。

(ドミニク・キルイ/翻訳編集・佐渡道世)

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