中国の王毅・国務委員兼外相は18日、第8回中国・アフリカ協力フォーラム閣僚会議に北京からオンライン形式で出席した際、アフリカの17カ国に対し、無利息融資の返済を免除すると発表した。国内世論は強く反発した。
返済が免除されるのは、2021年末に期限を迎えた23本の無利息融資だ。王氏は、中国は引き続きアフリカで、投資などの分野で協力し、巨大経済圏構想「一帯一路」を推進していくと強調した。
中国は過去にも、アフリカの一部の国に対して無利息融資の返済を免除したことがある。2000年10月の第1回中国・アフリカ協力フォーラム閣僚会議では、中国側は期限を迎えた31本の対中債務を免除した。総額は109億元(約2184億円)だった。09年11月にも一部の国の債務返済を免除した。
昨年11月、習近平主席は債務免除を実施すると発表した。王毅外相の今回の発表はその詳細を明らかにした。ただし、債務規模は明らかにしていない。
王外相の発表を受け、中国国内SNS上では「(免除の決定は)国民14億人の承認を受けたのか」「私たちの住宅ローンの返済も免除してくれ」「売国奴」などと批判が噴出した。
市民の陳さんは、国内景気が急速に悪化したことを背景に、国民は強く反発していると指摘した。
「厳しい感染対策で経済が急減速しただけでなく、今は電力不足で上海など経済都市の工場も稼働停止となった。民間企業が従業員に賃金を払えなくなったのに、高官や国有企業の幹部らは今まで通り給料をもらっている。国民の不満は高まっている」と陳さんは大紀元に語った。
在米中国人経済学者の黄大衛氏は、王外相が18日に改めて対アフリカ債務救済を発表したのは、「国際情勢が緊迫するなか、アフリカ各国の支持を得たいという狙いがある」との認識を示した。
8月初旬に米国のナンシー・ペロシ下院議長が台湾を訪問した後、台湾海峡を巡り地域情勢が一気に緊張した。
中国メディアによると、アフリカ・マラウイ駐中国大使は18日の第8回中国・アフリカ協力フォーラム閣僚会議について、「各国は(返済免除を)歓迎した」「各国の閣僚は『1つの中国』原則への支持を示した」と話した。
黄氏は、中国はアフリカで影響力拡大を図っている欧米諸国を警戒し、アフリカ各国との関係強化の狙いもあると指摘した。昨年末以来、欧米側は相次いで中国の「一帯一路構想」への対抗策を公表した。
今年6月、主要7カ国の首脳は、途上国のインフラ整備プロジェクトに資金を提供することで意見が一致し、今後5年間で6000億ドル(約82兆円)を調達すると発表した。米政府は、連邦政府の融資や民間企業の投資の活用などを通じて2000億ドルを拠出するとした。
また、欧州連合(EU)は昨年12月、EU域外への3000億ユーロ(約41兆円)のインフラ投資構想「グローバル・ゲートウェイ」を公表した。
黄大衛氏は「アフリカ各国にとって、中国が一部の無利息融資の返済を免除したとしても、他の低利息融資などがまだ残っている。各国はますます債務の罠にはまっていくだろうし、中国への依存もますます強くなる」と述べた。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。