分析:孤立する中共はいかにして米国に挑戦するのか

2026/03/05 更新: 2026/03/05

米イスラエル空爆で中共製HQ-9B防空網が機能不全。イラン・ベネズエラ・パキスタンで実戦失敗続き。一帯一路パートナーの孤立露呈、習近平戦略の限界を分析。

今年に入ってから行われた、米国によるマドゥロの拘束、パナマ運河港の回収、さらに米国とイスラエルによるイラン空爆は、いずれも米中の間接的なせめぎ合いを浮き彫りにしている。米・イスラエルによるイラン空爆は、中共製防空システムの脆弱さを露呈しただけでなく、中共の「一帯一路」構想と「戦略的パートナーシップ」の破綻をも示した。

中共イラン防空システムの惨敗実態

米・イスラエルのイラン作戦でとりわけ注目されるのは、中共がイランに供与した防空システムが十分に機能せず、米・イスラエル空軍がイランの領空を掌握することに成功した点である。

少し前の報道によれば、中共は先進的なレーダーシステムを提供することでイランの防空能力を強化しようとしており、YLC-8Bレーダーが今年1月にイランへ到着したとされている。また、中共がJY-26レーダーも供与した可能性があるとの見方もある。

JY-26とYLC-8Bはいずれもステルス機対策の監視用に設計されており、報道では、その配備はとりわけF-22、F-35ステルス戦闘機やB-2ステルス爆撃機を念頭に置いたものだと伝えられている。

今回の武器提供は、2021年に締結された25年期限の中伊協力協定に続くものであり、中東情勢が緊張するなかで、中共とイランの間で軍事交流が一段と活発化している流れと軌を一にしている。

イランは長年にわたり、中共製レーダー探知システムとロシア製S-300系列ミサイルに依存してきた。しかし、昨年の「12日戦争」において、これらのシステムはいずれも機能不全に陥り、その結果、イランは緊急に中共へHQ-9B地対空ミサイルの購入を打診する事態となった。

現時点での報道はやや錯綜しており、このシステムがすでにイランに設置され運用されているとする情報もある一方で、米・イスラエルの情報機関はまだそれを確認していない。イラン国家安全保障委員会のメンバーであるアボルファズル・ゾフレヴァンド(Abolfazl Zohrevand)氏は、中共がHQ-9防空システムを供与すると述べたものの、その発言は、イランがすでに当該システムを受領・運用していることを裏付けるものではなく、中共はこの件について公式には否定している。

中共が否定しているのには理由がある。完成品としてのシステム供給は、2020年に期限が切れた国連制裁には違反しないものの、米国が対イランに科している一方的な制裁には明確に抵触するからである。さらに、今回の米・イスラエルによる最初の攻撃で、イラン全体の防空システムがすでに麻痺状態に陥っており、中共としては、自らの兵器が米・イスラエルの攻撃に対して無力であったことを認めたくない事情もある。

しかし、少なくとも一つだけ確かなことがある。2021年に調印された「中伊25年包括協力協定」は、経済およびエネルギー分野での協力を主眼としながらも、軍事分野の協力も含んでおり、共同訓練、兵器開発、情報共有などが盛り込まれている。中共はこれまでも長期にわたって、イランに地対空ミサイルや戦闘機の部品を供給してきた。

昨年の「12日戦争」後、中共はイランへのミサイル関連部品の供給を増やしている。少なくとも、中共がイランの防空システムに相当程度の貢献をしてきたことは間違いないが、米・イスラエルとの対峙においては、その存在感を示すことすらできていないように見え、ましてや優位性など論じるべくもない。

中共輸出型地対空ミサイルシステムは実戦でことごとく失敗

中共が輸出した防空システムが実戦で芳しい成績を収めていないのは、今回が初めてではない。

数か月前、インドが「シンドゥル作戦」を発動した際、パキスタンはHQ-9B長距離地対空ミサイルシステムを装備していた。このシステムには長距離監視レーダーや電子戦能力が含まれていたものの、空爆やミサイル攻撃を効果的に防ぐことはできなかった。

加えて、ベネズエラ軍も中国製の防空システムとレーダーを配備している。その防空体制の中核は、中国電科集団が供給したJYL-1三次元長距離監視レーダーとJY-27メートル波レーダーであり、これらのシステムがロシア製S-300VM防空ミサイルと組み合わさることで、ベネズエラの防空ネットワークを構成している。

今年初めの報道によれば、中共は、これらのレーダーが2025年に米軍のF-22やF-35ステルス戦闘機を追跡した実績があると主張している。しかし、マドゥロ拘束作戦において、これらの防空システムは米軍の電子戦攻撃を前に完全に沈黙し、米軍の行動を阻止することはできなかった。

言い換えると、こうした中共の先進輸出型地対空ミサイルシステムは、実戦において一度として実効性を示したことがないのである。

その理由としては、実際の製品が設計仕様に達しておらず、それが中共軍事装備全般に蔓延する腐敗の問題を反映している可能性がある。また、設計そのものに欠陥があり、実戦の要件を十分に考慮していないことも考えられる。

たとえば実戦では、米軍(およびイスラエル空軍)は作戦開始直後にレーダーシステムの破壊と電子妨害に重点を置き、それによってミサイルの能力をそいでいる。さらに、配備があまりに拙速であったために、既存のロシア製やイラン自製のシステムとうまく統合できず、戦力として機能しなかったと考えられる。

YLC-8Bレーダーは中国電科集団が開発したもので、公式説明では、戦闘機級の目標に対して約400〜500キロメートル、ステルス目標に対しては約200〜250キロメートルの探知距離を持つとされる。このレーダーはHQ-9B、HQ-22などの防空ミサイルに対して目標情報を提供し、主に中国南東沿岸、東シナ海、南シナ海、台湾海峡周辺の重要防空地域に配備されている。

こうした防空システムの実戦でのパフォーマンスは、中共の台湾有事における作戦能力に深刻な打撃を与えていることは明らかである。

中共の「ソフトパワー」も損傷 戦略的誤判断の源泉は最高指導部

軍事面での挫折に加え、トランプ政権2期目以降、中共のハードパワーの弱点が次々と露呈し、ソフトパワーの問題はさらに顕著になっている。まず指摘すべきは、米国が軍事行動に踏み切るかどうかについての中共の見立てが、まったくの見当違いであった点である。

ネット上では10人以上の中共系専門家や軍事評論家が見解を示し、「米国はイランに対して軍事行動に出ることはない」と論じていた。その理由はおおむね同じで、「イランには抗戦意思があり、中露が供与した先端兵器を有しているため、米国は苦境に立たされる。イランの背後には中露が控えているので、米国は躊躇せざるを得ない」というものだった。

これらの人物は単なる一般の論客ではない。復旦大学や人民大学など有名大学の教授や、国防大学の歴代教授・現役教授らが名を連ねており、いずれも体制側の最上位クラスのシンクタンクに属している。彼らのコメントは中央テレビ(CCTV)でも放送されており、中共最高指導部の情勢判断を代弁するものと見なされている。

一、二人が誤った判断をしたという程度ならまだ理解できるが、専門家全員が一様に誤るというのはほとんどあり得ない。このような状況では、最初に結論ありきで、あとからそれを裏づける「証拠」を寄せ集めたと考えるほかない。

この構図から浮かび上がるのは、最高指導部の判断、すなわち習近平本人の見解が先にあり、専門家たちはその考えを裏づける論証を行い、その結果を再び習近平に戻して、彼の場当たり的とも言える発想を強化しているという事実である。

これは単なる推測ではなく、事実に基づく指摘だと言える。そうでなければ、なぜ全軍が「習近平の強軍思想」を学ばなければならないのか。軍隊を指揮した経験も、実戦経験もない人物が、いかにして軍事指導理論を提示することができるのか。この種の戦略的誤判断は、最高指導部にその源を持っているのである。

イランはベネズエラと同様に、中共の「一帯一路」にとって重要なハブである。「一帯一路」は、これらの国々にとっては債務のわなである一方で、中共にとっては巨大なリスクでもある。なぜなら、「一帯一路」の投資先は、本来西側資本が空白にしてきた地域であり、これらの国に西側が投資しない最大の理由が「政治的不安定さ」だからである。一旦政局が変動すれば、投下資本は一瞬にして水泡に帰す可能性が高い。

問題は、中共に、自らのグローバルな経済拡張を守るだけの実力が本当にあるのか、という点にある。

三つの国際的大事件が示す「頼りにならない同盟国」としての中共

今年発生した三つの国際的大事件はいずれも中共と直接または間接に関係しており、その矛先が中共に向けられたものですらある。ベネズエラでのマドゥロ拘束、パナマ運河港の接収、そして米・イスラエルによるイラン爆撃と標的型の排除である。しかし中共は、これらに対して何ら実質的な対応を取ることができず、傍観者の役割を演じることしかできなかった。

トランプ米大統領がこれらの重大な国際案件に関して決断を下す過程で、中共要因はほとんど考慮されなかった。これは中共にとって、表立って語られることのない屈辱にほかならない。

これらの国々はいずれも中共と「戦略的パートナーシップ」を結んでいる。もっとも、この種の関係は本格的な軍事同盟ではなく、いわば準同盟にとどまるが、相互の安全保障が欠如しているのであれば、その「戦略的パートナーシップ」は紙切れ同然と化してしまう。

これはベネズエラやイランだけの話ではない。中共と「戦略的パートナーシップ」を掲げるすべての国は、いざ米中どちらか一方に付かなければならない局面に直面したとき、中共に寄り添う価値があるのか、本当に自国の利益になるのかを、改めて吟味せざるを得なくなる。

したがって、大局的な流れとして見るならば、中共と他国との「戦略的パートナーシップ」は、いずれ有名無実のものへと変質していく運命にある。中共は、自らの実際の行動によって、肝心なときに頼れる同盟相手ではないことを証明してしまったのである。

中共仲介外交の無意味化 世界におけるイメージと信用を喪失

今回の米国によるイラン空爆は、もともとの作戦目的には含まれていなかった、思わぬ副作用をもたらした。それは、中共が自画自賛していた仲介外交を一気に無意味なものへと変えてしまったことである。

中共が中東で誇示してきた成功例の一つが、サウジとイランに北京での合意を結ばせ、外交関係を回復させたことである。新華社は、この出来事を「サウジとイランの国交回復を仲介したことは、中国が国際および地域情勢において大国としての責任と影響力を発揮した証しである」と称賛し、「地域諸国が対話によって対立を解消するための模範を示した」と喧伝した。

しかし、イランがサウジを含む周辺諸国に対して無差別報復に踏み切ったことにより、サウジは米軍に対し、自国領内の基地使用を認める可能性が高まっている。言い換えれば、中共が苦労して手掛けた、米国が進んでやろうとしなかった仕事は、実質的な意味を持たなかっただけでなく、いざ試練にさらされるとまったく耐えられない代物に過ぎなかったのである。

米国と中共の間接的な対峙のなかで、中共が失ったのは、ベネズエラやイランの石油だけではない。世界におけるイメージと信用こそが、より大きな損失となっているのである。

横河
横河
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