米600企業、対中関税を支持する書簡提出「人権問題を米中交渉の主要課題に」
600以上の米国企業がこのほど、米トランプ大統領政権による対中関税を支持する公開書簡を政府に宛てた。企業は、不当な貿易慣行の是正策を後押しし、米中交渉では「人権状況の最悪な中国」に対して人権問題を主要議題に取り上げるよう要請した。中国の製造現場では、人件費の低い労働力が生産を支えている。
書簡には、「私たち企業が雇用する何百万人の労働者を代表して」貿易の不均衡を解決するための大統領の関税策を支持すると表明した。署名した企業リストには、トラック運転手、製材、鉄鋼、ガラス、タイヤ、リンゴ農家などがある。
書簡は、安価な労働力で安価な中国製品が大量に輸入されていることで、米国の製造業部門が危機に瀕していると訴えた。「中国は何年もの間アメリカの市場の開放性を利用してきた。私たちは何百万もの中流階級の仕事が失われた。米国人はこれにうんざりしている」と書いた。
米メディア・デイリーコーラーによると、手紙は6月21日、米国通商代表部(USTR)に提出された。USTRは中国製品約3250億ドル相当に対する追加関税を審議している。
今回の書簡は6月中旬、国際的な生産ラインの維持の妨げになるとして、多国籍企業を含む米企業数百社が対中関税に反対するとの政府宛ての署名書簡に対抗している。
書簡は、「対中関税による米国の負担増、対中関税によるインフレ率上昇」は、メディアや中国ビジネスで利益を得ている一部企業による言い分であり、事実と異なると指摘した。実際は、対中関税策導入にもかかわらず、米国のインフレ率は依然として低いままであるとした。
「中国は確かに(米国関税を)負担している。中国は輸出製品の価格を下げざるを得なくなり、輸出量を減らし、利益も減らした」と書簡は書いた。加えて、「中国経済の成長と雇用率は今後も低下すると見込まれている」とした。
「私たちは、中国からの低賃金労働で、米国の労働者を締め出した、巨大な多国籍企業に立ち向かう大統領のゆるぎない態度を支持する」
さらに、「世界有数の人権団体が指摘しているように、中国は世界で最も人権侵害が劣悪である状況の国のひとつ」として、厳しい対中経済措置と同様に、人権侵害の議論を米中交渉の主題にするよう求めた。
カリフォルニア大学経済学教授で、米国家通商会議(NTC)委員長ピーター・ナバロ氏も、この度の600企業の作成した書簡の宛先に含まれている。ナバロ氏は著作『米中もし闘わば』(2015)で、中国が急速に経済発展を遂げたのは人権を考量しない「低賃金労働をテコにしたため」と指摘している。
トランプ政権は2018年3月、米国の知的財産の窃盗、技術の強制移転、政府の補助金など、中国共産党政権の長年にわたる不公正な貿易慣行に対する対抗措置として、中国製品に対する懲罰関税を発表した。以後、米中貿易戦は続いている。
米トランプ政権は「第4弾」となる、3000億ドル相当の中国製品に対する25%の追加関税をちらつかせている。大統領は6月下旬、日本の大阪G20サミットで開かれる中国の習近平主席との米中首脳会談の後に、追加関税について決定すると述べている。
(編集・佐渡道世)