「ホスト国として取り上げるべき問題」京都でG20諸宗教フォーラム、中国の臓器収奪問題が議題に
大阪G20サミット開催前、京都で宗教の観点から現代社会の問題を話し合う「G20諸宗教フォーラム」が開かれた。16の国から180人あまりの宗教指導者らが出席した。共産党体制下の中国では、信仰を理由に囚われた無実の人々が、臓器を強制的に摘出されている問題が10年以上続いており、今回のフォーラムでは生命科学と倫理に関する議題の一つに盛り込まれた。
生命科学と倫理 G20首脳へ提言
舞台デザイナーで、G20諸宗教フォーラムの設営デザインに関わった月ヶ瀬悠次郎氏は、2日目の6月12日のテーマ別セッションのひとつ「生命科学と倫理」で、中国で起きている臓器強制摘出問題を語った。
「中国では、ある『蛮行』が行われていることを知っていますか。平和に暮らす人が突然逮捕・勾留およびメディカルチェックを受けて、臓器の情報が記録され、一旦は保釈される。しかし、やがて彼の心臓や腎臓、肝臓に適合した裕福な患者が現れたとき、再び彼は捕まえられ、生きたまま臓器を取り出されるのです」月ヶ瀬氏は講演の冒頭でこう述べた。
月ヶ瀬氏は、どうすれば無実の人々から臓器が強制摘出されるという問題を止められるのか、倫理に基づくアイデアの検討を呼び掛けた。
また、実際に臓器移植の待機患者や家族の苦しみは考慮されるべきだが、「他人が犠牲になることで自分が生きられる」という倫理の選択肢そのものは、臓器移植に関して存在してはならないと主張した。
「単に、中国が行っていることは悪いことだ、と非難するだけでは解決にならない。法的に、自国民が臓器移植システムの不透明な海外で渡航移植を受けることを禁止する法律が検討されるべき」とした。
講演後、大紀元のメールインタビューで、月ヶ瀬氏はこの中国臓器収奪問題を取り上げた理由について「生命科学と倫理を考えるにあたり、G20ホスト国として、必ず取り上げなければなければならない問題」と捉えていたと語った。
初めて臓器摘出問題を知ったのは数年前、臓器摘出問題を映したドキュメンタリー映画『知られざる真実』を大阪で鑑賞したことがきっかけという。その後、姫路市で同映画の主催イベントも開催した。
そのおぞましい内容から、「SF小説」の世界だとの印象を受けたという。大学で倫理学に触れた月ヶ瀬氏は、クローン人間の人権、電脳世界の人格論などのディスカッションを経験したが、邪性を容認する傾向には違和感を感じていた。
「SF小説や大学でのディスカッションでは、『必ずしも悪とは言えない』とか『悪に手を染めてしまう人間の弱さ』などの論調に流れる傾向がある。しかし、『それはあかんやろ』と正義を貫くのが主人公であり、私たちの良心、良識の声ではないだろうか」
諸宗教フォーラムでは、8つのセッションをまとめた宣言文「京都宣言」が採択された。G20サミット首脳への提言のひとつとして、宗教と人権課題として「今もなお世界各地で政治的・民族的・宗教的に抑圧されている大勢の人々の現状を見逃さず、世界人権宣言に基づき、G20諸宗教フォーラム参加の宗教指導者は世界の分断を超克して共に生きる社会の構築に取り組む」が盛り込まれた。
このフォーラムから5日後、英ロンドンで、検事や弁護士、人権専門家、調査者ら第三者による人道犯罪の検証の結果を示す「民衆法廷」に最終裁定が発表された。議長ジェフリー・ナイス卿は、中国における臓器の強制摘出問題は「長らく相当な規模で行われている。おそらく主な犠牲者は法輪功学習者」と結論付けられた。
高まる宗教の自由への危機対応
宗教の自由の危機について、国際的な課題としての優先度が高まっている。7月中旬、米国務省主催の信仰自由推進会議が開かれた。千人あまりの各信仰者がワシントンに集まり、信仰に対する迫害について議論を交した。
米国は信仰に対する迫害について、外交政策上の優先度を上げている。米ポンペオ長官は、この会議のなかで「国際宗教自由同盟(International Religious Freedom Alliance)」を設立することを発表した。同盟は、信仰への迫害を行う国の責任を追及する役割を担うという。
米トランプ大統領は7月17日、中国、イランなど17カ国からの宗教的迫害を受けた信仰者27人と面会した。その中の一人である法輪功学習者は大統領に、迫害と強制的な臓器摘出問題が依然として続いていると訴え、米政府の介入を求めた。大統領は「(問題を)分かっている」と返答した。
7月12日、スイスのジュネーブで開かれた国連人権理事会で、日本や欧州諸国など22カ国は、中国が新疆ウイグル自治区でウイグル族や少数派のイスラム教徒を大規模に拘束していることに懸念を表明する文書を提出した。
(文・佐渡道世)