胎児に10万人に1人の腫瘍 母親と医師の執念で誕生した「小さな天使」
17週目を迎える胎児の口から出ている奇妙な気泡の正体が、実は致命的な腫瘍だと知った時、母親は「必ず助かる方法がある」と自分に言い聞かせた。医者からは妊娠を終わらせるという選択肢も与えられたが、母親はこの症状では世界初の子宮からこの桃サイズにまで大きくなった腫瘍を取り除く手術を受ける決断をした。
アメリカ合衆国のマイアミ出身のレイナ・マイケラ・ゴンザレスはとても健康な「小さな奇跡の天使」だ。時はさかのぼること2010年、彼女の母親タミー・ゴンザレスはその小さな天使を救うべく試練に立ち向かった。
「小さな天使」という意味の名を持つレイナが母親の胎内で17週目を迎えた時、医者は超音波検査の最中に何か奇妙なものを発見した。それは、まだ生まれてもいない胎児の軟口蓋から噴き出る泡だったのだ。
ABCニュースによると、母親のゴンザレスは超音波検査のモニターを見ながら、「それは私からですか?それとも赤ちゃんからですか?」と尋ねたそう。
担当医らは後に、この気泡は奇形種であると断定した。これは非常に珍しく、致命的な口腔腫瘍で、10万件の妊娠に1件の確率で起きている。「担当医からこのタイプの腫瘍の進行はとても早いと言われました。」 と母親ゴンザレスは語った。
「絶対に助けられる方法があると強く思いました」と彼女はマイアミ・ヘラルドに語った。
ゴンザレスの担当産婦人科医であるジェイソン・ジェームズは、彼女に2つの選択肢を提示した。1つ目は、出産後に赤ちゃんが生存する確率が低いことから、妊娠を止めるという選択肢。2つ目は流産の危険性はあるが赤ちゃんを胎内に残すこと。ゴンザレスは中絶することを拒否し、胎児を助け出すための方法を調べることにした。
「想像できないほど肉体的にも、感情的にも、精神的にも苦しかったです。」とマイアミCBSニュースのインタビューで答えた。
「私は産婦人科医に他の方法があるか、産まれてくる前に誰か手術することはできないかと尋ねた」とガーディアンに答えた。
そしてゴンザレスは、マイアミにあるジャクソン記念病院の胎児治療センターで院長を務めるルーベン・クインテロ医師を紹介された。2週間後の2010年5月、クインテロ医師と彼の医療チームは内視鏡を用いて子宮手術を行った。これは医療行為としてはこれまでにないことであった。
彼らは、ゴンザレスの腹部に切開した数ミリの穴から羊膜へと小さなカメラと医療器具を挿入した。超音波とカメラで確認できる映像で、外科医らは胎児から桃サイズの腫瘍をレーザー光線で切除する前にどこにあるかを確認できた。
この手術はまるで「風船遊び」のようだった。
「私は部分麻酔のおかげで切開したところの感覚はありませんでした。でも、チューブが羊膜に入る感覚はありました」と手術中意識のあったゴンザレスは語った。「まるで大きな錘が取れたような気分でした。風船は浮き上がって、胎児の顔を見ることができました。」と母親は付け加えた。
桃サイズの腫瘍は切開で羊膜に開けた小さな穴から取り出すことはできないため、出産の2010年10月1日までの5か月の間、胎内で浮いたままの状態にされた。
レイナが産声を上げた際、体重はおよそ4キロで、桃サイズの腫瘍はクラッカーほどのサイズにまで縮んでいた。レイナに残された手術の後は「上唇に残された小さな傷」の身であった。
「彼らはわが子を救ってくれました。彼らなしでは今頃彼女は産まれていません」と、泣きながらゴンザレスは感謝の意を担当した医者らに伝えた。
「彼女にも私たちの手術の申し出を受け入れていただいて感謝しています。彼女の勇気がなければ私たちの手術ができることはありませんでしたから」とクエントロ医師も彼女に感謝を伝えた。
2012年6月、活気に満ちた生後20か月のレイナはジャクソン記念病院の廊下を両親と一緒に歩いていた。彼女は他の子と同様に元気いっぱいで、誰も彼女が産まれる前に死に直面していたことなど想像できないだろう。
「彼女は完璧に普通の子です。神様に感謝しています。」母親は語った。
(大紀元日本ウェブ編集部)