2019年ノーベル化学賞を受賞した米スタンリー・ウィッティンガム教授。(CHRISTOF STACHE/AFP via Getty Images)
受賞までの道のり

ノーベル化学賞受賞者からのアドバイス:「楽しいことをしなさい」

ビンガムトン大学のイノベーティブ・テクノロジー・コンプレックスのキャンパス二階にあるホールの片隅に、風船で飾られたオフィスがある。スタンリー・ウィッティンガム教授の2019年ノーベル化学賞受賞を祝う会が開かれた。

今年78歳のウィッティンガム教授は今もバッテリーが大好きで、世界中で研究室を訪れたり、講演をしたりしている。

「いつ退職するんですか?と聞いてくる人がいます」とウィッティンガム教授は言う。すると彼は「自分がしている事が好きだから、ずっと続けていきますよ」と答える。

そして彼の妻で外国語の教授であるジョージナ・ウィッティンガム氏も同じことを言う。

「私たちは教壇に立ち続けます」と彼は言った。「医者に退職するなと言われていますから」

30年以上に渡り、ウィッティンガム教授はビンガムトン大学の様々な役職で活躍してきた。現在彼は化学、材料科学および工学の著名な教授だ。

彼はこの場所を愛している。

「ここでのチームワークはすばらしいです」と彼は話した。

彼はとても忙しい。特に受賞が発表されて以来は尚更だ。ノーベル賞を受賞したのは、1970年に彼がエクソン(Exxon)で初めてリチウム電池を開発したからだ。

心の中はイギリス人

彼はイギリスのリンカンシャーという小さな町で育った。高校の先生の影響で、化学に興味を持つようになった。

「昔は、化学物質を作って爆発させたり、してはいけないような事ができました」と彼は笑いながら話した。「それで私は化学に興味を持ったのです」

その後オックスフォード大学に入学し、学士号、修士号、博士号を取得した。

博士号を終えると、北米やカナダに行った多くの学生たちとは違って、彼はスタンフォード大学に行くことを決めた。

「どこか太陽の光があるところに行きたかったんです」彼は笑いながら言った。「心の中はまだイギリス人なんです」

2ヶ月間そこにいたあと、彼は国防総省のマテリアル・ラボの担当を2年間務めるよう頼まれた。

「とても成功していた時期でした。あの2年間で、もっと大切な事も起こりました」ウィッティンガム教授は話した。「スタンフォード大学で妻に出会ったのです」

「私たちは全く時間を無駄にはせず、9ヶ月くらいで結婚しました」

次世代のバッテリー

2年間のポスドク研究を終えると、彼はエクソンで働き始めた。

「エネルギーに関する仕事をするために雇われましたが、石油や化学物質ではありませんでした」と彼は話した。

太陽エネルギーと燃料電池に強い関心を持った彼は、バッテリーの研究を始めた。

「次世代のバッテリーを作りたかったんです」彼はこう話した。「米国でのガソリン危機のため、電気自動車にとても興味がありました」

彼らはテストチューブの中でバッテリーを作り始めた。「そこに何かがあることは分かっていましたが、どれだけ大きなものかは知りませんでした」

ウィッティンガム教授は自分の発明が世界を変えることになるとは思いもよらなかった。

「15年前でさえ、電話はブリーフケース全部を使って持ち運ばなければいけませんでした。リチウム電池はこれら全ての小さな機器の役に立ったと思います」

1980年代、ジョン・グッドイナフ(John Goodenough)氏はウィッティンガム教授が築いた基盤に基づき、さらに強力なバッテリーを開発し、新たなブレークスルーをもたらした。

ウィッティンガム教授によると、物理学者の視点を持つグッドイナフ氏は、ウィッティンガム教授らが以前、上手くいかないと考えたことについて実験と開発に取り組んだ。

これに続き、1985年に吉野彰氏が商業的に使用可能なリチウムイオン電池を初めて開発した。

その数十年後、世界を変えたこの3名の科学者達は2019年のノーベル化学賞を受賞した。

そして、一番大切なのは辛抱することだ。

「失敗するだろうけど、気にしないでください」ウィッティンガム教授は話した。「失敗しないと、大きなブレークスルーが起こりません」

エクソンで働いたあと、ウィッティンガム教授は、いつでも研究と学問の世界に戻りたい自分の思いに気づいた。

若い心

ウィッティンガム教授は1980年代の終わりにビンガムトン大学の教授になり、バッテリーの研究を続けた。

「すごく研究がしたいんです。大学では毎年18歳の人たちが入って来るから、私も若くいられるんです」彼は冗談まじりに話した。

しかし結局一番大切なのは、自分が好きなことをすることだと彼は話した。

「自分がしている事が好きであれば、あなたは成功していると思います」と彼は話した。彼はまた笑いながら、賞をとることももちろんそれに貢献しますよ、と話した。

「本当にこの研究が好きなので、彼はこの歳になってもまだ若者みたいです」ウィッティンガム教授の博士号の学生の一人であるアンシカ・ゴヤル(Anshika Goel)氏はこう話した。「彼は毎日研究室に顔を出して、どれだけ世界中を飛び回っていてもオフィスには時間通りにやってきます」

「彼はたった今、夜の3時にメールの返信をくれました。彼はまだ働いているんです」もう一人の博士号の学生、Yicheng Zhang氏が話した。

あれから30年経った今、彼はいまだに教壇に立っている。研究への情熱に満ちた彼の心は若いままだ。

(大紀元日本ウェブ編集部)

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