中国のコロナウイルス、世界の海運業に大打撃 パルチック海運指数が83%下落
鉄鉱石や石炭、穀物などを運ぶばら積み船市況の総合的な値動きを表すバルチック海運指数は、2月11日に411ポイントと9月初めから83%以上下落した。
海運業界の指標だけでなく、世界経済の先行指標でもあるバルチック海運指数は、米国と中国が貿易戦争を終結させ、国際貿易が拡大を続けるとの楽観論が高まり、2019年9月4日に2518ポイントという9年間での最高値を記録した。しかし、貿易休戦の遅れとコロナウイルスの大流行が組み合わさり、グローバル化したサプライチェーンは壊滅的な打撃を受ける寸前にある。
世界のコンテナ輸送量の約1/3は、中国の港を経由している。
中国運輸省は2019年に、米中貿易戦争にもかかわらず、7月までの主要49港のコンテナ輸送量は1億3270万TEU(20フィートのコンテナ)で、2018年の最初の7カ月と比較して4.5%増加したと報告した。当時、コンテナ船の顧客は、米中貿易摩擦の緩和で需要が急増し、コンテナの入札競争を引き起こすことを恐れて、価格を吊り上げていた。
しかし、中国が工業生産を大幅に削減したことで、商品需要が減少し、製油所の操業も抑制されたため、コロナウイルスの発生は海運業界全体に打撃を与えた。
米投資調査会社のエバーコアISI(Evercore ISI)のアナリスト、ジョン・チャペル氏によると、「このウイルスの不確実性によって中国政府は前例のない措置に踏み切り、海運業の運賃が急激に低下した」とし、「中国はほぼすべての主要商品の購入国であり、鉄鉱石、原油・液化天然ガス(LNG)の市場に多大な影響を与えている」と語った。
米専門誌「アメリカン・シッパー」によると、200万バレルの原油を輸送できる超大型原油輸送船(VLCC)のレンタル料は、前月比78%減の2万1900ドルとなった。中東のガルフ港で船積みされたVLCCは通常、週30隻だが、先週はわずか8隻だった。
石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」の共同技術委員会(JTC)は2月10日、13の加盟国に対し、コロナウイルスの大流行に対応して過去の減産を2020年末まで延長するよう勧告したと発表した。
コペンハーゲンに拠点を置くコンテナ輸送コンサルタント会社Sea-Intelligenceはこのほど、報告書を発表し、輸送業者が「短期間に」太平洋横断航路の21便とアジア欧州航路の10便を含む31便をキャンセルしたと述べた。「これはコロナウイルスによって需要の流れが崩壊したことをはっきりと示している」Sea-Intelligenceは、コンテナ輸送業者が週当たり3億~3億5000万ドルの収益を失っていると計算している。
コロナウイルスによる最悪の影響は、18万トンを輸送可能なケープサイズばら積み貨物船にも及び、中国の鉄鉱石需要が激減したため、価格は12月31日の3224ドルから2月7日には236ドルに下落した。
(文・ CHRISS STREET/翻訳編集・李沐恩)