駐米中国大使、「米軍ウイルス拡散説」を否定 内部で意見対立か
中国外務省の趙堅立報道官がソーシャルサイトで発した、「米軍ウイルス拡散説」に、米国をはじめ多くの海外メディアが疑問を呈した。これについて、駐米中国大使も真向から反対意見を示した。
崔天凱駐米中国大使は3月17日、米メディアAXIOSとHBOの共同インタビューに応じた。23日、駐米中国大使館のウェブサイトには、これらのインタビューの記録が掲載された。
崔大使は「米軍ウイルス拡散説」をここ数週間発信している趙報道官の意見について「狂気の沙汰」と形容した。「ウイルス発生源の特定は科学者の仕事であり、外交官やジャーナリストの仕事ではない」と付け加えた。
中国外交官は北京の外交部の見解を踏襲する傾向にあるため、崔大使のように反対意見を示すケースはまれ。しかし、中国政治の職位としては、習近平政権が指名した崔大使のほうが趙報道官より上位である。
AXIOSの記者は、「米軍ウイルス拡散説」を発信した報道官は、明確な証拠を持っているのかどうか、大使に聞いた。崔大使は、「彼(趙報道官)に聞いて欲しい。私は中国政府と政府首脳を代表しており、誰か個人の意見を代表しているのではない」と述べた。記者は、報道官は中国政府の意見を代表しているのか、と聞くと、「彼の発言をどのように解釈するかはあなたの自由だが、私には全ての人の発言を説明する責任はない」と明確な答えを避けた。
一部では、中国共産党政権の内部で「米軍発源説」をめぐって意見が対立しているとの分析が出ている。
米トランプ大統領は就任後、ツイッターで積極的に発信し、対中国外交のスタイルも変化させた。中国共産党政権は海外のソーシャルサイトにも中国共産党のプロパガンダを強めた。
英オックスフォード大学が2019年9月に発表した、世界のネット世論操作に関する研究報告によると、国家レベルでもっとも高度な世論操作を行っている国は中国であり、数百万人のネット世論操作者がいるとした。また、中国共産党政府は2019年に、50あまりの在外公館や外交官のアカウントを増加させ、対外宣伝の強化を示唆した。
在パキスタン中国大使館の外交官だった趙氏は、ツイッターでの過激な発言を繰り返し、共産党の代弁者としての役割を評価され、2月、外交部報道官に抜擢された。同氏の放った「米軍ウイルス拡散説」は国営メディアも引用した。
ブルームバーグ3月24日の報道によると、趙報道官の舌鋒は、中国外交部の中で称賛されている。しかし、崔大使は「危険な発言」とみなし、注意したという。
その後、趙報道官の攻撃的な発信はトーンを下げた。23日には「ウイルスの流行に対応するため団結しよう」と花の写真を添えてツイートした。
中国共産党機関紙・環球時報英字版の編集長・胡氏は、「中米間の対立をあおる者は、歴史的に非難されるだろう」と書いた。
趙報道官による「米軍ウイルス拡散説」流布は、ワシントンの怒りを買った。3月、ポンペオ米国務長官は中国の外交官トップ・楊潔箎氏に対して、奇怪なウソを流すのをやめるよう電話で抗議した。トランプ大統領は、中国の初期段階での対応不備が、世界的なウイルスの流行に繋がったと、中国共産党の失敗を指摘した。
(翻訳編集・佐渡道世)