グーグル、中国撤退表明から10年 その後どう変わったか (GettyImages)
評論

グーグル、中国撤退表明から10年 その後どう変わったか

世界的大手1位の検索エンジン「グーグル」は10年前、中国政府のネット検閲などを理由に、中国市場からの撤退を発表した。 しかし近年、グーグルは中国との協力関係を再開する兆しを見せている。特に中止されたという中国検閲機能付きの検索エンジン「ドラゴンフライ」を開発しているとのニュースは人々に衝撃を与えた。

グーグルの10年前の撤退は、中国当局の検閲に反発したという点で、世界的に評価された。 しかし、中国当局の検閲要求を受け入れた開発計画「ドラゴンフライ」が明らかになった。この計画は、メディアの暴露により8カ月間も保留されている。

グーグルの国際関係部門のトップを務めていたロス・ラジュネス(Ross LaJeunesse)氏は2020年1月、動画共有サービス、ユーチューブ(YouTube)で、「グーグルは10年でどのように変わったのか」を説明する動画を投稿した。

「利益は人間やポリシーよりも大事な存在になってしまった。経営陣は10年前の撤退後からすぐ中国への復帰に向けて動き出した。」とラジュネス氏は述べた。

ジェネス氏は、人権問題を抱える中国やサウジアラビアと協力を続けるグーグルに怒りを感じ、2019年5月に辞任した。今、メイン州から2020年11月の上院選挙で民主党から立候補している。

米有力シンクタンクで戦略国際問題研究所(CSIS)のジェームズ・アンドリュー・ルイス(James Andrew Lewis)副代表は、近年の中国に対するグーグルの態度の変化は、明確な利益追求が動力になっていると語った。

「グーグルは中国から2つのことを望んでいる。1つは他の欧米企業にも言えることだが、中国の専門人材だ。もう1つは中国での市場を拡大することだ」

グーグルの検索エンジンは、中国国内では使用できないが、グーグル社自身は近年も中国でビジネスを行っている。電子商取引大手アリババやテンセントなどの企業とクラウドコンピューティング市場で競合している。

米NBCによると、グーグルの戦略は、中国でビジネスを展開する東南アジアなどの企業に、自社のクラウド製品を販売することだという。 北京、上海、深センにあるグーグルの事務所では、コンピューティングエンジニア、データー管理者、営業担当者などの職種を引き続き募集している。

中国市場を手放せない欧米企業は、グーグルだけではない。 10年前、グーグルは中国の検閲にノーと言い、撤退を発表した初めての多国籍企業だった。この10年間、これができる企業はほとんどない。マイクロソフトやIBMなどの企業は、中国政府のインターネット検閲問題に触れないようにしている。

2008年10月、米ヤフー、グーグル、マイクロソフトなどの企業が、人権擁護団体とともに、インターネットにおける言論の自由およびプライバシー保護を目的とした世界規模の取り組みである「Global Network Initiative」(GNI)を立ち上げた。。

しかし、「フォーブス」誌によれば、「同組織は名ばかりで、体を成していない」と指摘している。

グーグルの中国との協力に反対して辞任した元グーグルのエンジニア、ジャック・プールソン氏は、GNIは、グーグルやマイクロソフトのような企業が、中国のような言論の自由を抑圧する国に協力し続けるための口実になったと、ラジオ・フリー・アジア(RFA)に語った。

人工知能などの技術が日進月歩する今日、グーグルなどのIT企業は、中国と手を組む方針を変えようとしていない。 CSISのルイス副代表は、RFAに対し、「ある企業がかつて私に言ったことがある。今、企業は人材の争奪戦に直面しており、その人材がどこにいるのか、気にしていない。AIに精通している人はそこまで多くはない。私たちは彼らを求めている。競合他社には雇わせたくない」と述べた。

米政府は、グーグルのような米国の技術企業が中国と連携することには、注意を払うよう求めて来た。2017年後半、グーグルはAIを中核事業とする中国ハブを北京に設置したが、 2018年米国防総省と共同のAI(人工知能)研究プロジェクトについて次年度の契約更新しない方針を決めた。オバマ政権時代のアシュトン・カーター国防長官は、中国企業との協力は、軍事と民間の区別が難しいと警告した。

CSISのルイス副代表は、これらの企業はビジネスを展開する自由があるが、米政府は、企業と中国の協力関係について慎重にならざるを得ないと指摘した。

(翻訳編集・佐渡道世)

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