過去十数年の歴史を振り返れば、中国共産党は実にさまざまな手段で国連に対して浸透工作を行ってきた(GettyImages)

中国共産党に浸透された国連、コロナ禍でその深刻さ明らかに

中国共産党政権の無作為と隠ぺいにより、中共ウイルス(新型コロナウイルス)が全世界に拡散し、貴重な人命が失われた。にもかかわらず、防疫を担当する世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長はその対応を批判するどころか、「模範的」などとほめたたえている。この背景にはどのようなからくりがあるのだろうか。

 

過去十数年の歴史を振り返れば、中国共産党は実にさまざまな手段で国連に対して浸透工作を行ってきた。この問題についてホワイトハウスの国家通商会議のトップであるピーター・ナバロ氏はこう述べている。「中国(共産党)はその植民政策を用いて、賄賂やその他の方法で国連内部の組織をコントロールしようとしている。これはアメリカと全世界に対する大きな破壊だ」では中国共産党はどのように浸透したのだろうか。

 

国連をコントロールする

 

ナバロ氏はこう語る。「過去の十年間、中国共産党は絶えず積極的に行動し、彼らの人員を指導的ポストに就かせることで国際機関をコントロールしようと試みてきた。もちろんテドロス氏のような代理人を用いて影響を拡大しようとしてきた。中国共産党はすでに15の専門機関のうちの5つをコントロールしている」

 

国連の15の専門機関の中で、4つのトップが中国共産党の代表に占められている。それぞれ国際連合食糧農業機関(FAO)の屈冬玉・事務局長、国際連合工業開発機関(UNIDO)の李勇・事務局長、国際電気通信連合(ITU)の趙厚麟・事務局長、国際民間航空機関(ICAO)の柳芳・事務局長である。

 

そのほか、国際組織の重要ポストを占める中国共産党高官も少なくない。例えば、世界銀行(World Bank Group)の楊少林・初代常務副総裁兼最高総務責任者(CAO)、世界貿易機関(WTO)の易小淮・副総裁、国際通貨基金(IMF)の林建海・事務局長および張濤・副総裁、世界知的所有権機関(WIPO)の王彬穎・副事務局長、そして世界気象機関(WMO)の張文建・副事務局長である。

 

今年4月初旬、中国共産党の外交代表が人権理事会の一員となり、人権状況が極めて劣悪な中国共産党とキューバが人権理事会を牛耳る結果となった。国連のさまざまな専門委員会が中国共産党の手中に入ったことは争いようのない事実だ。

 

ナバロ氏は続ける。「中国共産党が世界保健機関をコントロールした結果、計り知れないダメージを被った。彼らは人々の間の情報交換を阻害し、伝染病であると認めなかった。そして感染が拡大しても彼らは旅行禁止令に消極的だった。これはわたしが見てきた中で最も重大な事件の一つだ」

 

テドロス氏は「前科」持ちマルクス主義者

 

コロナ禍で一貫して中国共産党を擁護してきたWHOのテドロス事務局長が、マルクス主義者であることはあまり知られていない。テドロス氏は祖国エチオピアのマルクス・レーニン主義政党「エチオピア人民革命民主戦線」に所属していた。カナダのシンクタンク研究員ジーン・ミシェル・コール(J. Michael Cole)氏によると、テドロス氏はエチオピアで公衆衛生を担当したキャリアはあまりないが、エチオピアにおけるコレラの伝染を隠ぺいしたという告訴がある。

 

「前科」持ちのテドロス氏は2017年、中国共産党の支持のもとWHO事務局長に選ばれた。彼は医師出身のイギリス人のデイビット・ナバロ(David Nabarro)氏を投票で破った後、「一つの中国」を改めて強調した。

 

台湾は今年1月、中共ウイルスはヒト対ヒトで伝染する恐れがあるとの報告書を出したものの、WHOはそれを無視した。それどころか、テドロス氏は中国共産党の隠ぺい行為を故意に見落とそうとしたとコール氏は分析する。その結果、ウイルスが全世界に蔓延し、数多くの尊い命が失われた。

 

米シンクタンク「新アメリカ安全保障センター」のクリスティーン・リー副研究員は報告書において、中国共産党のWHOに対する浸透工作はコロナ禍以前から行われていたと記している。2017年、テドロス氏はすでに「一帯一路」が医療サービスの品質向上に寄与していると鼓吹した。そして「一帯一路」に加入した国家に中国共産党式の医療保険サービスを提供する「健康のシルクロード」構想に賛同の意を示した。

 

報告書はまた、中国共産党は中共ウイルスによってもたらされた混乱に乗じて、すでに国連での影響力を拡大しようと画策していると警告している。これが毛沢東の提唱した「天下が大きく乱れれば、よりよく統治できる(天下大乱、才能天下大治)」と同じコンセプトだとすれば、邪悪極まりない。

 

放火犯に消防署長は務まらない

 

4月8日、国連人権理事会のポストに中国共産党の代表者が選ばれたことが明らかとなり、反対の声が上がった。フランス紙「ル・フィガロ」は国連ウォッチのエグゼクティブディレクターであるヒレル・ノイアー弁護士の発言を引用して次のように報道した。「国連が中国(共産党)という鎮圧性のある政府に国際的な人権基準を制定させ、世界中の人権侵害を暴露させるということは、道理にかなわないし道徳にもとる。これは放火犯を都市の消防署長に任命するようなものだ」

 

米「フォックスニュース」2019年12月14日の報道によると、国連職員エマ・レイリーさんはスイスの国連人権理事会オフィスが中国共産党に人権活動家のリストと情報を提供していると暴露した。実はレイリーさんは2013年に同様の指摘を行っている。彼女はアメリカの上席外交官と国会議員に宛てた手紙で、「国連人権高等弁務官事務所は継続して中国共産党に情報提供をしている。ジュネーヴで行われる会議に参加する人権活動家の名前を提供しているのだ」と記した。

 

この事件により、中国共産党が長年行ってきた工作が明らかになった。これは国連の人権保護体制を弱体化させる手段の一つであり、氷山の一角に過ぎない。ここからも中国共産党の浸透工作の深さがうかがい知れる。

 

リー氏は報告書において、この浸透工作は世界を非自由・非平等の方向に向かわせ、独裁者が特権と利益を獲得するためのものだと指摘している。

 

自国製品で通信の自由を制限する

 

中国共産党はその配下にあるハイテク企業を使って世界の通信の自由をも奪おうとしている。国連は先日、今年9月に予定されている国連成立75周年記念式典に関するオンライン会議等でテンセントと協力して進めていくと発表した。注意すべきなのは、テンセントは中国の最大手監視ソフトメーカーであることだ。

 

中国共産党の浸透は具体的なデバイスやサービスにとどまらない。昨年11月、中国共産党はロシアと連携して「サイバー犯罪対策に関する決議案」を可決させた。この決議案は強権的政府に対し、サイバー上での言論統制を可能にするより広範囲な権力を与えるおそれがあるため、多くの西側諸国は反対票を投じた。しかし、一国一票の原則のもと、この決議案はロシア、中国、インド、カザフスタン、シリア、エジプト、北朝鮮などの賛成により可決となった。

 

こうした方法を通して、中国共産党は通信と言論の自由という国際的な民主主義的規範をかいくぐり、国家によるプロパガンダと情報統制がはびこる世界を作り上げようとしている。

 

今こそ中国共産党の影響を払拭しよう

 

多くの専門家は中国共産党がここまで国連に深く浸透した原因を分析した。それはすなわち、自由主義諸国の怠慢と指導力不足により、中国共産党政権が人権理事会や国連大会において与えてきた悪影響を放任したこと、そして中国共産党政権が加盟国間の選挙を用いて反民主主義的な議題を推進してきたことに他ならない。

 

リー氏は報告書において、もし国際機関による協調の取れた情報発信と明晰な指導方針がなければ、各国政府と民衆は中共ウイルスがもたらした影響に十分対応することはできず、近い将来このような惨禍を繰り返す結果になると警鐘をならした。

 

コロナ禍が緩和されれば、多くの国家は国際連合と中国共産党の関係について考え直すだろうと同氏は言う。そして、中国共産党指導者を問責にかける真相追及運動はその始まりとしてふさわしいとも話している。

 

この度の疫病によってもたらされる結果の一つに、民主主義国家の覚醒があげられよう。アメリカとその同盟諸国は中国共産党の浸透工作を摘発し、排除していく。そうなれば、世界は伝統と普遍的価値観に回帰することになるだろう。

 

(翻訳編集・文亮)

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