【紀元曙光】2020年8月29日
(前稿から続く)1933年ごろの中国を、タウンゼントの目を通して見ようとしている。
▼もともと中国人嫌いのタウンゼントを余計に困惑させたのは、表面上は米国のご機嫌をとる中華民国政府と、米国から中国へのキリスト教伝道事業の一環であるミッションスクールの現場で、ほとんど「反米運動」の扱いを受けて疲労困憊する宣教師たちの、あまりのギャップであった。
▼本稿の趣旨は、繰り返し述べているように「中国人」について考えることにある。ラルフ・タウンゼントの『暗黒大陸 中国の真実』は、彼が見聞した中国と中国人について、ほぼ一貫してそのマイナス面をつづったノンフィクションある。
▼米国人であるタウンゼントが、中国の伝統文化について深い知識をもっていたか(例えば、漢籍が読め、詩文が解せるという意味で)というと、それほどでもない。ただ、彼の眼は、個々の場面を鮮明に撮影する優秀なカメラであった。画像を後で加工できるデジカメではなく、昔のフィルム・カメラである。
▼確かに、彼のいう中国人は、目をそむけたくなるような、嫌悪と軽蔑の対象として描かれている。その典型的な性質は、現代の中国人にも、あまりにもぴったり合致するので驚きを禁じ得ない。他人の土地を、既成事実を作ることで図々しく奪い取ろうとするなど、今の共産党中国が東シナ海や南シナ海でやっていることと大いに重なる。
▼そうした意味で、タウンゼントという「カメラ」は余人をもって代え難いものであり、彼の著書の意義は大きいと言える。ただ、残念ながら彼は、「良い中国人」を知らなかったようだ。(次稿へ続く)
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