中国当局は、4大国有銀行の資金不足を解決するために、総損失吸収能力(TLAC)規制の強化を示した(LIU JIN/AFP/Getty Images)

中国 4大銀行が深刻な資金不足、損失吸収規制を強化へ

広東省深セン市と浙江省は、10月10日以降、市民が個人名義で20万元(約311万円)以上の預金を引き出す場合、預金の用途や資金の来源を説明しなければならないと新たに規定した。米金融調査機関は8月、中国4大国有銀行が今後4年間、6兆元(約93兆円)以上の資金が不足するとの懸念を示していた。

中国人民銀行(中央銀行、PBOC)と中国銀行保険監督管理委員会(CBIRC)は9月30日、それぞれのウェブサイトで、「グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIB)の総損失吸収能力TLAC)管理に関する措置(意見応募案)」を公表した。意見公募の締め切りは10月30日だ。この公表を通して、中国当局は中国工商銀行、中国農業銀行、中国銀行、中国建設銀行の4大国有銀行のTLACを高め、社債や株式などによる資本補てんを強化する意思を示した。

TLAC(Total Loss‐Absorbing Capacity)とは、グローバルなシステム上重要な銀行の経営破たん発生時に、公的資金の注入を回避するために、資本や社債の積み増しを求める規制である。20カ国・地域の金融監督当局で構成される金融安定理事会(FSB)は2015年、「TLAC規制」を制定した。この中で、「大きすぎてつぶせない銀行」リストに入れられた中国の4大銀行は、2025年1月1日までにTLACをリスク加重資産の16%に、2028年1月1日までに18%に引き上げなければならないと規定した。

一方、米格付け大手のS&Pグローバル・レーティングは8月25日、中国の4大国有銀行は、2019年末時点で、TLAC規制が求める基準と比べて、2兆2500億元(約35兆円)の資金が不足していると指摘した。新たな資金調達をしなければ、2024年に4大銀行の資金不足規模は最大6兆5100億元(約101兆円)に拡大し、TLAC基準を満たせなくなると警告した。

中国人金融学者の司令氏は10月1日、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対して、国有銀行の資本不足の問題は数年前からあるとした。「今年のパンデミックで、外資企業の撤退が一段と加速した。中国の銀行の危機は本質的に流動性危機である。国内経営環境の悪化を反映している」と同氏は述べた。

S&Pグローバル・レーティングのアナリスト、黄翰屏氏は、投資家は中国の4大銀行がTLAC基準を満たしているかに注目しているとした。これは銀行の資本構成や資金調達コストと関わり、銀行の経営破たん発生時に、投資家らが追加支援を受ける仕組みなどに関連しているためだという。

司令氏によると、4大銀行が資本不足に直面した主因は「貸出金が巨額に上るのに対して、市民からの預金が少ない」ことにある。

一方、中国当局は一段と金融規制を強化している。中国紙・毎日経済新聞によれば、浙江省と広東省深セン市は10月10日から、高額な現金引き出し管理措置をテストする。銀行口座の利用客は現金で預金を引き出す場合、少なくともその1日前までに、引き出し手続きを予約する必要がある。浙江省政府は、法人口座が50万元(約778万円)、個人口座が30万元(約467万円)以上と定めた。深セン市政府は、法人口座が50万元、個人口座が20万元以上と規定した。

中国当局は今年7月、初めて河北省で高額な現金引き出し事前予約制をテストした。

(翻訳編集・張哲)

 

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