中国のデジタル人民元、本格導入前に「偽物が出回っている」
中国人民銀行(中央銀行)デジタル通貨研究所の穆長春所長はこのほど、中国本土で偽のデジタル人民元ウォレット(スマホアプリ)が出回っており、中央銀行は偽造防止の課題に直面していると明した。
中国メディアによると、10月25日、穆所長は、中国のシンクタンクである中国金融四十人論壇(CF40)が主催した金融フォーラムに出席し、デジタル人民元について質問を受けた際に発言した。
報道を受けて、中国のネットユーザーは「紙幣よりデジタル人民元はもっと偽造しやすい」「デジタル人民元が安全ではないということだ」などと声を上げた。さらに、中国当局に対して「デジタル人民元の偽造防止技術を詳しく説明してほしい」と求める声もある。
中国当局は10月中旬、深セン市で、スマホでデジタル人民元の利用を試験的に始めた。人民銀行が抽選で、同市の市民5万人に1人あたり200元(約3150円)が入ったデジタルウォレットを配布した。当選者は定められた期間中、デジタル人民元が利用可能な3000以上の店舗で買い物などができる。
しかし、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)21日付は、深セン市のスーパーの従業員の話として、デジタル人民元の利便性は低いと報道した。同従業員は、「ほとんどの市民は、現金や微信支付(ウィーチャットペイ)などの電子マネーを使っている。どこの店に行っても電子マネーのQRコードが設置してあるから、消費者も店側にとっても、今、電子マネーが一番便利だ。デジタル人民元を使える店は少ないので不便だ」と話した。
一方、穆長春所長は、デジタル人民元が導入されれば、中国国民が住宅購入、投資、外貨両替などを行う場合でも、デジタル人民元を利用できると強調した。
中国当局は、デジタル人民元の普及について、マネーロンダリングや汚職などの犯罪行為を防ぐためだと主張している。その一方で、中国当局が資本流出や金融危機の発生による取付け騒ぎを回避し、国民の資金の流れを監視するため導入を決めたとの見方もある。
(翻訳編集・張哲)