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チベットの光 (2) 餓えと寒さ

父親の死後、ウェンシーとその妹のプダの生活はままならなくなった。彼らは、夏の間は畑で過酷な労働に耐え、耕作のできない冬になると叔母の羊毛織りを手伝って、市場に売りに出かけた。「生きるためには、働いてもらいますよ」と叔母は言い、この兄妹が少しでもしくじると、これを罵って折檻し、罰として食事を与えなかった。その時、ウェンシーは7歳で、プダは3歳だった。

 「あんたたち、わざと羊毛をダメにしたね!こんな性悪な子供見たことないわ。大きくなったら、どうなることやら」。叔母はダメになった羊毛を見ると、これを踏みつけて言った。

 「この子たちったら、父親が死んだから教養も何もない。このおばさんが、代わりに教えてやるよ」。叔母は二人の子供の目の前で、彼らに残されていた僅かな残飯同様の食事をもってくると、テーブルごとひっくり返した。

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