チベットの光 (4) 家財の返還拒否

 そして、母は叔父と叔母、親戚、友人、隣人などを大きな客間に招いて盛大な宴席をもうけた。客人が席につくと、母はすっくと立ち上がり重々しく口を開いた。「今日は、息子ウェンシーが十五歳になる誕生日です。このたびの宴会は、息子が成年に達したことを祝うものですが、この場をかりて皆さんの前で亡き夫の遺言を読み上げさせていただきたいと思います」。すると母方の叔父が、亡き夫ミラ・チャンツァイの遺言を大声で読み上げた。

 読み上げると、大きな客間は静まり返り、酒肴をする音は何も聞かれず、空気が凍りついた。

 母は、重々しい空気を振り払うように言った。「現在、ウェンシーが成年に達し、こうして宴席をもうけ、ジェサィを嫁に迎えることもできるようになりましたので、亡き夫の遺言通りウェンシーに家財を相続させたいと思います。今皆さんがお聞きになりましたのは、ウェンシーの父親が存命中に残した遺言です。当時、皆さんも同席し、一緒にそれを聞いたはずです。ですので、現在叔父夫婦が管理している財産は我が家に返還していただきたく思います。ここ数年来、叔父夫婦と友人の皆さんには大変お世話になりました」

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