【医学古今】 客家の健康茶 擂茶の由来

擂茶(らいちゃ)は、主に中国の福建省、広東省、湖南省および台湾の客家(はっか)の間で伝えられている伝統の健康茶です。このお茶は、材料をすり鉢の中でゆっくりとすって作ることから、擂茶と呼ばれています。

 伝説によれば、後漢の名将・馬援(ばえん)が大軍を率いて武陵(現在の湖南)を守っていた時、兵士たちは「傷寒(しょうかん)」という疫病(※) に侵されていました。

 ある日、悩んだ馬援が川辺を散歩している時、1人の老婦人に出会いました。老婦人は馬援の悩む様子を見て、「何かお困りですか」と尋ねました。

 馬援は、兵士たちが「傷寒」に侵されている様子を話すと、老婦人は「私はこの病気を治療できる処方を持っています」と言って、袖間からその処方を書いたものを出して馬援に渡しました。馬援は処方をじっくりと見て、礼を言おうとした時、老婦人の姿はすでに見えなくなっていました。

 これはきっと仙人から授かったものに違いないと思った馬援は、処方に書かれた薬を作るよう兵士たちに命じました。兵士たちがこの処方の薬を飲むと、間もなく元気を回復したといいます。その後、この処方は民間に伝わり、広く愛飲されるようになりました。

 最初に処方された薬は、生米、生茶、生姜で構成されていたので、「三生湯」と呼ばれていました。その後、日常的なお茶として飲めるよう工夫を凝らし、ピーナッツ、ゴマ、大豆、アワ、ハト麦などが混ぜられ、より美味しくなりました。

 (※)環境変化により集団発生する伝染病のこと。ここでは腸チフスの類を指す。

 

(翻訳編集・文子)