自分の利益を顧みない

手柄を君主に捧げる名宰相

春秋時代の斉の君主・斉景公は大規模な建築物を建てることを決め、多くの民衆は朝から晩まで働かされた。真冬になり、寒さが厳しくなっても工事は停止することがなく、民衆の不満は高まっていた。民衆は宰相・晏子(イェン・ツ)が斉景公へ進言することを期待し、外遊からの帰国を待ち望んでいた。

数日後、帰国した晏子に民衆がこぞって苦情を訴えた。晏子はまず斉景公に外遊の報告をした。斉景公が晏子にもう少し居るようにと言うと、晏子から一曲差し上げましょうと話し、歌い出した。

「不満をつのらせた民衆は心を晴らすところがなく、

凍える雨に打たれても 雨宿りも出来ない

上の者の一存で一家離散になってしまうのは何故?」

晏子は感極まって涙を流し、歌い続けることができなくなった。斉景公はその時、晏子が自分に何かを訴えていることに気がついた。「何故こんなに悲しくなるのか?きっと建築のことであろう。すぐに工事を中止させ、民衆が家族と団欒できるよにしよう。もう泣かないでくれ」と晏子に告げた。

晏子は何度もお辞儀をすると、言葉を残さずに退席し、そのまま建築現場へ急いだ。

晏子は建築現場に着くと、すぐさま働いていない人に対して棍棒を振り回し、厳しく言った。「私でさえ住む家があるのに、君主が欲しい建物を何故早く完成させないのか?働け、働け」。民衆は晏子の言動を理解できず、「晏子は君主に協力して民衆を苦しめるのか。彼にはがっかりだ」と晏子を罵った。

暫くすると、斉景公の使者が建築現場に到着した。「君主からの命令だ。工事を中止し、今から家に帰って家族と団欒するように」と使者は伝えた。民衆は喜び、君主を褒め讃えた。

孔子はこれについて感嘆し、「古代、良い臣下とは、君主が高い評価を得られるようにし、悪い評価を自分が引き受ける。また、朝廷の中にいるときは君主の誤りを改めさせ、朝廷の外にいるときは君主を称え、自らの功績には一切触れない。これらのことを全うできる人は晏子のみである」と言った。

  (翻訳編集・李青)

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