夏目漱石『三四郎』を開いて「あれ、柔道がでてこない」と不思議がったのは高校生のときでした。そんなもの知らずの私でも「平成の三四郎」の大活躍は、今も目に焼きついて離れません。
古賀稔彦さん。53歳での突然の訃報に思わず耳を疑いました。1992年のバルセロナ五輪では、競泳平泳ぎで岩崎恭子さん14歳の金メダルとともに、柔道男子71キロ級の古賀選手の優勝は感動を呼びました。直前の稽古で左膝に大けがを負いながら気力で勝ち上がり、掴んだ金メダルでした。
小柄ながら、切れ味の鋭い投げ技は鮮やかの一言に尽きます。そんな古賀選手に、人々が敬意と憧れを込めてつけたあだ名が「平成の三四郎」。引退後の「子どもたちが一生柔道を好きになるように」との願いを込めた指導は、古賀さんの曇りのない澄みきった人柄からのものでした。
(慧)
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