唐山地震の時、中共政府は被害者に、「パニックを避けるために、地震の予報を公表しなかった」と言った。 (挿絵=大紀元)

【党文化の解体】第2章(22)「科学を無視し、マルクス主義を信奉」

5)中共は「科学」を無視し、自然に反するマルクス主義を信奉

 中共は科学の擁護者に扮し、その上、政府御用の「反偽科学」の専門家を養成し、巨額の資金を投じて大々的に「迷信と偽科学に反対する」キャンペーンを行なってきた。その宣伝の気勢は、現代科学が発達している如何なる先進国家をも超えている。しかし、いかに宣伝しても、科学的法則を無視し、自然の規律に反する中共の本質を隠すことはできない。

 2006年は唐山大地震30周年に当たり、1月にこの地震に関する詳しい調査報告『唐山警世録』が出版された。ところが、出版後すぐに、中共の宣伝部門から発行禁止令が下された。その原因は、この調査報告の中で、地震発生前、専門家らは幾度も正確に地震の発生を予測したことが明らかにされたからだ。

 

唐山地震の時、中共政府は被害者に、「パニックを避けるために、地震の予報を公表しなかった」と言った。 (挿絵=大紀元)

実際は、当時、中共の政局は不安定な状態にあり、政治の安定が最重要とされていたため、地震の予測情報を関係者に報告または公表することができなかったのである。唯一、河北省青龍県のある幹部が、非公式の場で国家地震局の技術者から情報を聞きつけ、県民全員に通達したため、震源地の唐山市からわずか115キロしか離れていない同県では、地震による死者は一人もいなかった。この奇跡は特別な事例として、国連の公衆管理と災害科学全世界統合計画に記録された。

 しかし、今日に至っても、中共は政治第一主義の下、自然規律に背反し、国民の命に危険をもたらす罪を繰り返している。2003年に世界的大流行となったSARS(重症急性呼吸器症候群)は、最初2002年11月に中国広東省で勃発した。ところが当時、中共内部は江沢民が第16回党大会で引退するかどうかをめぐって駆け引きをしている最中で、政権の安定を図るために情報を隠蔽した結果、感染の拡散を防ぐ機会を失い、旧正月に伴う人口の大移動によってSARSは瞬く間に全世界に広まった。そこに、科学を重んじる姿勢はまったく見られなかった。

 数十年来、中共は功名心に駆り立てられ、熱狂的な政治目標のために自然規律に反する愚かな事を数多くやってきた。結局、被害を受けたのは一般の中国国民である。

 たとえば、三峡ダムは政治が全てを凌駕するという中共の「科学的な戦略」の典型である。1986年、政治政策主導下で三峡ダム建設の可能性に関する「検証会議」が開かれた。中共はこの世紀をまたがる巨大な建設プロジェクトを通じて、「改革開放の成果を全面的にアピール」し、自然を操る能力を誇示し、執政の合法性を証明しようとした。そこで、この建設計画を異議なく通すために、ダム建設に反対する著名な水利工学専門家である黄万里教授(※)を「検証会議」に呼ばなかった。黄教授は中央指導部に何度も、三峡ダムの危険性を指摘する書簡を出すとともに、公表された検証報告は間違いだらけで、即座に現在の建設計画を中止して再度審査を行う必要があると指摘した。中共当局はこれに対して、沈黙を守り通した。

 三峡ダム建設の実行可能性を「検証」する作業が終わろうかというときに、「六四天安門事件」が発生し、ダム建設に反対する人の一部がその関わりで逮捕・投獄されたことから、残りの反対派の人たちもプレッシャーを受けた。

 当時、生態環境への影響を検証するチームは、「三峡ダムは生態環境に対して、メリットよりデメリットのほうが大きい」と結論付けたし、中国科学院環境科学委員会、科学院三峡ダムプロジェクトの中にも三峡ダムの建設に反対する専門家がいた。

 もちろん、これは中共にとって喜ばしいことではないため、実行可能性検討チームの責任者であった潘家争は1990年7月6日、国務院で開かれた三峡ダム建設の可否をめぐる検証報告会議で、中共中央の意思に配慮して、「メリットよりデメリットのほうが大きい」という結論を「三峡ダムは生態環境に対して広く深い影響を与える」という曖昧な言い方に変えた。

 その後、長江水利委員会は生態環境への影響を検証するチームの報告書の大綱が未だ国家環境保全局に報告されていないことを理由に、同チームの報告書を完全に否定し、それからわずか6ヵ月後に改めて作成された報告書の中で、「デメリットよりメリットのほうが大きい」という結論に変更された。

 1991年3月、当時の中共最高指導者であった江沢民は、「そろそろ三峡ダムの建設を宣伝すべき時期になった。正面から宣伝して、工事の準備もそろそろ行なうべきであろう」との指示を下した。その結果、1991年末から1992年初にかけて、三峡ダムの建設を擁護する報道が大量に現れ、反対の声はまったく聞こえなくなった。

 2000年5月17日、三峡ダム建設を全面的に支持してきた張光闘教授は、三峡ダムの洪水防止蓄水量が実際には設計基準に達しえないということに気づいた後、三峡ダム建設委員会の主任に「このことをくれぐれも一般公開しないように」と再三念を押した(『三峡探索』通巻第二十七号)。

 このほか、国内外の専門家も、三峡ダムの生態環境に対する破壊はその経済利益をはるかに超えると指摘した。三峡ダムの蓄水一つをとっても、水流が緩慢になり、水の自浄能力が弱まり、水質が劣化することによって、その損失は三峡ダムの発電による経済収入を超えてしまうというのである。

 三峡ダムの建設計画を検証する段階で、環境保護問題の審査を担当していた張光闘教授は、工事開始後の2000年に三峡ダム周辺の深刻な汚染に気づき、汚染対策に3000億元の予算が必要だと指摘した(『三峡探索』通巻第二十七号)。しかし、三峡ダムの投資総額は1800億元しかなかった。ダム建設に絡む問題があまりにも多く、中共高層の指導者は誰もその責任問題に関わりたくないため、2006年5月、この世紀をまたがる大工事が竣工した際、在任中の中央指導者は誰も完成式典に出席しなかった。

 

三峡ダム建設の成果が宣伝される一方で、これによって生じた環境問題は後を絶たない。図左:中央テレビ局「党の賢明な指導の下、2000億元を投資した三峡ダムによって、重慶は冬は暖かく夏は涼しくなるだろう」。図右:2006年夏、重慶では高温・旱魃が続いた。「作物が全滅だ!」「井戸の水が枯れた!」「ここに水があった!と思ったら、工業汚水だ!」(挿絵=大紀元)

中共の政策の中では、「科学」と「科学者」は政治の奴隷にすぎず、必要のない時には、捨てても、適当に踏みにじってもいいし、必要な時には、「敵」を攻撃する道具として利用する。

 このような状況下で、不屈の精神を持ち、真実を追究する科学者は、中共の統治下では活躍する場がなく、終始圧制を受けている。前出の科学者・黄万里氏は正にその典型的な例である。

 一方、中共の好みに迎合する「科学者」もおり、彼らは忠実に党の指示を執行したことによって、重要なポストを与えられた。潘家争と張光闘がその例で、この二人は、中共が法輪功などの民間信仰団体を弾圧するに当たって、科学界からの批判を必要とした時は、なんと、「中国反邪教協会」の発起人に変身したのである。

 中共中央宣伝部に科学局という部門があり、科学領域のイデオロギー問題の管理を担当している。中共の「反偽科学」の急先鋒である何祚庥はかつてこの部門に所属していた。科学局はこれまで、「偽科学」を批判する運動を相次ぎ展開し、ほとんど全ての自然科学の領域に及んだ。

 例えば、モーガンの遺伝子説に対する批判、メンデルの法則に対する批判、梁思成の建築学に対する批判、馬寅初の人口学に対する批判、量子力学に対する批判、相対論に対する批判、サイバネティックスに対する批判などなど。

 サイバネティックスの理論は、「技術の観点から全ての社会現象を解釈しようとするため、資産階級社会が腐敗・没落した本当の原因が隠された」と批判され、アインシュタインは、「自然科学界最大のブルジョアジー反動学者」というレッテルを貼られた。アインシュタインの相対性理論は「完全な形而上学、唯心主義」と批判された。宇宙大爆発論と現代宇宙学は、「学術領域の唯心主義の典型」であり、「宗教に新しい論拠を提供した偽科学である」と痛烈に批判された。

 中共はこの数十年来、ある堂々たる理由をもって、国民を殺害し、政治運動を繰り広げてきた。その理由とはつまり、共産主義の「この世の天国」を作ることである。しかし、中共に「科学的」だと絶賛された「共産主義理論」は、実は自然の法則に完全に背離した邪説である。

 共産主義理論に従えば、いわゆる共産主義が人類社会の「最高の社会形態」であり、生産力が高度に発展し、物質が極めて豊富になり、物が「必要に応じて配分される」という平等で調和の取れた社会になるはずだが、不幸なことに、自然の資源は限られているのに、人間の欲望は限りないものである。

 世界各地の専門家によって設立された民間のシンクタンク、ローマクラブは1972年に有名な研究報告書『成長の限界』を発表した。報告書の中で、「人類の生産は無限に増長し続けることはできない」ことが指摘され、初めて世界規模で環境と発展の問題への関心を呼び起こした。

 1980年代、国連の「環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会)」は『我ら共有の未来』という報告書をまとめ、「持続可能な発展」という新しい概念を提示し、環境危機、エネルギー危機と発展危機の不可分性を指摘し、地球の資源とエネルギーは人類の需要を満たすことは不可能だと警鐘を鳴らした。言い換えれば、限られた地球資源では、共産主義が提唱する「必要に応じて物質を配分する」というほど物質が豊富な社会を実現することは不可能だということだ。

 マルクスが共産主義理論を打ち出したとき、人類は工業化時代の初期にあり、人類と環境との関係に対する認識はまだ浅かった。にもかかわらず、共産党は100年も前の「共産主義理論」を普遍的な真理として崇めている。それは正に共産党の愚昧と盲従を物語っていると言えよう。

(※)黄万里(フアン・ワンリ):元清華大学教授(2001年、90歳で死亡)。黄教授の考えは、女性ジャ-ナリスト戴晴(ダイチン)女史が黄教授ら三峡ダム建設反対派へのインタビューを元に編集執筆した『長江 長江-三峡工程論争』(貴州人民出版社、1989年)に詳しく紹介されているが、同書は中国では発禁処分となっている。邦訳『三峡ダム-建設の是非をめぐっての論争』(築地書館1996年)。

 (続く)

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