映画の「寅さん」には名場面が山ほどありますが、その中の一つ。
悩み多き青春にいる甥の満男が、旅立つ寅さんを柴又駅まで見送りにいき、別れ際に寅さんに聞きます。「おじさん。人間は、何のために生きてんのかなあ」。
「うぇ~。お前、難しいこと聞くなあ。何て言うのかな。生まれてきて良かったなってことが何遍かあるじゃねえか。そのために人間生きてんじゃねえのか」。寅さんは、いつもの財布から3千円ほど取り出し「参考書でも買え」といって満男に渡します。そのお金は、さくらがこっそり兄の財布に入れておいたものでした。
あとは振り向きもせず、背中で去る寅さん。「生まれてきて良かったと思えることが、何遍かある」。満男に手渡す、かっこいい伯父さんからの、粋な花束でした。答えを言わぬが最もよい答え。4月1日から新年度です。
(慧)
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