【ほっこり池】奇跡の一本

 5年前の4月14日21時過ぎ(および16日未明)に発生した熊本地震は、熊本、大分両県を中心に、各地に甚大な被害をもたらしました。

 地震発生の翌朝。肥後の名城である熊本城の被害のひどさに、私たちは言葉を失いました。天守閣の鯱鉾は失われ、美しい屋根瓦も流れ落ち、まるで砲戦の後のような痛々しい姿です。なかでも天守閣の前面にかまえる櫓の石垣が、土もろとも抜け落ち、角の石積み一本で上部の櫓が支えられていたのは、信じられない光景でした。

 いつしか「奇跡の一本石垣」と呼ばれるようになりました。ふと思い出したのが、岩手県陸前高田の「奇跡の一本松」。どちらも「一本だけ生き残った」という意味で、巨大な悲しみの中でも、未来へ希望をつなげる象徴となった一本です。

 震災5年にして、熊本城天守閣は見事に復旧されました。

(慧)