チベットの光 (54) 再び罪業を償う

果たして、それはミラレパの叔母であった。彼女は口で罵りながら、棍棒を手にして猛烈に殴りかかってきた。ミラレパは身をひるがえしてこれを避けようとするものの、身体が衰弱しきっていて、駆け出した途中で石につまづき、脚がもつれて近くの渓流に転がり落ちた。

 叔母は罵りながら後ろから追ってきて、彼に追いつくと手にした棍棒で死に物狂いにミラレパを乱打した。ミラレパはほうほうのていで逃げ出そうとするが、容易に立ち上がれない。彼は涙を流しながら詩歌を歌った。

叔母さんよ、思い出してほしい  私は郷里を追われたのだ

老いた母は悲痛の中で亡くなり  妹は糊口のために他所へ行った 

親子三人の苦痛は        いったい誰が与えたのか

私があなたの門前に行くと    猛犬をけしかけられた

罵詈雑言の限りを尽くされ    私の心は冷え切ってしまった

杖が雨のように打ち据えられ   弱った私の身体は事切れそうだ

私は修行者の身の上       怒ろうにも怒りようがない

叔母さんよ、怒りをおさめて   私に食料を布施してくれないか

▶ 続きを読む
関連記事
正月明けに動けないのは、怠けではなく、心のメンテナンスのタイミングかもしれません。【こころコラム】
ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が自身のInstagramに投稿した、愛犬「デコピン」の動画と写真が、いま世界中で大きな反響を呼んでいる。
ネオンのように鮮やかなピンクが森に舞う、オーストラリア固有のピンクロビン。写真家の情熱と偶然が重なり捉えられた奇跡の瞬間が、自然の驚きと喜びを静かに伝えます。思わず笑顔になる一篇です。
毎日見ている舌に、体からの重要なサインが隠れているかもしれません。色や形、舌苔から読み解く中医学の知恵と、現代研究が示す健康との関係をわかりやすく解説。
150ドルの美容液より、鍋に浮かぶ一輪の花――中世から人々の肌を支えてきたカレンデュラが、なぜ今も通用するのかをひもときます。