ヒル・コールさんの私有地に侵入した密入国者の一団(ヒル・コールさん提供)

密入国者が家の壁を叩いている…平穏な日常が脅かされる米南部テキサスの牧場主たち(上)

米国南部国境では今、大きな異変が起きている。メキシコから大量に押し寄せる密入国者が、国境警備隊の監視の目をかいくぐり、住宅の玄関先に現れるようになった。即応性に欠ける政府機関はあてにならず、地元住民はで武装するなど自己防衛を図る。混とんとする辺境の地を、英語大紀元の記者が取材した。

密入国者に自宅を包囲された牧場主

 

テキサス州のキニー郡(Kinney County)は、メキシコ国境沿いにある人口約3400人の小さな町だ。ここで牧場を経営するヒル・コールさんは、妻そして3人の幼い子供たちと共に暮らしている。広大な牧場を持つことは多くのテキサス州民にとっての「アメリカン・ドリーム」だ。

自身が所有する牧場に立つヒル・コールさん(シャーロット・カスバートソン/大紀元)

しかし最近、コールさんは自宅を訪れる「招かれざる客」に頭を悩ませている。国境検問とパトロール隊の目を盗んで侵入した密入国者だ。彼らはコールさんの所有物を破壊するだけでなく、家族に恐怖を与えている。

ことの始まりは今年の1月20日。自宅の玄関先に全身迷彩服を着た男が立っていた。飼い犬が激しく吠えたので気が付いたという。

「とても驚きました。過去10年以上もの間、私は幾度となく密入国者に遭遇しました。しかし、自宅近くに現れたことは一度もありませんでした」とコールさんは言った。「私は彼を立ち止まらせました。そして来た道を戻り、出ていくように言いました」

その後コールさんは国境警備隊に電話を掛けた。しかしその侵入者が逮捕されたかどうかは不明だ。

「あれはまさに、巨大な雪玉が転がり始める瞬間だったのです」とコールさんは回想する。

次の遭遇はその約3週間後だった。コールさんが長男と牧場で運動をしていたとき、不法移民の一団が自宅を取り囲んでいると妻から電話が掛かってきた。

「彼らが窓から室内を覗き込んでいる。彼らは裏口にも、正面玄関にもいる。彼らは壁やらなにやらを強く叩いている」と妻は叫んだ。

コールさんがすぐさま自宅へ戻った。玄関先には一人の男が立っていた。コールさんはまず、玄関先にいた男を素早く庭の外まで誘導した。そして自宅をくまなく捜索し、ガレージに隠れていた他の男たちを敷地から追い出した。

ヒル・コールさんの私有地に侵入する密入国者(ヒル・コールさん提供)

コールさんは国境警備隊に電話をかけたが、到着までに1時間以上を要した。

「私の家は検問所から近い。早ければ彼らは約15分で私の家にたどり着く」とコールさんは言った。「成人男性が5人もいたのです。考えたくはないのですが、彼らがもし何かよくない企みをしていたらと思うと恐ろしくなります」。

銃を手に取る

この出来事以降、コールさんは子供たちにあまり遠くで遊ばせないようにした。「それ以降、子供たちを庭の外で遊ばせることさえ思いとどまるようになりました」。

ある土曜日、コールさんは気分転換にと子供たちを庭で遊ばせた。しかし思いもよらぬことが起こった。

「私は庭の芝刈りをしていて、子供たちは裏庭で遊んでいました。すると、5人ぐらい男がやって来ました。私の家に向かって小走りでやってきたのです」。

「私は芝刈り機の電源を落とし、子供たちに家の中へ入るよう叫びました。そして男たちに帰れと叫びました。私は家に戻って銃を手に取りました。私が戻るとすぐに彼らは立ち止まり、来た方向へと帰っていきました」。

国境警備隊が通報を受けてから駆け付けたときには、すでに1時間以上経っていた。

コールさんは、密入国者と遭遇することは以前からあったが、多くても年に25人ほどだったという。何か月もの間、密入国者を見かけないこともしばしばあった。しかし、状況は最近になって急激に悪化した。

「密入国者の問題はいまに始まったものではない、と繰り返し説明を受けてきました。そして密入国者が絶えずアメリカに入っていることも事実です。しかし私の家、私の牧場にとって、これは新しい問題なのです」。

(つづく)

(翻訳編集・王文亮)

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