【医学古今】鍼灸治療と気功
鍼灸と気功。この二つは一見関係がないように思えますが、実際は非常に密接に関わり合っています。
鍼灸治療で使われている経絡、ツボの理論は、全て気功(古代では修煉と言う)の実践を通じて得られたもので、気功の知識や経験がなければ、これらの理論の本質を認識し、理解することはできません。
二千年前には既に認識されていた経絡とツボ。しかし、現在の人類科学の方法では依然として証明することも、理解することもできません。古代人は現代科学の知識を持っていませんでしたが、気功修煉という方法によって、多重空間における生命現象を認識していました。経絡とツボは、この目に見える肉体とは異なる空間に存在しているため、この空間の物質のみを対象にする現代科学では、いくら研究しても解明することはできないのです。
鍼灸治療は、経絡の中に流れている気(エネルギー)を調節する方法です。気功を実践した事がない人は、「気」に対する感覚を得られず、したがって、気による病の病理もうまく理解できません。また、気功の修煉によって鍼灸師自身のエネルギーを高めなければ、治療時に気を制御する力が弱いため、治療効果が小さくなってしまいます。
私自身も、気と経絡を本当の意味で認識したのは、気功を練習し始めてからです。これは殆どの鍼灸師が経験したことのある例だと思いますが、同じ患者の同じツボに鍼を刺しても、施術する鍼灸師によって患者側の感覚が異なり、治療効果にも大きく差が出ます。
私の恩師であり、中国の鍼灸名人、鍼灸有効点療法の創始者である郭效宗先生は、「鍼灸治療の効果を高めるためには、我々が気功を練習する必要がある」とおっしゃいました。ご自身が練習していた気功法を私たちに示教してくれたこともあります。
同じく、中国の火鍼治療の名人である賀普仁先生も、「鍼灸治療者が気功を練習していない場合、その治療を受ける人は無駄な努力をしたのと同じで、無意味に苦痛を受けただけで終わってしまう」とおっしゃったと、『賀氏鍼灸三通法』に紹介されています。賀先生はながらく「八卦掌」という気功法を練習されているようです。
実際、ほとんどの古代の医師たちは、何らかの気功法を実践していました。例えば五禽戯(ごきんぎ)は、漢代の名医・華陀が練習していた気功法です。
気功法には様々な種類があります。私は数種類の気功法を実践したことがありますが、法輪功を勉強する前は気功の原理をよく理解できず、効果もさほど感じていませんでした。法輪功を修煉して初めて、気功の本質と漢方、鍼灸医学との関連性を理解することができたのです。
(医学博士・中医師・鍼灸師 甄立学)