2021年6月1日、サバ州の州都コタキナバル沖のマレーシア海域上空を飛行してサラワク州沿岸地域に向かう中国人民解放軍空軍の「イリューシンIl-76(Iluyshin II-76)」大型ジェット輸送機(マレーシア空軍)

中国機の領空侵犯、マレーシア航空管制の無線に「一切応じず」1日の緊急発進で=マレーシア政府

2021年6月1日、ボルネオ島に位置するサラワク州付近のマレーシア領空を侵犯した十数機の中国人民解放軍空軍(PLAAF)軍用機に対応するため、マレーシアが戦闘機をスクランブル(緊急発進)するという事態が発生した。

マレーシア空軍(RMAF)の発表によると、戦術的な編成飛行で接近してくる中国人民解放軍空軍の軍用機に対してマレーシアの航空管制施設が無線で繰り返し呼びかけたものの一切応答がなかった。

政府を非難する声明を発表したマレーシアのヒシャムディン・フセイン(Hishammuddin Hussein)外相は、駐マレーシア中国大使を召喚して「マレーシア領空と主権の侵害に関する説明」を求める方針を明らかにしている。

アジア・タイムズ・オンラインが報じたところでは、フセイン外相は、「マレーシアは毅然とした姿勢を取る。当該国と友好的な外交関係を維持しているからといって当国が自国の国家安保をおざなりにすることはない。マレーシアは今後も引き続き自国の尊厳と主権を守る」と述べている。 マレーシア国営通信社(BERNAMA)が伝えたところでは、マレーシア空軍のアクバル・アブドゥル・サマド(Ackbal Abdul Samad)参謀総長(称号:Tan Sri)は、コタキナバル上空は航空交通量が多いこともあり、今回の事態は「国家主権だけでなく、航空安全という面でも深刻な脅威」であると訴えている。

中国共産党は軍事力を用いて経済活動を混乱させることで近隣諸国を抑圧し、中国が一方的に地図上に引いた「九段線」に基づきほぼ全域の領有権を主張する南シナ海で資源開発を強行している。2016年にハーグに所在する常設仲裁裁判所が九段線に法的根拠はないとの判決を下したにも関わらず同裁定を無視した中国政府と中国共産党は南シナ海の軍事化を推進し、2021年1月には同政府が主張する広大な海域を「防御」するために中国海警局が武器使用などの武力を行使することを認める新法「海警法」を制定した。

2021年2月、ラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じたところでは、マレーシアの排他的経済水域(EEZ)内に位置する資源豊富なルコニア礁に中国海警局の船舶が侵入したことで、マレーシア海軍は同海域に艦船を派遣している。

中国の海上民兵船も資源開発に従事するベトナム船舶に妨害行為を働き、定期的にフィリピン排他的経済水域に侵入している。

中国人民解放軍空軍の軍用機は、南シナ海の一部の領有権を主張する台湾近辺でも攻撃的な活動を繰り返していることで、台湾は自国領空を防御するために頻繁に戦闘機をスクランブルすることを余儀なくされている。

同地域の諸国および国際裁判所などの国際機関が口を揃えて、南シナ海の大部分の領有権を主張する中国の訴えを否定しているが、中国当局は中国共産党独自の法的解釈を押し通しているのが現状である。たとえば、中国の教師陣が生徒や学生に中国の最南端はジェームズ礁であると教えていることで物議を醸している。

この暗礁はルコニア礁から約100キロのマレーシア排他的経済水域内にあり中国本土からは1,800キロも離れている。 国際法に基づき、最も浅い所でも水深21mのジェームズ礁のように常に海面下にある地形の領有権を国家は主張することも海域を生成することもできないという理論を米国とその同盟諸国は断固として表明している。

しかし、東南アジアを専門に研究するオーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のカール・セイヤー(Carl Thayer)名誉教授がボイス・オブ・アメリカ(VOA)に語った説明によると、これは中国に言わせれば「根拠のない不当な主張」ということになる。  

(Indo-Pacific Defence Forum)

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