豪英FTA 中国に頼らない、多角化に向けた新たな一歩
この1年間、中国の経済的圧迫の影響を受けてきた主要なオーストラリアの輸出産業団体は、オーストラリアと英国が15日、自由貿易協定(FTA)で合意したことを歓迎した。
オーストラリア・グレープ・アンド・ワイン社のCEOトニー・バタグレーン氏は、連邦政府の努力を称賛し、FTAは「重要なマイルストーン」であると評価した。
バタグレーン氏は、声明の中で、「英国は、オーストラリアのブドウとワインのビジネスにとって非常に重要な市場であり、英国の消費者は、最も熱心なオーストラリアワインの愛好家だ」
「オーストラリアのワインの対英輸出額は、2021年3月31日までの1年間で33%増の4億6100万豪ドルとなり、この期間の輸出総額の17%以上を占めている。今後も成長の余地は十分にある」と述べた。
この豪英自由貿易協定により、英国へのワイン関税が撤廃される。英国市場でのオーストラリアの存在感が高まることが期待されている。
「その他にも、認証要件の簡素化や英国市場でのオーストラリアワインのさらなる加工・包装能力が進展することを期待している。これにより、イノベーションが促進され、ここ(豪州)と英国で雇用が創出され、二酸化炭素排出量を削減することできる」とバタグレーン氏は付け加えた。
オーストラリア産ワインは、中共ウイルス起源に関する独立調査を要求したオーストラリアへの報復行動として、昨年4月に中国がとった制裁措置の影響を受けた産業の一つだ。
ワイン産業は、3月に中国商務省が116〜218%の制裁関税を課したことで大きな打撃を受けた。
ワイン・オーストラリア社 (Wine Australia) が5月に発表したデータによると、中国へのワイン輸出量は96%減少し、売上高は3億2500万豪ドル (2020年12月~3月) から1200万豪ドル (2021年12月~3月) にまで落ち込んだ。
しかし、この損失は、世界中の代替市場への売上が10%増加したことで相殺された。
英国への売上は33%増加し、米国を抜いてオーストラリアのワインメーカーにとって2番目に大きな輸出市場となった。
次いで、米国(4%増の4億3,200万豪ドル)、カナダ(9%増の1億9,500万豪ドル)、香港(55%増の1億4,800万豪ドル)、ニュージーランド(10%増の1億400万豪ドル)となっている。
また、中国からの経済的な圧力に耐えてきた食肉業界も、英国とのFTA合意を支持している。
中国の税関当局は昨年、オーストラリアの大型食肉工場6社からの輸入を停止している。
今回のFTAでは、牛肉と羊肉の関税が10年かけて段階的に撤廃される。まず無関税の輸入の上限を3万5,000トン(牛肉)と2万5,000トン(羊肉)とし、10年間で徐々にその輸入枠を増加させ、それぞれ11万トン、7万5,000トンとなる見込み。
A-UK Red Meat Market Access Taskforceの議長アンドリュー・マクドナルド氏は、「オーストラリアと英国は、高品質な赤身肉の生産に関して共通の価値観を持っている」とし、「これまで、英国(および2021年以前は欧州連合)の厳しい輸入規制により、当社のサービス能力が制限されてきたが、豪英FTAにより、『オージーを買いたい』と希望する英国の消費者へ対応しやすくなる」と述べた。
さらに「豪英FTAの合意によって、二国間関係に新たなページが刻まれることになり、今後とも協力していく機会となるだろう」と付け加えた。