「一帯一路」に乗って アフリカで民間警備会社を通じた中国軍拡の懸念=報告
広域経済圏構想「一帯一路」をスタートさせて以降、中国はアフリカへの投資を増やしている。同時に、現地治安に合わせて民間警備会社を増やし、アフリカ市場で展開している。人民解放軍と密接な関係を持つ民間警備会社を通した中国の軍事力の拡大が懸念されている。
民間警備会社(PSC)とは、入退室管理や盗難・暴力からの保護など、受動的なセキュリティサービスを提供する会社だ。いっぽう、民間軍事会社(PMC)は軍事的サービスを行う企業のことを指している。しかし、PSCが警備のために兵器を使ったり、警備訓練システムを提供したりすると、PMCとの区別が不明確になっている。
令和元年の「日本防衛白書」は「一帯一路は軍事と密接な関係がある」と指摘されており、これを受け、ブルームバーグは「日本は中国が一帯一路を通じて、人民解放軍をインド太平洋地域に展開できると信じている」と報じた。
全米アジア研究所(NBR)のレポートによると、一帯一路には、5000社あまりの中国民間警備会社(PSC)が300万人以上の雇用者を有している。いっぽう、2019年世界の軍事力ランキングによると、第一位である米国の兵員は214万人程度だ。
2018年に入ってから、アフリカの沿岸における海賊行為が増加している。同年、北京は「中国-アフリカ安全保障・防衛フォーラム」で、アフリカの治安部隊の新能力、防衛協力、中国軍事関係の強化に関する協議を推進した。それまでのアフリカにおけるプレゼンスは、貿易や経済開発に集中しており、軍事やテロ対策は米国が担ってきた。
たとえば、華信中安(HXZA)社は、アフリカ沿岸を航行する中国船に武装した警備員を提供する最初の中国のPSCだ。華信中安社が一帯一路各地で警備を取り組んでいる。2005年に設立されたChina Cityguard Security Service社は1万5千人の社員を抱え、海外に17の子会社を持ち、9つの海外のセキュリティ会社と提携している。一帯一路が始まって以来、契約を締結しており、もっともリスクの高いパキスタンでも業務がある。
中国の会社だけで一帯一路の全エリアの警備をカバーできないため、米国のフロンティア・サービス・グループ(FSG)警備会社にも委託している。しかし、FSGの最大の株主は中国の中信集団公司(CITIC Group)であり 、人権侵害にしていることで悪名高い新疆生産建設兵団と協力し、中国の新疆ウイグル自治区に一連の拠点を建設したとの指摘もある。
1993年に定められた中国の法律によれば、PSCの管理者は、軍や警察の司令官が就いている。2009年に制定された「人民武装警察(武警)法」では、公安部が海外における安全保障に関して、中国のセキュリティサービスを監督・管理する唯一の機関として定められた。
分析によると、中国PSCの海外での活動について、国務院、外交部、最高裁判所、国務院国有資産監督管理委員会、国家発展改革委員会、さらに人民解放軍までもが、業界の監督権限を奪い合うようになったと指摘した。中国では、忠誠心や機密情報の取り扱いなどを理由に、元軍人や警察官を採用するのが業界の常識となっている。
中国は、アフリカで目立たない軍事プレゼンスを維持するため、新たな植民地主義国家として見られることを避けたいと考えている。当面の間、軍事介入を余儀なくされるのを防ぐために、PSCは必要な「道具」となるかもしれないとの分析もあった。しかし、軍事援助や民間警備の増加により、北京が不干渉の原則から遠ざかってしまう恐れがある。
アフリカにとどまらず、米非営利団体「高等国防研究センター」が24日に発表した報告書によると、ミャンマー、カンボジアの両国で活動している外国の民間警備会社、中国に拠点がある企業は49社の内に29社あることが明らかになった。
(蘇文悦)