【歌の手帳】夏と秋と
夏と秋とゆきかふ空のかよひぢはかたへ涼しき風や吹くらむ(古今集)
歌意「暦の上では夏の終わりである6月の末。7月から季節が入れ替わって秋になるというが、大空では(秋が来るという)片側に涼しい風が吹いているだろうか」。
凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)の作。旧暦では6月末までが夏で、7月からは秋になります。「上空で、季節の入れ替わりが行われる」と昔の人は考えたらしいのですが、もちろん、そう言い伝えられたからとって、それを事実と信じていたのではありません。
実際、この歌が詠まれた日は、うだるように暑かった(に違いない)のです。
そこに「秋になるはずなのに、この暑さは何だ」という、あきれ果てるような反現実の思いが、この歌の根底にあるのでしょう。
(聡)
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