中国、武漢研究所流出説打ち消しに躍起?捏造、架空の人物…「国内向けのプロパガンダ」
米バイデン政権による中共ウイルス(新型コロナ)の起源調査報告書の正式発表が迫るなか、中国政府は「米フォート・デトリック研究所起源説」を再び持ち出すなど「武漢ウイルス研究所漏洩説」を打ち消そうと躍起になっている。英BBCは最近の記事で専門家の話として「この種の偽りのプロパガンダ攻勢は中国国内向けに効果があるかもしれないが、対外的には無意味だ」と指摘した。
英BBC放送中国語ウェブサイトは24日、「米国がフォート・デトリックを利用してウイルスを流出させた」など全く根拠のない物語を作り上げていると報じた。
ワシントン郊外に位置する同研究所は米陸軍感染症医学研究所で、米国で無名の存在だったが、中国では今、知らない人がいないほど有名になっていると記事中で述べた。
偽アカウント、署名活動…様々な宣伝手段
中国はこの説を広めるため、ラップで愛国主義を訴える音楽ビデオの製作から、偽アカウントによるフェイスブック投稿、さらにはオンラインでの署名活動まで、多様なプロパガンダ手段を取っている、と記事で述べている。
中国外務省の趙立堅報道官は「米フォート・デトリック起源説」を広める上で、重要な役割を果たしたと同報道は指摘した。
米フォート・デトリックが中国で大きな注目を集めるようになったのは、趙報道官の2020年のツイッター投稿が発端である。その後、中国国営中央テレビ(CCTV)は1時間に及ぶ「フォート・デトリックの黒幕」という特別番組まで制作した。
また、報道によれば、米国からの攻勢に対抗するために、人民日報傘下の環球時報は「米国のコロナウイルス専門家であるラルフ・バリック(Ralph Baric)氏が人間に感染する新しいコロナウイルスを作った」という主張を持ち出したという。
この主張は、国際学術誌「ネイチャー メディシン」の論文が証拠としている。
同誌はこの論文が「虚偽の理論の流布」に利用されていると強調した。しかし、環球時報は同誌の説明に対してコメントを避けている。
中国は国民に対する内部プロパガンダに加え、ウイルスの起源をめぐる論争に外国人をも巻き込もうとしている。
偽のスイス学者「ウィルソン・エドワーズ(Wilson Edwards)」をでっち上げたのもその一例だ。在中国スイス大使館は実在しない人物として中国の主張を否定した。
「ウィルソン・エドワーズ」は、中国側がでっち上げた偽のFacebookアカウントである。
同アカウントは、米国がウイルスの起源調査をめぐって世界保健機関(WHO)に圧力をかけたというフェイクを投稿した。フィジーの中国資本のニュースサイトはこのフェイクニュースを報じた。のちに、この報道は中国メディアが「外国メディア」の報道として大々的に転載した。
この偽ニュースは中国メディアのほかにも、大量の偽SNSアカウントによって拡散された。これらの大量の偽SNSアカウントは常に中国に有利な情報を発信している。
プロパガンダは「中国国内向け」との指摘
ソーシャルネットワーク分析調査会社Graphikaの上級調査分析家であるIra Hubert氏によれば、「フォート・デトリック漏洩説」に関しては、「より持続的なプロパガンダキャンペーンが展開されている。この情報を発信するアカウントの数は多く、発信地点も広い」と指摘した。
Graphikaはまた、TwitterやFacebook、YouTubeには隠された親中国の偽アカウントのネットワークがあることを発見した。これらのアカウントは、フォート・デトリック漏洩説を拡散する過程において、「重要な役割」を果たしているという。
しかし、専門家は、中国のこうしたプロパガンダ行動について、それがたとえ中国人を信じさせることに成功したとしても、外国人向けのプロパガンダには何の役にも立っていないと考えている。
米ジョージア州立大学のグローバルコミュニケーション学科の助教授であるMaria Repnikova氏は、「ほとんどの場合、中国政府の最大の関心事は『国内の正当性』である」「中国のやり方は『ストーリーを伝える』だけでなく、彼らは『ストーリーを作る』」と指摘した。
(翻訳編集・李凌)