天文学者も驚愕!銀河系の「いて・りゅうこつ腕」に断層
天文学者にとって、天の川銀河は最も身近な銀河系であると同時に、最も馴染みのない銀河系でもあります。 私たちの太陽と地球は、オリオン腕と呼ばれる銀河系の渦巻き腕の内側に位置しているため、多くの星や惑星など、私たちの周辺の星々の詳細を見ることができます。 しかし、蘇軾の『題西林壁』という詩に「廬山は見る場所によって姿を変える。廬山の全形がわからないのは、私が廬山の中にいたからだ」とあるように、私たちは天の川銀河の全体を見ることはとても困難な事です。
最近になってようやくこの分野での大きな発展が見られたようです。 8月17日にNASAが発表した声明によると、NASAのスピッツァー宇宙望遠鏡と欧州宇宙機関(ESA)のガイア・ミッションを用いて、天文学者チームは、「いて・りゅうこつ腕」と呼ばれる渦巻き状の腕の中にある多数の星形成領域を3次元的にマッピングし、その速度を測定することに成功しました。
驚いたことに、この腕には断層があったのです。
彼は声明の中で「多くの銀河モデルは、射手座の腕が約12度の仰俯角を持つスパイラルを形成しているが、我々が観測した構造の一部は60度近い角度で突出している 」と付け加えています。
「いて・りゅうこつ腕」は、天の川銀河の中で観察されやすいものです。その中には 有名な「天地創造の柱」を含むいくつかの星形成領域があります。
研究チームは、この腕の詳細を知るために、ガイアとスピッツァーのデータを組み合わせて、いて腕の一部の星形成領域の3次元的な位置と速度をマッピングしました。
「ガイアとスピッツァーのデータを合わせて、最終の詳細な3Dスカイマップを見ると、この領域にはこれまで明らかになっていなかったかなりの複雑さがあることがわかります」 クーン氏は声明の中でこう述べています。
この領域は、より大きな角度で突出しているため、腕全体との間に断層を形成しています。 興味深いことに、この領域は星形成領域であり、新しい星が大量に生まれています。
また、スピッツァーが「Galactic Legacy Infrared Midplane Survey(GLIMPSE)」と呼ばれる銀河調査で発見した10万個以上の新生恒星の記録も参考にしています。
「天文学において距離を測るのは最も難しいことのひとつです」と、共著者でカリフォルニア大学アーバイン校の天体物理学者・情報学講師のアルベルト・マルティンス氏は「 最近のガイアによる直接距離測定によって、この新しい構造の形状がこれほど明らかになったのです」とも述べました。
研究チームは、この分析結果から、この断層構造に含まれる星々は、同じ時期に、同じ領域で形成された可能性があり、銀河内で作用する力の影響を独自に受けていると考えています。
新たに発見されたこの断層構造は、天文学者たちを驚愕させましたが、その起源はまだ完全には解明されていません。 最終的に、銀河の大規模な構造には多くの不確定要素があるため、全体像を究明するためには細部を研究する必要があります。本論文の共著者であるウィスコンシン大学ホワイトウォーター校の宇宙物理学者で、GLIMPSE調査の主任研究者であるロバート・ベンジャミンは述べました。また「この構造は銀河のごく一部ですが、銀河全体について重要なことを教えてくれます」とも述べています。
(翻訳・井田)