良質な睡眠は、精神的なパフォーマンスや集中力を高めるだけでなく、心血管系疾患やがんから身を守ることにもつながります。
しかし、自分がどの程度眠れているのか、どうすれば睡眠の質を高められるのか、知らない人も多いのではないでしょうか。
質の高い睡眠をとることは、あなたにとって大切なことです
一見平凡に見える睡眠は、体の生理機能にとって非常に重要なものです。 深い眠りは、エネルギーの回復、細胞の再生促進、筋肉への血液供給量の増加、組織や骨の成長・修復の促進、免疫力の強化などをもたらします。
また深い眠りは、認知症の予防にも有効です。 台湾の林志豪博士によると、深い眠りは記憶を定着させ、脳内の神経毒や異常タンパク質の蓄積を除去し、認知症のリスクを低減させます。
逆に、短期的な睡眠の乱れは、健康な成人の身体的苦痛、感情的苦痛、認知や記憶の問題を引き起こします。また睡眠の質が悪いと、ストレスに対する抵抗力が低下し、ネガティブな思考が増え、仕事中にイライラしやすくなるなど、心理的な悪影響が生じます。
よく眠れていますか?
「不眠症でもないし、毎晩普通に寝ているのに、どうして元気が出ないのか、体調が悪くなってきたのか」と、多くの人が疑問に思っています。
「不眠症の定義が狭く、毎晩寝ているのにどうして不眠症なのだろうと思っている人が多いのです」と林博士は言います。 現実には、睡眠の質が悪く、すでにある程度の睡眠障害を抱えている人もいます。
深い眠りの秘訣:メラトニンを分泌させよう
夜が訪れると、脳の松果体からメラトニンが分泌され始めます。 メラトニンは体温を低下させ、体内時計の要である視索上核を調節して眠気を誘います。
深い眠りの条件は、メラトニンの分泌が多いことと、体温が低いことです。 メラトニンの分泌量は、体温が最も低くなる午後3時から午後6時の間に最も多くなり、そのため深い眠りを得ることができるのです。
「夜にメラトニンを多く出したいなら、朝、日光を多く浴びて体内時計を正常に調整すればいいのです」(林志豪氏)。
「体内時計 」が整い、夕方になると自動的にメラトニンが分泌され、就寝の1~2時間前(9時~23時)にはメラトニンがどんどん出てきて、眠たくなるのだそうです。
眠るべき時に眠らず、スマートフォンやパソコンなどの情報家電から明るい光の刺激を受け続けると、メラトニンの分泌が抑えられ、体内時計が狂ってしまうのです。
メラトニンは体内時計に影響を与えるだけでなく、生殖系、内分泌系、免疫系、中枢神経系、および体内の多くの代謝過程を調節しています。
規則正しい生活を送ることは大切です。 休日は遅く起きる習慣がある人も多いと思いますが、体内時計が狂わないよう、仕事の日よりも1時間長く眠るのが正解です。
理想的な睡眠環境を作るための8つのヒント
理想的な睡眠環境を整えることは、深い眠りにもつながります。
1.就寝の1~2時間前に部屋の照明を落とし、メラトニンがより多く分泌されるようにする
2.暑い時は寝室の温度を下げて、快適性を高めるとともに、静かな環境を保つ。
3.就寝前の儀式を行う。
例えば、寝る前に体のケアをするなど、寝る前に定期的に何かをすることです。
林志豪博士は、多くの人がよく眠れないのは、長い一日の疲れで急に眠たくなって、体がスイッチの切り替えを知らないからだと説明します。
4.読書は脳波を遅くするので、寝る前に短文などリラックスできる本を読み、長過ぎたり、複雑で脳を使うような書籍は避けましょう。
5.ストレッチ体操をして、徐々に筋肉をほぐしていく。
6.リラックスするために腹式呼吸をする。 息を吸うときに4つ、吐くときに8つ数え、お腹に力を入れて息を吐き出す。
林志豪氏によると、横隔膜には体をリラックスさせる副交感神経があり、腹式呼吸によって副交感神経が刺激されると、心拍数が遅くなり、リラックスして深い眠りにつくことができるのだそうです。
7.夜に入浴する習慣のある方は、就寝前の脳への刺激を避けるため、就寝1時間前に入浴することをお勧めします。
8.睡眠には暗闇が一番なので、寝るときに夜間照明をつけないことが望ましいです。 ただし、高齢者の場合は、夜間照明をつけておくと、夜間トイレに起きたときに安全です。
また、夜に食べ過ぎない、水分を控えめにする、カフェインやアルコールをとらない、タバコを吸わない、就寝1時間前には携帯電話を使わないなど、質の良い睡眠がとれるような工夫をすることが望まれます。
(翻訳・里見雨禾)
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