エミリーは、集中しようにも、目の前で教科書の文字が泳ぎ回り、記憶に定着しません。彼女は、42歳になってようやく大学に戻り、高度な心理学を学ぼうとしたのですが、うまくいきませんでした。何時間も必死に勉強しても頭から抜け落ちてしまうのです。
部屋に入ってもなぜか忘れてしまい、丹念に整理したメモを置き忘れたり、試験中に頭が真っ白になることもありました。 以前は日常茶飯事だった単純な作業も、今では強い集中力を必要とします。 エミリーは、自分が年を取り過ぎているように感じました。
しかし、実は年齢とはまったく関係なく、彼女の食事と関係していました。
エミリーは、毎日たくさんのタンパク質と野菜を摂取するなど、かなり健康的な食事をしているつもりでした。 あるとき、友人との何気ない食事に関する会話から、彼女の「健康的な」食事、つまり、多忙な学生ママの生活を支える便利な冷凍食品や既製品のソース、プロテインバー、時々のテイクアウトには、彼女の学習能力や脳機能を徐々に損なっている隠れた成分が含まれていることが判明しました。
脳に影響を与える隠れた成分
脳が正常に機能するためには、2つの主要な化学物質のバランスが重要となります。グルタミン酸は神経細胞を刺激し、電気信号を発する可能性を高める興奮性神経伝達物質です。ガンマ-アミノ酪酸(GABA)は神経活動を鎮静化または抑制する働きを持つ抑制性神経伝達物質です。
グルタミン酸はアミノ酸(タンパク質の構成要素)であり、脳内では最も豊富な神経伝達物質です。健康維持に重要な役割を果たしており、神経系の活性化と気分調整の約40パーセントを担っています。しかし、食品から摂取するグルタミン酸が多すぎると過剰刺激を引き起こし、脳の炎症やさまざまな症状につながる可能性があります。
ワシントンにあるアメリカン大学の栄養神経科学者、キャスリーン・ホルトン(Kathleen Holton)氏は、食事から摂取する興奮性毒素(脳のニューロンを「興奮」させる化学物質)の影響に焦点を当てて研究しています。ホルトン氏は本紙の取材に対し、グルタミン酸などの特定のアミノ酸は、天然および人工の現代食品に含まれ、脳の受容体に直接作用すると述べました。
ホルトン氏によると、人工的に作られたグルタミン酸の過剰摂取は、一部の人々に過敏症を引き起こす可能性があります。摂取量が個人の耐性を超えると、反応が起こります。
海馬は、記憶形成を中心とする脳の部位ですが、加工食品に含まれる人工グルタミン酸の影響を特に受けやすいのです。研究結果によると、慢性的なストレスは海馬におけるグルタミン酸の放出をさらに増加させ、学習と記憶の欠損を悪化させます。
研究で観察された症状には、頭痛や集中力と注意力の問題が含まれます。ホルトン氏は、こうした認知の問題は、考えがまとまらないときに苛立ちや気分の落ち込みにつながる可能性があると述べています。
炎症との関連
個人の炎症負荷(体内の慢性炎症の全体的なレベル)は、グルタミン酸に対する感受性に著しく影響する可能性があります。炎症は、体内でグルタミン酸の産生量を増加させることがあります。これが、心理的外傷、脳卒中、脳の物理的損傷などの生活上のストレス要因を経験した後、それまでグルタミン酸に影響を受けなかった人がグルタミン酸に敏感になる理由です。
グルタミン酸を豊富に含む食品は中毒性があるため、舌の受容体を刺激して過剰摂取を促す可能性があるため、人々はこれらの成分と健康問題をすぐに結びつけることはないかもしれません。多くの人々は、舌や脳のニューロンを「刺激」するこれらの食品を愛し、渇しかし、グルタミン酸は味覚受容体を活性化しますが、舌に対する神経興奮作用は脳に対するものと同じではありません。脳では、慢性的な炎症により血液脳関門が弱まり、過剰なグルタミン酸が蓄積し、神経細胞が過剰に刺激され、損傷する可能性があります。舌では、グルタミン酸受容体は害を与えることなく、単純に風味の知覚を高めるだけです。
天然グルタミン酸と合成グルタミン酸
1908年、著名な日本人化学者である池田菊苗氏は、昆布だしを研究している際にグルタミン酸を発見し、私たちが現在「うま味」と呼ぶ風味を特定しました。
昨今では、食品会社で酵素で細胞を分解したり、発酵させることで、酸を使ってグルタミン酸を作り出すことができます。
現在では、グルタミン酸は、発酵プロセスで生産されるうま味調味料であるグルタミン酸ナトリウムと関連付けられることがほとんどです。しかし、ホルトン氏は、西洋の食生活に接するほとんどの人は、うま味調味料や甘味料の食品添加物にも含まれる、製造されたグルタミン酸(MfG)に接していると述べています。
天然のグルタミン酸と製造されたグルタミン酸が体に与える影響には、明確な違いがあります。
天然グルタミン酸(L-グルタミン酸)は、私たちが日常的に口にする多くの食品、例えばトマト、マッシュルーム、熟成チーズなどに含まれています。これらの食品では、グルタミン酸は他のタンパク質と結合しているため、私たちの体はそれを徐々に分解し代謝します。グルタミン酸を食品から摂取する場合、私たちの体はそれを効果的に処理することができ、自然なうま味を最大限に楽しむことができます。
一方、加工グルタミン酸は、D-グルタミン酸と呼ばれる異なる形態で存在し、一般的に加工食品に含まれています。天然のグルタミン酸とは異なり、この形態は「結合していない」または「遊離」の状態にあります。つまり、体内にグルタミン酸が一度に高濃度で取り込まれることになり、脳が急速に過剰刺激される可能性があるのです。
グルタミン酸の隠された名称
タンパク質の化学処理により製造されたグルタミン酸ナトリウム成分を含む多くの製品は、米国ではその旨を明確に表示する法的義務がないため、そうした表示がされていません。生化学者で著書『Fat, Stressed, and Sick』の著者であるキャサリン・リード(Katherine Reid)は、MfGを含む加工食品および高度加工食品に使用される40種類以上の食品成分を同書で挙げています。
タンパク質を物理的または化学的に分解した成分(加水分解や自己分解による修飾など)である酵母エキスも、人工グルタミン酸の豊富な供給源です。 その他の名称には、加水分解タンパク質、マルトデキストリン、分離大豆タンパク質などがあります。 特に高濃度で含まれているのは、調味料や香辛料です。
食品業界ではグルタミン酸は適量であれば安全であると主張していますが、加工度の高い食品に含まれるこのような添加物への慢性的な暴露が認知機能の低下やその他の脳に関連する健康問題に寄与する可能性があるという懸念が高まっています。
グルタミン酸の摂取量を減らす最も簡単な方法は、グルタミン酸を含む食品を避けることです。
おばあちゃんが普段家庭料理で使わないような、複雑な名称の材料が含まれていない、シンプルな原材料リストを探しましょう。「加水分解タンパク」、「自己分解」、タンパク質の「単離」、マルトデキストリンなど、いくつか例を挙げましたが、これらはすべてグルタミン酸が含まれています。
認知機能の低下を回復させる
多くの人は、認知力の低下は加齢によるものだと当初は考えますが、加工食品の成分を食事から取り除いてから1~4週間以内に、記憶力、気分、心的外傷後ストレス障害の症状に著しい改善しました。
その他、脳に良い食事として、サーモンなどのオメガ3脂肪酸を豊富に含む食事を毎日とることをお勧めします。また、葉野菜やブルーベリーなどの青い果物をたくさん加えることで、脳の燃料となる抗酸化物質をたくさん摂取できます。
エミリーの回復への道
改善のために何でもしようというエミリーは、4週間食事を変えてみて体調の変化を確かめることに同意しました。
グルタミン酸は製品ラベルにその名称で記載する必要がないため、何を食べないべきかを判断するのは困難でしたが、彼女は疑わしい成分を除去するために「食品探偵」となり、やり遂げました。
エミリーは加工度の低いグルタミン酸ナトリウムの食事を厳格に守り、その結果、劇的な変化を経験しました。集中力と記憶力が向上し、気分も大幅に改善したといいます。
勉強にも再び熱心に取り組み、家族との時間も楽しむようになりました。以前と同じ食事に戻ることは二度とありませんでした。やめるのが惜しいほど、体調が良くなったのです。
なお、記載されている情報には個人差がある可能性がございます。体調や健康状態に不安がある場合は、医療機関等へのご相談をおすすめいたします。
(翻訳 呉安誠)
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