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子供の腎臓結石が増加中、その原因とは?

キエラ・パーカーさんが激しい腹痛を感じ始めたのは、14歳のときでした。最初は生理痛だと思われましたが、痛みはどんどんひどくなり、尿に血が混じるようになりました。さらに、何度も尿路感染症を繰り返すようになったため、救急外来を受診。その結果、大きな腎臓結石が見つかり、すぐに手術が必要だと診断されました。

「痛みは耐えがたいものでした」とパーカーさんはエポックタイムズの取材に語っています。「眠ることも、食べることも、両親と話すことすらできませんでした」。

2019年1月に最初に発作を起こして以来、健康で運動能力の高いパーカーさんは、すでに3回も腎臓結石の手術を受けています。そのたびに、尿の流れを確保するためのステントを入れる処置も行われました。パーカーさんはこれを「結石そのものよりも痛い」と表現しています。過去には、医師から「尿を腎臓から膀胱へ運ぶ管(尿管)が破裂する恐れがある」と警告されたこともありました。

「今までに50回ほど超音波検査を受けました」とパーカーさんは話します。「でも、一度も正常なスキャン結果をもらったことがありません。何をしても、結石はなくならないんです」。

彼女の症例は、ある深刻な傾向を浮き彫りにしています。それは、これまで若い患者には珍しかった腎臓結石の発症率が、子供たちの間で増えているという現実です。

 

手術件数の急増

「さまざまな研究で、子供や若者の間で腎臓結石が驚くほど増えていることが報告されています」と、小児腎臓専門医であり、『asSALTed』の著者でもあるグイド・フィラー医師はエポックタイムズの取材に語りました。「特に、これまで少なかった女性の患者が増えており、発症年齢も低くなっています」。

2023年に医学誌Frontiers in Medicineで発表された研究によると、カナダのオンタリオ州では2002~16年の間に腎臓結石の手術件数が46%も増加しました。さらに、小児の女性患者の割合は2018年までに44~63%近くにまで上昇していました。アメリカでも同じ傾向が見られ、特に10~17歳の女子での増加が顕著だと報告されています。

こうした腎臓結石の増加を受け、ミシガン大学やフィラデルフィア小児病院、ボストン小児病院などの主要な医療機関が、子供向けの「小児結石専門クリニック」を設立しました。これらの施設では、増加する若年患者に対して、より専門的で適切な治療を提供することを目的としています。

この流れは、経済的な負担も大きくしています。医学誌The Journal of Urologyに2014年に発表された研究によると、子供の腎臓結石による入院費用は、一回あたりの中央値で約1万4千ドル(約200万円)にも及びます。さらに、アメリカ全体での年間医療費は数億ドル規模に達すると推定されています。

加えて、学校を休まざるを得なかったり、親が仕事を休んだりすることで生じる間接的な損失もあり、今後さらに負担が増えることが懸念されています。

 

原因はカルシウム

腎臓結石は、腎臓の中にできる硬い塊で、尿の通り道(尿路)を移動するときに激しい痛みを引き起こします。これは、尿の中に含まれるカルシウムやシュウ酸などの成分が濃くなりすぎて結晶化し、石のように固まることで発生します。特に、子供の腎臓結石の多くはカルシウムが関係しています。

治療法は、結石の大きさや症状の程度によって異なります。小さな結石であれば、水分を多く摂ることで自然に排出されることが多く、痛み止めや尿の通りをよくする薬が使われることもあります。

一方、大きな結石の場合は、内視鏡を使って直接取り除く「尿管鏡手術」や、衝撃波を当てて砕く「体外衝撃波破砕術」といった治療が必要になることがあります。また、結石によって尿の流れがせき止められたり、感染症が起こったりした場合は、抗生物質の投与や緊急処置が必要になることもあります。

 

腎臓結石を引き起こす「危険な条件」

先進国では小児の腎臓結石の症例が増加しており、専門家の間ではこれを「生活習慣病」と呼んでいます。これは、食生活や環境、運動不足が影響していると考えられています。

「小児や青少年の腎臓結石の発症率が上昇しているのは、複数の関連要因が組み合わさって引き起こされているためです」と、フィラー医師は述べました。

特に、子供がよく食べる加工食品は、腎臓結石の原因のひとつとされています。フィラー医師によると、加工食品に多く含まれるナトリウムが尿中のカルシウム濃度を上昇させる一方で、野菜の摂取量が少ないと、結石の予防に役立つクエン酸(レモンやブロッコリーに含まれる成分)が不足しやすくなるといいます。この「塩分の多い食事と野菜不足」の組み合わせが、腎臓結石のリスクを大きく高める要因となるのです。

さらに、統合小児科医のジョエル・ウォーシュ博士は、脱水症状が腎臓結石の大きな要因であると指摘しています。

「多くの子供が十分な水を飲まず、代わりに甘い飲み物(ジュースや炭酸飲料)に頼っているため、腎臓結石のリスクを高める可能性があります」とエポックタイムズの取材に語りました。

また、アメリカ公衆衛生ジャーナルの研究によると、米国では6~19歳の子供の54.5%が慢性的な水分不足の状態にあることが明らかになっています。

運動不足もまた、腎臓結石のリスクを高める要因の一つです。国際外科学会誌(International Journal of Surgery)に掲載された研究では、運動量の少ない子供ほど腎臓結石になりやすいことが示されました。長時間座りっぱなしでいると、体内の代謝バランスが崩れ、結石ができやすくなると考えられています。

さらに、地球温暖化も影響を及ぼしています。気温が上がると汗をかきやすくなり、脱水状態になりやすくなることで、尿の濃度が高まり、腎臓結石のリスクが高くなるのです。十分な水分を摂らなければ、こうした影響はさらに深刻になります。

最近では、環境要因として「マイクロプラスチック」も懸念されています。これはプラスチック製品が細かく分解された微粒子で、食品や飲料のパッケージから溶け出し、体内に取り込まれる可能性があります。特に「フタル酸エステル」と呼ばれる化学物質は、プラスチックを柔らかくするために使われていますが、食品や水に浸出し、尿とともに排出された際に、腎臓結石形成の起点となる可能性があると考えられています。

研究者たちは、特に女児がこうした影響を受けやすいのではないかと疑っていますが、どの程度の影響があるのかを確認するには、さらなる研究が必要です。

なお、大人の腎臓結石は肥満と関連することが多いのに対し、子供の場合は代謝やホルモンの変化、遺伝的な要因がより大きな影響を与えているとフィラー医師は指摘しています。

こうした背景を受け、アメリカ国立衛生研究所(NIH)が支援する「尿路結石研究センター(USDHub)」が、腎臓結石のリスク要因や予防策を解明するための研究を進めています。このプロジェクトには5年間で737万ドル(約11億円)の予算が投じられ、全米9つの医療機関から23万人以上の患者データを分析する予定です。

「この研究は、腎臓結石の研究基盤と専門家ネットワークを強化することを目的としています」と、ライアン・シー医師は声明で述べました。

USDHubでは、AIと臨床データを活用し、CTスキャンの画像分析や結石の成分調査、代謝プロファイルの解析を行う計画です。

しかし、腎臓結石の発症メカニズムにはまだ多くの謎が残されており、こうした複雑な要因を完全に解明するには、さらなる時間と研究が必要とされています。

 

本当に塩が原因なのか?

ナトリウムを多く含む食事は腎臓結石との関連が指摘されることが多いですが、すべての専門家が塩分を主な原因と考えているわけではありません。心血管の研究者であり、『The Salt Fix』の著者でもあるジェームズ・ディニコラントニオ医師は、「塩分よりも、依然として脱水が最大のリスク要因である」と指摘しています。

「腎臓結石の最大のリスク要因は脱水です。塩分摂取が不足すると、水分摂取不足を引き起こす要因の一つになります」と、ディニコラントニオ医師はエポックタイムズの取材で語りました。

また、塩分を摂取すると喉の渇きを感じやすくなり、水分補給が促進されます。その結果、尿が薄まり、結石形成物質の濃度が低下すると考えられています。

「臨床研究では、塩分を多めに摂取し、その分しっかり水分を補給することで、腎臓結石の発生率を実際に減らせることがわかっています」と述べました。

『The Journal of Urology』に掲載された小規模な研究では、再発性のシュウ酸カルシウム結石を持つ8人の患者に塩分を追加した食事をとらせたところ、1日あたりの尿量が約1リットル増加し、尿中のカルシウム濃度は上昇しなかったと報告されています。

ディニコラントニオ医師は、塩分を悪者扱いするのではなく、「砂糖のほうがより大きな脅威だ」と指摘しています。砂糖の摂取量が多いと、尿中の酸やカルシウムの排泄量が増え、これが腎臓結石の形成につながるといいます。

特に炭酸飲料などの甘い飲み物は、体内の水分を奪い、尿を濃くするため、腎臓結石のリスクを高める要因として問題視されています。

実際、研究では、砂糖入り飲料が腎臓結石のリスクを大きく高めることが示されています。コーラを最も多く飲む人は、腎臓結石のリスクが23%高く、コーラ以外の甘い飲み物を頻繁に摂取する人ではリスクが33%も高くなるという結果が出ています。

これは深刻な問題です。なぜなら、砂糖入り飲料は子供や若者にとって「最大の添加糖の摂取源」であり、1日の総カロリーの10〜15%を占めているからです。アメリカの10代の約4分の1は、1日750ミリリットル以上(350キロカロリー以上)の砂糖入り飲料を摂取しているとされています。

一方で、フィラー医師をはじめとする専門家は、フィンランドや南アフリカ、アルゼンチンなどでの減塩政策が腎臓結石の発生率を低下させたことを指摘しています。このことから、砂糖と塩の両方が腎臓結石の形成に影響を与える可能性があり、その影響は状況によって異なると考えられています。

 

困難な治療と管理

子供の腎臓結石を診断することは、大人とは違った難しさがあります。大人の場合は、背中の痛みや血尿といった典型的な症状が現れることが多いですが、子供は「お腹がなんとなく痛い」「気分が悪い」といった曖昧な症状しか出ないことがよくあります。そのため、診断が遅れやすくなり、結果として腎臓へのダメージが長引くリスクが高まります。

「合併症を防ぐためには、早期発見と代謝の詳しい検査が重要です」とフィラー医師は述べています。

実際、子供の腎臓結石は、一度できると2~3年以内に約半数が再発するとされており、慢性腎臓病などの深刻な合併症を防ぐためにも、早い段階で適切な治療を行うことが欠かせません。

しかし、キエラ・パーカーさんのような若い患者の多くは、病気の原因も効果的な治療法もわからず、苛立ちを感じています。

「医者はいつも『脱水症状のせいだ』と言いますが、私はちゃんと水を飲んでいます」とキエラ・パーカーさんは言います。「子供の腎臓結石について、本当に理解し、適切に対応できる人が誰もいないように感じます」。

腎臓結石は、身体的な痛みだけでなく、子供たちの生活にも深刻な影響や混乱をもたらすことがあります。パーカーさんの場合、大好きだったサッカーを辞めざるを得なくなり、孤立感や、周囲に理解されないもどかしさを感じるようになりました。

「自分に自信が持てなくなりました」と彼女は言います。「結石をなくす方法が見つからない気がして、何もできずにただベッドにいたくなることがあります」。

また、子供は大人と比べて解剖学的に体が小さく、生理機能も異なるため、治療の過程で特有の困難を抱えることがあります。例えば、パーカーさんは手術後のステント除去に伴う激しい痛みを振り返ります。

「医師には『体が小さすぎて、摘出が困難だった』と言われました。あれは今まで経験した中で最も激しい痛みでした」と彼女は語り、小児医療ではこうした重要な違いが見落とされることがあると指摘しました。

症状がわかりにくいこと、専門的な治療を受けられる施設が限られていること、不十分な治療計画――こうした課題が重なり、小児の腎臓結石に対するより正確な診断技術の開発と、包括的な治療体制の確立が、早急に求められています。

 

子供の腎臓結石を防ぐには

子供の腎臓結石を防ぐには、主に生活習慣の改善が重要です。塩分の影響については専門家の間で意見が分かれていますが、基本的な予防策については一致しています。それは、水分をしっかり取ること、砂糖入り飲料を控えること、適度に体を動かすこと、そして尿酸値のバランスを保つために新鮮な果物や野菜を積極的に食べることです。

「親は子供のうちから健康的な食習慣を身につけさせることが大切です。新鮮な果物や野菜を増やし、加工食品を減らし、十分な水分を取ることが、腎臓結石の予防には欠かせません」と、ウォーシュ医師は述べています。

フィラー医師は、1日の塩分摂取量を1500ミリグラム以下に抑え、1.5~2リットルの水を飲むことを推奨しています。尿の色が濃くなるのは脱水症状が原因である可能性が高いため、常に透明か薄い黄色を保つことが理想的です。また、レモンやブロッコリーなどクエン酸を多く含む食品を取り入れ、加工食品や清涼飲料水を控えることも効果的だとしています。

一方、ディニコラントニオ医師は、適度な塩分摂取と十分な水分補給を推奨しており、それにより喉の渇きが解消され、尿量が増えて結石の予防につながると指摘しています。

これらの小さいながらも一貫した変化を積み重ねることで、腎臓結石の再発リスクを大幅に減らせる可能性があります。

また、適度な運動も重要です。研究によると、長時間座り続けると腎臓結石のリスクが高まる一方で、運動をすることでそのリスクが低下することがわかっています。休憩中に立ち上がって体を動かすなど、小さな変化でも効果があります。専門家は、座りっぱなしの生活の有害な影響に対抗するために、日常の習慣に定期的な運動を取り入れることを強く推奨しています。

家族の協力も欠かせません。フィラー医師によると、子供に水分補給や塩分管理、バランスの取れた食事を習慣づけさせることで、腎臓結石の再発率を最大70%も減らせる可能性があるといいます。

しかし、この問題は家庭だけで解決できるものではありません。フィラー医師は、「親や学校、地域全体で、水分補給や食生活の大切さを伝える啓発活動を進めることが重要です」と述べています。こうした取り組みやUSDHub(尿路結石研究センター)のような研究が進めば、特に子供の腎臓結石の予防や治療が大きく改善される可能性があります。

パーカーさんのような家庭にとって、腎臓結石の予防は日々の課題です。彼女自身も水分補給や食事の見直しなど、あらゆる方法を試していますが、結石は依然としてなくなっていません。それでも、彼女は諦めていません。

「まだ腎臓結石を治せる方法や、助けてくれる人には出会えていません。でも、絶対に諦めません!」と彼女は語ります。

パーカーさんは、他の腎臓結石の患者たちに向けて、「自分の体の状態を伝え続けることが大切」だとアドバイスしています。そして、病気の原因や適切な治療を求め続けることが何より重要だと強調しました。

彼女の諦めない姿勢は、腎臓結石と向き合う子供たちに希望を与えるとともに、積極的な治療の必要性と継続的な研究の重要性を示しています。
 

 (翻訳編集 華山律)

10年にわたる執筆キャリアを持つベテラン看護師。ミドルべリー大学とジョンズ・ホプキンス大学を卒業。専門知識を取り入れたインパクトのある記事を執筆している。バーモント州在住。3人の子を持つ親でもある。