写真は、ノイシュヴァンシュタイン城です。(Tonic / PIXTA)
写真は、ノイシュヴァンシュタイン城です。(Tonic / PIXTA)

ドリームワールドのノイシュヴァンシュタイン城(上)

「童話の中のお城」と称される「ノイシュヴァンシュタイン城」はドイツのバイエルン州に位置しています。100年余りの間ずっと、この白い城壁と青い屋根を持ったおとぎ話に出てきそうな、夢に満ち溢れたお城は、世界各地からの観光客の心を引き付けています。

白鳥の騎士『ローエングリン』

19世紀、ドイツの作曲家のリヒャルト・ワーグナーのオペラ『ローエングリン』のあらすじを簡単に説明すると、ブラバント公国の世継ぎであるゴットフリートが行方不明になり、大臣のフリードリヒはゴットフリートの姉エルザに弟殺しの疑いをかけました。

濡れ衣を着せられたエルザを助けるため、白鳥が曳く小舟に乗って騎士がやってきてフリードリヒを倒し、エルザの潔白を証明しました。そして、婚姻を結ぶとき、自分の素性を聞かないことをエルザに約束させました。しかし、エルザは、フリードリヒの妻オルトルートに惑わされて、結局、騎士に質問しました。

悲しみにより、騎士は、自分は聖杯を守護する王パルツィヴァルの息子ローエングリンであり、同じく、聖杯の騎士であることを皆に告げました。その後、ローエングリンの祈りにより、白鳥が人間に姿を変え、なんと、それは、オルトルートの魔法によって行方不明にされていたゴットフリートだったのです。そして、ローエングリンは悲しみながら去っていきました。

バイエルン王ルートヴィヒ2世は子供の頃、父マクシミリアン2世のホーエンシュヴァンガウ城で過ごし、城内の至る所に中世騎士伝説を描いた壁画があり、幼き王子はここで、様々な騎士の壁画を見て成長しました。

15歳の時、初めて『ローエングリン』を鑑賞した若い王子は物語の中の白鳥の騎士に強く引かれ、自分をその騎士に例えて想像を膨らませました。ルートヴィヒ2世がワーグナーの歌劇を愛する原因もここに由来しています。

言い伝えによると、ルートヴィヒ2世の婚約者であったゾフィー・シャルロッテもワーグナーの崇拝者で、2人はよくワーグナーの歌劇について話し合い、時には『ローエングリン』の衣装を着て、演じていたこともあったそうです。

1864年、18歳の王子が即位して、ルートヴィヒ2世となり、直ちにワーグナーを城に呼びました。それ以来、ルートヴィヒ2世はこの世を去るまで、ワーグナーを支援したのです。

ノイシュヴァンシュタイン城の設計

1868年、ルートヴィヒ2世は、ワーグナー宛に書いた手紙の中で、中世期のドイツの騎士城を建てたいことを記し、同年、標高1千メートル以上もある山頂でノイシュヴァンシュタイン城の建設が開始されました。

ノイシュヴァンシュタイン城の設計はルートヴィヒ2世が主導し、クリスチャン・ヤンクをメインデザイナーにし、ロマネスク様式や後期ゴシック様式などの歴史主義、折衷主義に基づいて設計しました。

例えば、ノイシュヴァンシュタイン城の屋根は細く尖っており、まさにゴシック様式の神秘的で、退廃的な感じを醸し出しています。また、アーチ形の扉や窓、回廊はバロック様式が採用されており、王座の広間などはビザンツ様式となっています。このほかにも、スペインのムーア人の影響を受けて、ノイシュヴァンシュタイン城には、イスラーム建築様式の要素も含まれています。

歌人の間と騎士の館はワルトブルク城の設計を採用しており、ワルトブルク城の歌合戦の間と祝宴の間の特徴を合わせ、より大きな規模で、豪華に設計されています。

ノイシュヴァンシュタイン城の王の寝室にあるほとんどの布地は青系で、金色の刺繍が施されています。青はバイエルン王国の代表色であり、ルートヴィヒ2世が好きな色でもありました。寝具にはゴシック様式の彫刻が施されており、14人の彫刻家が共同作業で、4年間費やしました。

ノイシュヴァンシュタイン城は『ローエングリン』に基づいて建設されているため、城の至る所に生き生きとした白鳥の装飾や彫刻が見られます。壁画や日常用品、家具、壁や柱などはもちろん、城内のすべての洗面室の蛇口まで白鳥の形が採用されており、城全体が、多くの工匠が時間をかけて完成させた傑作なのです。

(つづく)

(作者・文宇/翻訳編集・天野秀)

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