ジャヴェールの予感は当たっていました。ジャン・ヴァルジャンは確かに昔勤めていた刑務所から脱走した犯罪者でした。しかし、再び逃げられたことで、ジャヴェールは何としてもヴァルジャンを逮捕することを心に誓ったのです。
一方、ヴァルジャンは自分の過去を秘めながら、コゼットとともにパリへと逃亡し、ある修道院で暮らし始めました。こうして、8、9年が経過し、幼いコゼットも美しいレディへと成長していきました。
この頃のフランス社会は大きく変動し、1832年、パリ市民による王政打倒の暴動がエスカレートしていきました。ある日、秘密結社「ABC(ア・ベ・セー)の友」のメンバーであるマリユスは、ヴァルジャンと散歩中だったコゼットを見かけて一目惚れしました。彼は知人の助けを借りてコゼットと知り合い、2人は恋に落ちました。
ずっと1人身で、家族を持たず、友もいないヴァルジャンにとってコゼットは何よりも大事な存在です。そんなコゼットがマリユスと恋に落ちたので、ヴァルジャンはマリユスを守るため、秘密結社に入りました。
この時、ジャヴェールも学生運動を調査するため、スパイとしてデモ隊に紛れ込んでいました。しかし彼は正体がばれてしまい、囚われの身となりました。しかしそんなジャヴェールをヴァルジャンは救いました。
ヴァルジャンの寛大で慈悲深い心にジャヴェールは驚き、そして、昔、ヴァルジャンが市長だった時の出来事を思い出しました。本来ならヴァルジャンは自分の正体を否定しても良かったはずでしたが、しかし、彼は無罪の男を助けるため、穏やかな生活や名誉、財産などすべてを捨てました。
ヴァルジャンは一体どのような男なのか、これまで追いかけていた男なのか、このまま彼を追い続けるべきなのか、しかし、追わなければ自分はまだ警察と呼べるのか、警察官としての責任は何なのかと、ジャヴェールは矛盾する気持ちを抱きながら、次から次へと沸き上がる疑問に苦しみました。
その後、ジャン・ヴァルジャンは負傷したマリユスを助けて下水道を通って脱出しましたが、その先で再びジャヴェールに捕まえられてしまいました。しかし、ヴァルジャンは怖がることなく、まずはマリユスを安全なところへ届けたいと交渉しました。
(つづく)
(翻訳編集・天野秀)
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