航行権の維持および安全で開かれた世界のシーレーンの確保に取り組むインド太平洋の同盟・提携諸国
米国とその同盟・提携諸国は、公海および世界の主要なシーレーン(SLOC)の保護を目的として、継続的に海上保安活動に従事している。
例を挙げると、保安活動の一環としてタイと米国が2023年5月に実施した「第29回協力海上即応訓練(CARAT)/二国間海上演習(MAREX)タイ」には、対潜戦(ASW)、海上船舶臨検(VBSS)、海洋領域認識(MDA)に焦点を当てた5日間演習が含まれていた。
軽巡洋艦「モービル(USS Mobile)」の艦長としてタイ王国海軍のフリゲート「ナレースワン(HTMS Naresuan)」、「バンパコン(HTMS Bangpakong)」、「クラブリ(HTMS Kraburi)」と共にタイランド湾での海上演習に参加したリチャード・スキネル(Richard Skinnell)米国海軍中佐は、「両国は海洋国家として、海洋と主権を保護するという役割の重要性を十分に認識している。今回の演習で学んだ教訓により、国際的な安定性の確立と世界の繁栄の推進に取り組む両軍隊の能力が強化された」と述べている。
CARAT/MAREXの一連の演習により、海事に関する理解、提携関係、相互運用性、安全性が強化される。
オーストラリア、日本、韓国、英国といった他の同盟・提携諸国も制海の重要性を認識している。
シーレーンを保護することで、すべての国が重要な水路を利用できる状態を維持し、敵対行為や非中立的な国や組織による商業活動を阻止することができる。 効果的な制海を確保することは、航行権の保護や、不法な干渉の防止だけでなく、敵対国が海洋と主要航路をつなぐ狭い水域や海峡を貿易や他の目的で使用できないようにすることを可能とする。
同盟・提携諸国の軍隊は一丸となって、海洋統治の侵害、物流拠点の利用の妨害、航行の自由の阻害などの行為に対抗することに取り組んでいる。 各国の排他的経済水域(EEZ)の権利に対する不法干渉、過度の海洋主権の主張、公海や公海上空で合法的に運航する船舶や航空機に対する危険な行為・関与はすべて国際法違反に当たる。
中国共産党は現在も引き続き、南シナ海(フィリピンにおける表記は西フィリピン海)、台湾海峡、日本領海付近などにおいて、近隣諸国の商船の航行や他の海洋活動を脅かす挑発的な軍事活動を繰り返している。
中華人民共和国はまた、紛争海域となっている南シナ海の海洋権益を過度に主張し、人工島や軍事前哨基地を建設するなどして、他国に圧力をかける脅迫行為を続けている。 例えば、中国政府はフィリピンの排他的経済水域内に位置するスカボロー礁において、フィリピンの漁業活動や補給作業を繰り返し妨害してきた。 2023年2月には、スカボロー礁付近を航行していたフィリピン沿岸警備隊の船舶に対して中国海警局の哨戒艦が軍事用レーザーを照射したことで、フィリピン側の乗組員が一過性の視力障害を患った。
南シナ海においてフィリピン軍およびフィリピンの公船や航空機に対する武力攻撃が発生した場合は、米比相互防衛条約に基づき米国がその防衛義務を果たすと米国は明言している。
より強力な防衛協定を履行することに加え、志を同じくする両国は協力を図りながら重要なシーレーンで「航行の自由作戦」を定期的に展開し、バリカタン(Balikatan)、アイアン・フィスト(Iron Fist)、ガルーダ・シールド(Garuda Shield)、環太平洋合同演習(RIMPAC)、年次東南アジア協力訓練などの多国間海軍演習を実施している。
米国とその同盟・提携諸国は、世界経済において極めて高いチョークポイントやシーレーンの重要性を念頭に置き、2023年CARAT/MAREXタイなどの演習を実施することで、すべての国が重要な水路を利用できる状態と航行の自由を維持し、敵対行為や敵対国による戦争軍需品の輸送を阻止することに取り組んでいる。
タスクフォース「76/3」とタスクグループCARATを率いるデレク・トリンク(Derek Trinque)米国海軍少将は演習開会式で、 「複雑性を増す米国とタイの協力体制により、両国海軍は新たな課題に対応できる一段と精巧な作戦や戦術を実現できるようになった。今回の演習はこの協力体制を引き続き象徴するものである」と述べた。 そして「タイは東南アジアにおける米国最古の条約同盟国である。そしてCARATは、地域の平和、繁栄、安定性が維持された『自由で開かれたインド太平洋』の推進を目的として、タイおよび志を同じくする同盟・提携諸国を断固として支持・支援する米国の取り組みを実証するものである」と語っている。