東洋経済「CSR企業ランキング 2024年版(第18回)」の結果
株式会社東洋経済新報社は、CSR(企業の社会的責任)と財務の両データから「信頼される会社」を見つける「CSR企業ランキング」を毎年作成しております。このたび、第18回のランキング結果がまとまりましたので、発表いたします。
「CSR企業ランキング 2024年版(第18回)」の総合ランキングは、三井物産が商社として初の1位となりました。部門別では人材活用18位、環境6位、企業統治+社会性22位、財務47位とバランスよく得点しました。
同社は2021年に「サステナビリティ基本方針」を策定し、5つのマテリアリティを軸に取り組みを進めています。具体的な方針や目標などを「マテリアリティアクションプラン」として項目・組織別に整理し、進捗を管理するなど、その取り組みは組織的です。
環境面では、社有林「三井物産の森」などから創出した「J‐クレジット」を利用して、国内全事業所で使用電力の実質CO2フリー化を達成しました。社内カーボンプライシング制度を導入し、事業の環境影響度を分析・可視化するなど、先進的な取り組みも展開しています。
若手社員のスキルアップを目的とした「若手海外派遣制度」や、50歳以上の総合職を対象とした「リスキル費用補助制度」などを導入しており、人材育成にも積極的です。実際に、同社の従業員1人当たりの教育研修費用は年50万円、新卒3年後定着率も97.7%といずれもトップクラスです。
2位は昨年10位のJTです。部門別では人材活用50位、環境57位、企業統治+社会性8位、財務8位といずれも上位でした。同社は市民参加型清掃活動「ひろえば街が好きになる運動」や芸術・スポーツ振興など広範な社会貢献活動に取り組んでいます。海外を含むサプライチェーン全体で、葉たばこ生産者の生活向上支援や児童労働の防止・撲滅にも取り組んでいます。実際に、同社の社会貢献活動支出額は67億6300万円と国内トップクラスです。
3位は昨年2位の日本電信電話(NTT)です。部門別では人材活用26位、環境2位、企業統治+社会性1位、財務77位で、財務を除く3部門の合計得点は全体3位でした。同社では、本社受け付け業務に外出困難な障害者が遠隔操作する分身ロボットを導入しており、最新の通信制御技術を用いた多様な働き方を提供しています。また、陸上養殖を軸に食料問題の解決や環境負荷の低減を目指す合弁会社「NTTグリーン&フード」を設立するなど、事業をとおした社会課題解決に取り組んでいます。
今回の調査では、「男女間賃金格差(従業員の男女間における賃金格差の有無)」について、「あり」と回答した企業の割合が20.9%と、前回から13.1ポイント上昇しました。また、「気候変動に関するシナリオ分析」についても「行っている」と回答した企業が62.3%となり、前回から11.3ポイント上昇しました。いずれも有価証券報告書での開示が求められる項目と関連しています。とくに「男女間賃金格差」では、回答社数が増加した結果、格差が生じている状況がより明確となりました。
東洋経済「CSR企業ランキング」について
東洋経済新報社「財務・企業評価チーム」が作成。対象は『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)(ESG編)』2024年版掲載の1714社(上場1645社、未上場69社)。
調査は2023年6~10月に実施。CSR分野の「人材活用」(100点満点)、「環境」(同)、「企業統治+社会性」(「企業統治」と「社会性」の合計で100点満点)の3つ(計300点満点)に、「財務」(収益性、安全性、規模、各100点。計300点満点)を加え、総合ポイント600点満点で評価。「財務」以外の項目は基本的にアンケート内容を基に評価している。
ただし、一部アンケート未回答でも公開情報のみで評価を行っている企業もある。評価は原則として加点方式で行い、回答内容による減点はない。「人材活用」「環境」「企業統治+社会性」の得点はトップ企業を100点に調整。「財務」は多変量解析の主成分分析手法を用い、収益性、安全性、規模の3つの分野で評価している。
評価の対象は原則、2022年度までのデータによるため、直近における企業による事件・不祥事等は原則として、評価に含まない。また銀行、証券、保険、その他金融、未上場(上場企業の主要子会社、調査時点以降の上場廃止企業、財務情報開示企業は除く)などは総合ランキングの対象から除外している。「財務」以外の各データは『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)(ESG編)』2024年版に掲載。
各分野の評価項目(太字は今回、追加項目)
〔CSR評価〕
【人材活用】1. 女性従業員比率、2. 男女別賃金、3. 世代別女性従業員数、4. 離職者状況、5. 年間総労働時間の開示、6. 残業時間・残業手当、7. 残業削減の取り組み、8. 30歳平均賃金、9. 外国人管理職の有無、10. 女性管理職比率、11. 女性部長比率、12. 女性役員比率、13. ダイバーシティ推進の基本理念、14. 多様な人材登用部署、15. 多様な管理職登用(比率)の目標値、16. 障害者雇用率(実績)、17. 障害者雇用率の目標値、18. 65歳までの雇用・定年後の就業機会、19. 正社員の定年年齢、20. LGBTへの対応、21. 有給休暇取得率(最新年度)、22. 産休期間、23. 産休取得者、24. 育児休業取得者、25. 男性の育児休業取得者数・取得率、26. 配偶者の出産休暇制度、27. 介護休業取得者、28. 看護休暇・介護休暇、29. 退職した従業員の再雇用制度、30. ユニークな両立支援制度、31. 勤務形態の柔軟化に関する諸制度、32. テレワークの導入、33. 副業・兼業、34. ハラスメント防止、35. 従業員のインセンティブを高めるための諸制度、36. 労働安全衛生マネジメントシステム、37. 労働安全衛生分野の表彰歴、38. 労働災害度数率、39. メンタルヘルス休職者数、40. 人権尊重等の方針、41. 人権尊重等の取り組み、42. 中核的労働基準を尊重した経営、43. 中核的労働基準4分野の対応状況、44. 人権デューデリジェンスの取り組み、45. 能力・評価結果の本人への公開、46. 従業員の評価基準、47. 1人当たり年間教育研修費用・時間、48. 従業員の満足度調査、49. キャリア形成支援、50. 新卒入社者の3年後定着度、51. 発生した労働問題の開示
【環境】1. 環境担当部署の有無、2. 環境担当役員の有無、3. 環境担当役員の担当職域、4. 環境方針文書の有無、5. 環境会計等の有無、6. 環境会計等における費用と効果の把握状況、7. 環境会計等の主要項目開示(パフォーマンスの開示状況)、8. 環境監査の実施状況、9. ISO14001取得体制、10. ISO14001取得率(国内・海外)、11. グリーン購入体制、12. 事務用品等のグリーン購入比率、13. 原材料のグリーン調達、14. 原材料調達の取引先対応、15. 環境ラベリング、16. 土壌・地下水の汚染状況把握、17. 水問題の認識、18. 環境関連法令違反の有無、19. 環境問題を引き起こす事故・汚染の有無、20. 環境問題に関する苦情の有無、21. 環境分野・CO2排出量等削減への中期計画の有無、22. スコープ3、23. 炭素利益率(ROC)、24. 温室効果ガス(スコープ1+2)排出量削減、25. 廃棄物等総排出量削減、26. 2022年度の環境目標・実績、27. 気候変動への対応の取り組み、28. 気候変動に関するシナリオ分析、29. 再生可能エネルギーの利用、30. カーボンプライシングの認識、31. 環境関連の表彰歴、32. 環境ビジネスへの取り組み、33. プラスチック削減の取り組み、34. 事業による生物多様性への影響の把握、35. 生物多様性保全への取り組み、36. 生物多様性保全プロジェクトへの支出額
【企業統治】1. 中長期的な企業価値向上の基礎となる経営理念、2. CSR活動のマテリアリティ設定、3. ステークホルダー・エンゲージメント、4. 活動報告の第三者の関与、5. 英文での活動報告、6. CSR担当部署の有無、7. CSR担当役員の有無、8. CSR担当役員の担当職域、9. CSR方針の文書化の有無、10. IR担当部署、11. 法令順守関連部署、12. 国内外のCSR関連基準への参加等、13. 内部監査部門の有無、14. 内部通報窓口(社内・社外)設置、15. 内部通報者の権利保護に関する規定制定、16. 内部通報件数、17. 公正取引委員会からの排除措置命令等・他、18. 不祥事などによる操業・営業停止、19. コンプライアンスに関わる事件・事故での刑事告発、20. 海外での価格カルテルによる摘発、21. 海外での贈賄による摘発、22. 汚職・贈収賄防止の方針、23. 政治献金等の開示、24. 内部統制の評価、25. 相談役・顧問制度の状況についての開示、26. 社外取締役による経営者評価、27. 任意を含む指名・報酬委員会等の設置、28. ESG等関連指標の役員報酬への反映、29. 情報システムに関するセキュリティポリシーの有無、30. 情報システムのセキュリティに関する内部監査の状況、31. 情報システムのセキュリティに関する外部監査の状況、32. プライバシー・ポリシーの有無、33. リスクマネジメント・クライシスマネジメントの体制、34. リスクマネジメント・クライシスマネジメントに関する基本方針、35. リスクマネジメント・クライシスマネジメントに関する対応マニュアルの有無、36. リスクマネジメント・クライシスマネジメント体制の責任者、37. BCM構築、38. BCP策定・想定、39. リスクマネジメント・クライシスマネジメントの取り組み状況、40. 企業倫理方針の文書化・公開、41. 倫理行動規定・規範・マニュアルの有無
【社会性】 1. 消費者対応部署の有無、2. 社会貢献担当部署の有無、3. 商品・サービスの安全性・安全体制に関する部署の有無、4. 社会貢献活動支出額、5. NPO・NGO等との連携、6. ESG情報の開示、7. 投資家・ESG調査機関との対話、8. 消費者からのクレーム等への対応マニュアルの有無、9. 消費者からのクレームのデータベースの有無、10. ISO9000Sの取得状況(国内・海外)、11. ISO9000S以外(独自等)の品質管理体制、12. 地域社会参加活動実績、13. 教育・学術支援活動実績、14. 文化・芸術・スポーツ活動実績、15. 国際交流活動実績、16. サステナブル調達の実施、17. サステナブル調達の取り組み事例、18. 取引先に対する基本方針、19. 紛争鉱物の対応、20. SDGsの目標への意識、21. SDGsの目標達成基準、22. SDGs17の目標対応状況、23. 社会課題解決ビジネスの取り組み、24. 海外での社会課題解決の活動等、25. ボランティア参加・休暇、26. ボランティア休職・青年海外協力隊参加、27. マッチング・ギフト、28. ボランティア休暇等の従業員への周知、29. 従業員向けの社会課題解決への関心を高める取り組み、30. プロボノ支援、31. CSR関連の表彰歴、32. 自然災害・パンデミックへの支援
〔財務評価〕
【収益性】1. ROE(当期利益÷自己資本)、2. ROA(営業利益÷総資産)、3. 売上高営業利益率(営業利益÷売上高)、4. 売上高当期利益率(当期利益÷売上高)、5. 営業キャッシュフロー
【安全性】1. 流動比率(流動資産÷流動負債)、2. D/Eレシオ(有利子負債÷自己資本)、3. 固定比率(固定資産÷自己資本)、4. 総資産利益剰余金比率(利益剰余金÷総資産)、5. 利益剰余金
【規模】1. 売上高、2. EBITDA[税引き前利益+支払利息(キャッシュフロー計算書掲載)+減価償却費(同)]、3. 当期利益、4. 総資産、5. 有利子負債