インターネットは私たちを結びつける素晴らしいツールです。多様な繋がり、アイディア、機会を提供してくれますが、同時に私たちがはまり込んでしまい縛られてしまいます。
ソーシャルメディアへの依存、YouTubeの無限ループ、テトリス効果、手放せない携帯電話など、テクノロジーから離れるのは難しく、放置された家のクモの巣のように、じわじわと生活を支配していきます。
テクノロジーが生活の多くを占める中、私たちは何を失うのでしょうか? 単に現実の生活を生きるという経験でしょうか? スクリーンの人工性や疎外感に媒介しない、本物の、具現化された人間のコミュニティや関係の形成でしょうか? 私たちの感覚に根ざし、それを通して現実に根ざすことでしょうか?
スクリーンをじっくりと見る
これらの問いに、多くの賢人が答えを出しています。MITのシェリー・タークル教授は、テクノロジーが、社会に与える影響についての著書や記事を出しています。例えば、対面での深い会話が少なくなったことです。ジャーナリストでありテクノロジー作家のニコラス・カー氏は、インターネットが私たちの脳をどのように変え、注意力を希薄にしたかについて書いています。
歴史家のディクシー・ディロン・レーン氏は、家族との時間を大切にするために週末はデジタルデトックスをしています。そして、健康的なテクノロジー利用の枠組みを提案しています。
テクノロジーによって失われた価値を取り戻す方法を紹介するサブスタック(オンラインプラットフォーム)を運営するペコさんとルース・ガスコフスキ夫妻もいます。
こうした評論家たちは、テクノロジーとの関係を見直す必要があると主張しています。それは、真の人間的な成長を優先するために、テクノロジーの使用に明確な制限を設けることが必要だということを意味します。これが「テック・レジスタンス」です。
ガスコフスキ夫妻は、機械の過剰な支配から、私たちは人間性を取り戻すための運動を広げています。「テクノロジーの激動時代のためのアンマシーニングの3つのR、ガイドポスト」という著作で、「歴史のある時点で、私たちはテクノロジーの道を誤った。今こそ方向転換の時だ」と述べています。
テック・レジスタンスを訴える人々は、なぜテクノロジーとの関係に警鐘を鳴らすのでしょうか? 彼らは、私たちのテクノロジー依存が健康に悪影響を及ぼしていることを示すデータを引用しています。最近のTEDトークで、デジタルウェルネスのスピーカーであり、プロジェクトリブートの創始者ディノ・アンブロージ氏は衝撃的な統計を発表しました。アメリカでは、平均的な18歳が自由な時間の93%をスクリーンの前で過ごしていると言います。
「その悲しさを実感してください」とアンブロージ氏は訴えます。「90歳になって振り返った時、18歳以降にどれだけの時間をスクリーンに費やしたか、集中できなくなり、やるべきことをやり残したか想像してみて下さい。
スクリーンを見る時間が増えることは、それなりの代償を伴います。最近、孤独感が増していることが記されており、これはソーシャルメディアの利用と関連があるようです。これらのアプリが提供するつながりがあるにも関わらずです。研究では、テクノロジー利用と睡眠不足、うつ病、不安、自殺の増加との関連も指摘されています。
2017年の研究では、フロリダ州立大学の研究者たちは、多くのスクリーンタイムを使うことと、子供や10代の若者の自殺率の上昇との間に関連性を発見しました。彼らは、2010~2015年にかけて10代の女の子の自殺率が65%も急増したというCDCのデータを基にして、その後の研究で携帯電話所有と自殺率の増加との相関関係を解明しました。
「スクリーンタイムの過剰と自殺、うつ病、自殺願望、自殺未遂のリスクとの間には、懸念されるべき関係があります」と、研究の共著者トーマス・ジョイナー氏は述べています。
一方で、実際に友人と会話をしたり、スポーツをしたり、教会に行ったりする時間を多く費やす10代は、より幸せである可能性があります。全体的に、テクノロジーの使用は精神衛生上問題を起こすとみています。
テクノロジーの使用を控える
もちろん、テクノロジーへの抵抗とは、ラッダイト(ラッダイト運動に関わった人々)的な過剰反応で全てのガジェットを拒否することではありません。むしろ、負の影響を防ぐためにデバイスにルールと制限を設けることです。同時に、テクノロジーに抵抗することは、負の面を避けるだけではなく、肯定的な面を取り戻すことにもつながります。それは、注意力を取り戻し、コミュニティを再構築し、意味のある記憶や人間関係を復活させることです。
「私たちは都市に住んでおり、電力ネットワークとのつながりを避けることはできません。そのため、すべての技術的コミュニケーションを放棄しているわけではありません。
しかし、「コミュニティの絆を直接的に損なうと思われる事象に焦点を当てています」とテクノロジーに反対するジーン・シンドラー氏は言います。
「問題となっているのはスマートフォンとソーシャルメディアです。スマートフォンは持続的な注意と周囲への意識を大きく損ない、ソーシャルメディアは自然な人間関係を築く能力を減少させます」
シンドラー氏は「ポストマン誓約」の創設に貢献しました。この誓約は、ニール・ポストマンの理念に基づいており、親が自分と子供たちのテクノロジー使用を制限するという約束です。
「私たちは、子供たちがこの世界の良さ、現実の良さを認識し、それを大切にできる人間になってほしいと願っています」とシンドラー氏は言いました。
「私たちのポストマン誓約グループは、自然とのつながりを育むために、公園での家族ピクニックやフィールドデー、星空の下でのクリスマスキャロリング、暖炉の前での合唱など、直接的な活動を通じて努力しています」
多くの家族が、子供たちのためにテクノロジーに支配されない環境を作ろうとして、ポストマン誓約グループやそれに類する団体を結成しています。
最近、私は自宅や家族生活の中でテクノロジーが果たす役割について見つめ直しています。リビングなどのような特定の部屋ではデバイスの使用を禁止するというルールを試してみました。これにより、テクノロジーが私たちの生活の中心になることを防ぎたいと思っています。
1歳の娘は、私たちがスマホに見入っている姿を目にするのが、以前よりも少なくなりました。彼女はまだ幼いですが、周りの環境から強く影響を受けやすい時期で、私たちのテクノロジーの使い方を真似し始めています。すでに、本や四角い物を顔に当てて、まるで電話で話しているかのような真似をすることがあります。もし彼女が常に私たちが電子デバイスを使っているのを見て育つと、それが彼女の将来の行動傾向になる可能性があります。
テクノロジーは私たちの生活から消えることはありません。もちろん、良い目的に使うことも可能です。しかし、テクノロジーに反対する人々は、私たちに対して重要な一問を投げかけています。
私たちはテクノロジーをコントロールするのか、それともテクノロジーにコントロールされるのか?
(翻訳編集 青谷荘子)
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