アメリカは今こそ中国との臓器移植協力を断ち切る時だ
論評
アメリカの臓器移植制度において、人間の生命の尊厳を回復させるために果敢な行動を取ったロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉省長官は称賛に値する。彼の指導の下、米国保健福祉省(HHS)は、「死亡ドナー規則(dead donor rule)」に違反したアメリカ内の病院を摘発した。これらの病院では、完全に死亡していない可能性のあるドナーから臓器を摘出していたのである。
このような道徳的勇気、連邦資金を受けた臓器調達機関2か所の認証取り消しや包括的な改革の実施は、さらに深刻な現実に立ち向かうために必要とされる原則的リーダーシップの典型である。それはつまり、アメリカの機関が、中国共産党(CCP)の強制臓器摘出産業と密かに、あるいは公然と結びついているという現実だ。
中国との対比
ケネディ長官が指摘したアメリカ内の違反は、中国における臓器移植の実態と比べれば小さなものにすぎない。中国共産党の責任について疑念を持つ余地は、最近の「ホットマイク事件」で完全に消えた。習近平とプーチンが、「臓器移植を継続して行えば150年の寿命を得られる」と語っていたのが録音されていたのである。150年という寿命目標は、共産党エリートの寿命を延ばすことを目的とした「981プロジェクト」に掲げられている。
この現実を前にして、いまこそ、共産主義中国による良心の囚人の臓器摘出という組織的殺害に対処すべき時である。
アメリカの関与
アームストロング・ウィリアムズは9月、「ボルチモア・サン」紙で中国の臓器移植産業を鋭く論じた。これに対し、HHSはX(旧Twitter)で次のように反応した。
「中国では囚人からの強制臓器摘出が20年以上続いている。人間の生命の尊厳を守るために、アメリカは中国の臓器移植制度との関係を断たなければならない」
米中間の移植分野でのつながりは広範に及ぶ。中国の臓器移植外科医の数百人が、ピッツバーグ大学医療センターやマウントサイナイ医療システムなど、主要なアメリカ機関で訓練を受けてきた。これらの機関は中国の移植センターと正式な提携を結び、専門知識を共有しており、その結果、中国側に「正当性」の外観を与えてしまっている。
2025年5月、アメリカ下院の対中特別委員会はハーバード大学学長への書簡で、「ハーバードの研究者が中国の研究者と臓器移植関連の共同研究を行っていた複数の事例を確認した」と報告した。その中にはアメリカ国立衛生研究所(NIH)の資金が使われた研究も含まれていた。
また、中国の移植産業は西側の技術に大きく依存している。臓器保存液、手術器具、免疫抑制薬、移植診断技術の多くがアメリカやヨーロッパから供給されており、これは強制臓器摘出が最も盛んだった時期の中国の移植ブームを支えたと、「共産主義犯罪研究所」は指摘している。
こうしたアメリカの安易な関与が、「死亡ドナー規則」を系統的に無視する外国の移植産業を黙認し、結果として米国内の倫理基準の弱体化を招いた。最近、「ニューヨーク・タイムズ」紙に掲載された著名心臓専門医による寄稿がその一例であり、臓器供給を増やすために「死の定義を再検討すべきだ」と主張している。
ケネディ改革の国際的拡張
ケネディ長官による国内改革は、国際的行動のモデルともなる。HHSは、29%の症例に「懸念すべき特徴」が見られたアメリカの臓器調達機関に対し罰則を科した。また、患者安全担当官の配置義務化、監視体制の強化、違反に対するゼロ・トレランス(不寛容な)方針などの改革も導入した。これらは国際的提携にも拡張されるべきだ。
たとえば、アメリカは中国の大規模な人権侵害を助長することをやめるべきだ。HHSには中国に対する法的管轄権はないが、資金供与の仕組みを通じて、アメリカの機関が関与しないようにすることは可能だ。実際、トランプ政権はハーバード大学の人権・政策違反を理由に20億ドルの助成金を打ち切った前例がある。
強制臓器摘出が終わるまで、どのアメリカの機関も中国の移植プログラムと協力してはならない。中国の移植センターやその関係者が関与する研究には、NIHの助成金を出すべきではない。
法的措置も可能である。たとえば、NASAと中国の協力を制限する「ウルフ条項」に倣い、アメリカの保健機関・大学・病院・企業が、中国の移植関係機関と倫理的出所を証明できない限り協力を禁じる法律を制定できる。
道徳的明確さによる信頼回復
ケネディ長官は「すべてのアメリカ人が安心して臓器ドナーとなり、生命の贈り物を与えられるようにすべきだ」と主張している。この道徳的明確さは、アメリカの専門知識・技術・資金が囚人殺害による臓器摘出を決して助長しないことを要求している。
中国の移植制度は、強制と不透明さを基盤としており、西洋が信じる倫理、人命尊重、インフォームド・コンセント、医の誠実に真っ向から反している。
国内で臓器調達違反が報道された2025年7~8月には、国家臓器ドナーレジストリからの登録削除が700%も急増したと報告された。信頼の再構築は、道徳的にも実務的にも不可欠である。
ケネディ長官の改革は、機関の都合よりも倫理と患者の安全を優先している。アメリカが道徳的リーダーシップを発揮するには、無実の人々を殺して臓器を売るような体制との関係を断つ必要がある。関係が深く根付いているとしても、「容易な道」ではなく「正しい道」を選ぶこと、それこそが前進の道である。
ケネディ長官が述べたように、「すべてのドナー候補者の命が、それにふさわしい尊厳をもって扱われる」ことを保証できるのは、その時である。
本稿は「ボルチモア・サン」紙が最初に掲載した。本文中の見解は筆者の意見であり、「エポックタイムズ」の見解を必ずしも反映するものではない。