2025年11月13日、米国防総省傘下の国家地理空間情報局(NGA)で最高技術責任者(CTO)兼能力担当副局長を歴任したアンソニー・ヴィンチ(Anthony Vinci)博士が、ワシントンD.C.のシンクタンク「ハドソン研究所」で新著『第四次情報革命――スパイ活動の未来とアメリカを救うための戦い』(The Fourth Intelligence Revolution: The Future of Espionage and the Battle to Save America)を紹介した。(撮影:李辰/大紀元)

元米情報官指摘 中共「認知戦」で法輪功攻撃

中国共産党が米国のSNSなどを駆使し、法輪功や神韻芸術団を標的にした認知戦、世論操作を強化している。米元情報官のアンソニー・ヴィンチ博士はその実態と脅威を警鐘。今、米国社会や在米中国系市民は、どう情報操作に対応すべきかを探る。

米国防総省傘下の国家地理空間情報局(NGA)で最高技術責任者および能力担当副局長を務めた元米政府高官のヴィンチ博士は11月13日、大紀元の取材に対し、中国共産党(中共)が米国のソーシャルメディアを通じて法輪功および神韻芸術団を攻撃している行為は、米国内で展開されている「認知戦(世論・意思決定に影響を及ぼす)」の一環であると述べた。

ヴィンチ博士は、中共による「認知戦」の脅威を阻止するために、米政府が調査や訴追などの措置を講じるべきだと提言した。また、米国内の中国系市民や主流社会の一般市民に対し、虚偽情報を見抜く訓練を行い、識別力を高める必要があると指摘した。

2024年3月以降、『ニューヨーク・タイムズ』は神韻芸術団と法輪功を攻撃する記事を10本以上掲載している。そのうちの1本は中国語版の記事であり、大量に転載された。その記事は過去1年以上にわたり『ニューヨーク・タイムズ』がSNSプラットフォーム「X」で共有した記事の中で最も拡散されたものとなっている。

サイバーセキュリティ専門家のレックス・リー氏は、SNS「X」上で攻撃的かつ誤導的な記事が拡散されている状況について、「これは国家レベルで組織された自動ボット攻撃に見える」と指摘した。

これに先立ち、著名な法学者で元北京大学法学部教員の袁紅氷氏は、「習近平は法輪功に対する国際的迫害の強化を命じ、主に『世論戦』(メディア戦)と『法律戦』という形でそれを実行している」と語っていた。

ソーシャルメディア上の偽アカウント攻撃は中共の認知戦

中共が米国のソーシャルメディア上で偽アカウントを利用し、『ニューヨーク・タイムズ』の誤導的な記事を拡散しつつ法輪功や神韻芸術団を攻撃している件について、ヴィンチ博士は次のように述べた。

「具体的な事情は詳しく知らないが、話を聞く限り中共らしい行動であり、その戦略意図にも合致している。すなわち、人に関する情報収集やAIの活用を通じて『認知戦』を展開するというものだ」

博士はさらに「要するにこれは中共の『認知戦』の一部であり、人々の認識を操作し、心理的圧力によって行動を変えさせることを狙っている。不幸なことだ」と語った。

法輪大法情報センターによると、2024年6月に流出した中共公安部の会議資料では、中共の目的は「世界的に法輪功を徹底的に根絶する」ことであり、神韻芸術団を閉鎖に追い込むことも狙いに含まれていたという。

さらに、同年7月には別の流出文書によって同様の戦略が明らかになった。中共国有機関「中信改革発展研究基金会」の文書によれば、その戦略は欺瞞的な手法を用いて世界中のネットユーザーを誤導し、法輪功への認識を歪めることを目的としていた。同基金会は、外国メディアに法輪功を中傷する情報を送付し、関連検索結果を操作するよう指示していた。

認知戦への対処策

ヴィンチ博士は、中共による「認知戦」に対抗するには、米政府の制度的対応と市民の情報識別力向上という二つの側面から取り組む必要があると強調した。

米政府の調査・訴追による対応を提言

博士は、米国の法執行機関が国内の法輪功学習者および神韻芸術団メンバーを中共の攻撃から保護すべきだと述べ「法執行機関は中国系アメリカ人の権利を守り、中共の治安部門による干渉を許してはならない」と強調した。

「あなた方は中国系アメリカ人であり、ここに住むアメリカ市民である。外国政府、例えば中国共産党があなた方を嫌がらせたり、統一戦線工作部のような組織を通じて攻撃したりしてはならない。あなた方は他のすべてのアメリカ市民と同様に保護されるべきである」と博士は述べている。

中共はメディア戦や法律戦に加え、海外の法輪功学習者に対して様々な人身攻撃も行っている。法輪大法情報センターによる最新統計では、2024年3月から2025年10月16日までに、法輪功関係者やそれを装った者に対する匿名の殺害予告は193件に上り、神韻芸術団員への銃撃、爆破、放火、殺人などの脅迫も含まれていた。多くは米国内で発生している。

博士はさらに、「アメリカ政府は中共による『認知戦』などの人権侵害行為を厳格に調査し、これを阻止すべきである」と述べ、「中共組織が米国内で行う人権侵害や違法行為を捜査し、中国系アメリカ人を保護することは正しい対応であり、実行すべきである」と語った。

「法執行機関は他の米国民と同様に、この問題を真摯に扱うべきである」「アメリカは調査と訴追を通じ、こうした行為を阻止すべきだ」と博士は強調した。

米国民教育による「認知戦」対抗

ヴィンチ博士はまた、在米中国系を含む一般の米国民にも、中共の「認知戦」の脅威を見抜く訓練を施す必要があると提案した。

「市民、特に中国系アメリカ人はこうした脅威を識別する訓練を受けるべきである。これらの操作を見抜くためのツールを持ち、比較検証と判断ができる能力を養わなければならない。どのアカウントが偽情報を発信している可能性があるかも見極める力が求められる」と述べた。

さらに「記者や市民ジャーナリストも、情報操作を暴き出し、それを共有することで地域社会に何が起きているのかを伝えることができる」と付け加えた。

「これこそが私がこの本を書いた理由の一つである」とヴィンチ博士は語り、新著『The Fourth Intelligence Revolution: The Future of Espionage and the Battle to Save America(第四次情報革命――スパイ活動の未来とアメリカを救うための戦い)』の中でも、一般の米国民が情報を識別し民主制度を守る重要性を強調していると説明した。

現在、ヴィンチ博士は新アメリカ安全保障センター(CNAS)の技術・国家安全保障プログラム非常勤上級研究員を務めるほか、プライベート・エクイティ基金のマネージングディレクターも兼任している。また、複数のデジタル技術企業の創設者であり、新興技術および国家安全保障関連企業の取締役や顧問も務めている。

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