カラヴァッジョ作「ペテロの否認」(パブリックドメイン)

揺らぎと悔恨の肖像 カラヴァッジョが描いた「ペトロの否認」

カラヴァッジョの「ペトロの否認」は、物語全体を語ろうとしない。画面に描かれているのは、夜の中庭で問いかけを受け、視線を逸らし、言葉を選ぶ一人の男だけだ。奇跡も後光もなく、否認が生じるその瞬間が、強い明暗の中に切り取られている。

この主題自体は、カラヴァッジョ以前から繰り返し描かれてきた。しかし彼が描いたのは、信仰が揺らぐ一瞬の心理だった。エルサレムでの「最後の晩餐」の席で、イエスは弟子の一人ペトロに対し「鶏が鳴く前に、あなたは三度、私を知らないと言うだろう」と言ったという。

ペトロは、イエスの十二使徒の中でも指導的な立場にあった存在で、後に初代ローマ教皇となった。ペトロは、イエスのその言葉に対して「あなたと一緒なら、牢に入ることも、死ぬこともいとわない」と答え、自身がイエスを否認する可能性を否定した。

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