疲労感、物忘れ、気分のむらは加齢のせいだと片付けられがちですが、もっと深い問題のサインかもしれません。最近の研究や臨床現場の見解では、「静かな」脳の炎症が、病気が現れるずっと前から認知機能の低下を静かに進行させている可能性が指摘されています。
新唐人テレビのの番組「健康1+1」の最近の回で、内科医の鄭元裕博士は、この見過ごされがちなプロセスが脳にどのような影響を及ぼすのか、そしてシンプルな食事や生活習慣の工夫によって認知機能を守り、長く頭の冴えを保てる可能性について解説しました。
見えない脳の炎症は大きなリスク
多くの人が知っている炎症は、のどの痛みや関節の炎症のように、赤み、腫れ、熱感、痛みを伴います。しかし、鄭博士によると、脳の炎症は目立った痛みを伴わないことが多く、長期的な慢性反応によって神経細胞を徐々に損傷します。
慢性炎症は、体が代謝廃棄物や古くなった細胞、異物や毒素を除去するために必要な仕組みであり、都市のごみ処理システムのようなものだと鄭博士は説明します。しかし、負担が過大になったり免疫バランスが崩れたりすると、炎症反応が制御不能となり、変性疾患の要因の一つになる可能性があります。
初期アルツハイマー病患者を対象とした研究では、ほとんどの患者で脳内免疫細胞の活性化が確認されており、神経炎症とアルツハイマー病の密接な関係が示されています。
脳の炎症の症状には、集中力の低下、疲労感、気分のむら、イライラ、物忘れなどがあります。現在、「慢性脳炎症」を直接診断できる単一の血液検査や画像検査はないことに注意が必要です。臨床では、高感度C反応性タンパクなどの全身性炎症マーカーを間接的な参考指標として用いながら、甲状腺疾患、睡眠時無呼吸、気分障害など他の可能性の高い要因を除外して判断します。
脳を活性化する3大食品
食事は脳の炎症対策における重要な手段であり、ウコン(ターメリック)、クルミ、シナモンは脳を活性化する3大食品として高く評価されていると鄭博士は述べました。
クルクミン
研究では、長期的なクルクミン摂取が中高年の記憶力向上に役立つ可能性が示されています。鄭博士は、日常の料理にウコンを香辛料として取り入れ、砂糖や塩を減らしながら風味を高めることで、抗酸化作用を取り入れることを推奨しています。
ヨーロッパ食品安全機関(EFSA)は、成人の1日あたりのクルクミン摂取量を体重1kgあたり3mg以内に抑えることを推奨しています。ただし、鄭博士は胆石のある人は摂取量に特に注意する必要があると指摘します。クルクミンは胆嚢の収縮を促し、胆汁の排出を促進するため、胆石疝痛を引き起こしたり、胆管閉塞に関連する症状を悪化させたりする可能性があります。
クルミ
クルミは「脳の形をしたナッツ」と呼ばれ、脳の健康を支える働きは豊富な栄養だけでなく、「腸脳軸」との密接な関係にもあります。長期的な不健康な食事やストレスは腸内細菌叢の乱れを引き起こし、有害菌が産生するエンドトキシンを増加させ、腸脳軸を通じて神経炎症を増幅し、認知機能低下を加速させる可能性があります。
クルミは有益な調整役を果たします。定期的に摂取すると腸内細菌叢の組成が改善され、乳酸菌やルーメノコッカス属などの有益な菌が増え、有害菌やエンドトキシンが減少することが研究で示されています。これにより、腸の透過性亢進による全身性炎症が軽減され、腸脳軸を通じて脳を守り、認知機能を間接的に支える可能性があると鄭博士は説明します。
クルミはオメガ3脂肪酸(主にα-リノレン酸)とオメガ6系不飽和脂肪酸のバランスが良く、ポリフェノール系抗酸化物質も豊富で、酸化ストレスや炎症の軽減に役立つと考えられています。複数の研究では、毎日約14gのクルミを長期的に摂取することで、認知機能や記憶力の向上が示されています。
ナッツを食べ過ぎると口の渇きや口内炎、ニキビなどが起こりやすくなり、中医学では「内熱」の症状とされています。しかし、クルミは脂肪酸のバランスが良いため、この問題が比較的起こりにくいと鄭博士は指摘します。ただし、腎機能が低下している人は、タンパク質、カリウム、リンを多く含むため、食べ過ぎると腎臓に負担がかかる可能性があり、注意が必要です。
シナモン
シナモンは料理の風味を高めるだけでなく、シンナムアルデヒド、プロアントシアニジン、フラボノイドなどのポリフェノール化合物を豊富に含み、強い抗酸化作用や抗炎症作用を持つとされています。
40件の研究をまとめた系統的レビューでは、ほとんどの試験でシナモンとその有効成分(シンナムアルデヒドなど)が記憶力や学習能力、全体的な認知機能の向上と関連し、神経変性に関わる酸化損傷や炎症反応を抑える可能性が示されました。
市販のシナモンの多くは中国桂皮(カシアシナモン)で、シンナムアルデヒド含有量が高く、クマリンも含まれています。長期間にわたる高用量摂取では肝機能に影響を及ぼす可能性があるため、日常的に使用する場合は、クマリン含有量が極めて少ないセイロンシナモン(本物のシナモン)が適しています。
脳修復の4つの核心原則
脳の保護は1つの食品だけで達成されるものではなく、全体的な生活習慣の改善によって実現されると鄭博士は強調します。体内の慢性炎症の負担を減らせば、脳はより安定した環境で本来の機能を発揮しやすくなります。
彼は脳の健康のための4つの核心原則をまとめました。
- 抗炎症食を実践する
- 血糖値を安定させる
- 健康的な腸内細菌叢を維持する
- 定期的な運動、十分な睡眠、マインドフルネスによってストレスホルモンを減らす
ハーバード公衆衛生大学院は10万5000人以上を30年間追跡し、さまざまな食事パターンが高齢期の健康に与える影響を調査しました。2025年に発表された結果では、健康的な食事原則に最も忠実に従っていた人は、75歳時点で健康を維持できる可能性が124%高かったことがわかりました。
この研究では、植物性食品を中心に、適度な量の健康的な動物性食品を加えた食事が高齢期の健康に有益であり、特に多価不飽和脂肪酸の摂取が70歳以降も良好な身体機能と認知機能の維持に役立つことが示されました。
一方、トランス脂肪酸、高ナトリウム食品、糖分を含む飲料を多く摂取していた人は、高齢期に認知機能や身体機能の低下を起こしやすいことがわかりました。
食事以外:心と意味の役割
鄭博士は、脳を守るためには栄養だけでなく、精神と感情のバランスも極めて重要だと強調しました。
マインドフルネスや瞑想などの実践は、ストレスを調整して心を安定させ、慢性炎症の主要な要因の一つを減らすのに役立ちます。
また、健康的な食事を「我慢」と捉えると過食のサイクルに陥りやすいと警告し、目的意識を持った習慣への転換を勧めました。
「自分の健康を維持して大切な人を守ることに焦点を当てると、より持続しやすくなります」と彼は言いました。
孔子の言葉を引用して、「心の欲するところに従えども矩を越えず」と述べました。
「内面的な明確さと自律性が高まれば、不健康な選択は自然と魅力を失います」と鄭博士は語りました。
(翻訳編集 日比野真吾)
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