股関節が変性していても、痛みが必ずしも股関節周辺に出るとは限りません。痛みは鼠径部、臀部、太もも、さらには膝にまで及ぶことがあり、筋肉や膝関節に問題があると勘違いしてしまうこともあります。
整形外科医が、股関節の変性を示す5つのサインに加え、股関節を動かすための簡単なトレーニングや日常のケア方法を紹介します。日頃からこうした点に注意することで、動く力を維持することにつながります。
股関節に問題があると4つの部位に痛みが出ることも
台湾の潤生リハビリテーションクリニック院長、王竣平氏はエポックタイムズの取材に対し、股関節の問題は見過ごされやすいと話しています。というのも、痛みが実際に問題のある場所に現れるとは限らず、鼠径部、太ももの外側、臀部、膝などにも痛みが出ることがあるためです。
鼠径部の痛み
股関節炎で比較的典型的にみられる痛みの場所で、通常は奥のほうに鈍い痛みを感じ、体を動かすと強くなることがあります。歩いたり階段を上り下りしたりすると、関節のこわばりや不快感を覚えることがあります。鼠径部の痛みは、軟骨のすり減りや関節唇の損傷など、股関節内部の問題を示すサインである可能性があります。
太ももの外側の痛み
股関節炎や股関節外側の腱炎などと関係している可能性があり、持続する鈍い痛みや灼けるような感覚として現れることがあります。長時間立ったり歩いたり、特定の姿勢を取ったりすると痛みが強くなることがあり、夜間に休んでいるときにも不快感を覚える人がいます。
臀部の痛み
長時間座った後に立ち上がると、特に痛みを感じやすくなります。中には、スムーズに歩き始めるまで少し時間がかかる患者もおり、腰や坐骨神経の問題だと思われることもあります。
膝の痛み
股関節炎によって、膝に「関連痛」が生じることもあり、膝関節そのものに問題があると勘違いしてしまうことがあります。王氏によると、臨床では股関節の痛みを訴える患者の約40%に、膝の痛みもみられます。
これは、股関節と膝の一部で神経の支配領域が重なっているため、股関節の痛みが「投射」されて膝に感じられることが関係している可能性があります。また、股関節の痛みによって歩き方や下肢への体重のかかり方が変わり、膝への負担がさらに増えることもあります。
王氏によると、股関節の問題を治療した後、膝の痛みも改善する患者がいるため、本当の痛みの原因を見つけることが重要です。
5つのサイン 股関節の変性に注意
痛みが出る場所だけでなく、日常生活での動作の変化からも、股関節の変性のサインが分かることがあります。東元総合病院の整形外科主治医、張耀元氏はエポックタイムズの取材に対し、年齢を重ねるにつれて股関節の軟骨も徐々に変性していき、長年使った自動車のタイヤがすり減るのと似ていると話しています。
次の5つの症状がある場合は、股関節に問題がないか注意してみましょう。
(1)鼠径部や太ももの付け根に痛みがある
(2)靴や靴下を履くのが難しくなり、体を曲げたり、腰をかがめたりする必要がある
(3)足を組んだり、あぐらをかいたりするのが難しい
(4)歩くときに足を引きずる
(5)夜、痛みで目が覚める
痛みによって歩行、睡眠、靴や靴下を履くといった日常生活に支障が出ている場合は、医療機関を受診して詳しく調べてもらうことが勧められます。
股関節のための5つの運動
変性のサインに注意するだけでなく、普段から簡単な運動を行うことで、股関節の可動性や安定性を維持することもできます。亞東紀念病院の整形外科・外傷科医師、陳鈺泓氏が、次の5つの運動を紹介しています。
1、ヒップリフト(ブリッジ)
仰向けになり、両膝を曲げて足の裏を床につけます。ゆっくりとお尻を持ち上げ、5~10秒間その姿勢を保ってから下ろします。お尻の筋肉が締まっていることを意識するのがポイントです。
作用:大殿筋を鍛え、股関節の安定性を高めます。
2、ヒップヒンジ
立った状態で、両足を肩幅に開きます。お尻を後ろに引き、上半身を少し前に傾けます。バランスを保つため、両手を前に伸ばしても構いません。ポイントは「股関節を曲げるのであって、腰を曲げるのではない」ことです。
作用:お尻と太ももの裏側の筋肉を鍛え、腰で動きを補うことを減らします。
3、前方へのランジストレッチ
片膝を床につき、もう一方の足を前に踏み出します。体をまっすぐにした状態で、骨盤をゆっくり前に押し出し、数秒間その姿勢を保ってから、左右の足を入れ替えます。
主な作用は、股関節を曲げる筋肉を伸ばし、股関節のこわばりを改善することです。
4、ワイドスクワット
両足を肩幅より少し広く開き、つま先をやや外側に向けます。しゃがむときは膝とつま先の向きをそろえ、自分の柔軟性に合わせてしゃがむ深さを調整します。
主な作用は、お尻と太ももの筋肉を鍛え、下肢の安定性を高めることです。
5、サイドレッグレイズ
立った状態で、両手を壁や椅子につきます。片脚を横に持ち上げ、骨盤が動かないように注意しながら、10~15回繰り返してから脚を入れ替えます。
主な作用は、股関節を外側に動かす筋肉を鍛え、日常の歩行や走ったり跳んだりする動作の安定性を高めることです。
陳氏は、毎日5~10分を目安に続けることで、股関節の不快感の改善につながる可能性があるとしています。痛みが2週間以上続いたり、次第に強くなったりする場合は、無理に運動を続けず、早めに整形外科を受診するよう勧めています。
日常生活で股関節をケアする
股関節を対象としたトレーニングだけでなく、日常生活での活動量、体重、食習慣も、関節や筋肉の機能に影響します。
陳氏によると、日頃の習慣を見直すことで、関節の病気を予防できる可能性があります。
1、健康的な体重を維持する
バランスの取れた食事と規則的な運動によって体重を管理し、関節への負担を減らすことが勧められます。研究では、標準体重の人と比べて、体重が多い人は座った状態から立ち上がる際に両脚をより広く開いて体を支える傾向があり、体を安定させるために股関節の筋肉にもより大きな力が必要になることから、股関節への負担が増える可能性が示されています。
2、バランスの取れた栄養を摂る
陳氏によると、コラーゲンは関節軟骨を構成する重要な成分で、鶏スープ、魚、卵などの食品から摂取することが勧められます。
カルシウムとビタミンDは骨の健康を維持するのに役立ち、関節に負荷がかかった際のダメージを抑えることにつながる可能性があります。食品では、乳製品や濃い緑色の野菜などから摂取できます。
サケ、アマニ、クルミなどにはオメガ3脂肪酸が豊富に含まれており、抗炎症作用があるとされ、関節炎のリスクを減らすことにつながる可能性があります。
3、適度に運動する
規則的な運動は、筋力や関節の安定性を維持するのに役立ちます。前述の股関節のトレーニングに加えて、水泳、自転車、ヨガなどの衝撃の少ない運動を選び、自分の体力に合わせて少しずつ取り組むことができます。
陳氏は、運動の姿勢が正しくない場合も関節への負担が増える可能性があるため、正しい動作を身につけ、適切な運動靴を選ぶよう注意を促しています。運動前に十分にウォーミングアップし、運動後には適度にストレッチやクールダウンを行うことも、関節のこわばりやけがを減らすことにつながります。
4、座る姿勢に注意し、長時間座り続けない
日常の姿勢にも注意が必要です。張氏によると、長時間にわたって脚を組んだり、猫背になったりすると、体に不均衡な力がかかる状態になりやすくなります。普段から「顎を引く、脚を組まない」と意識し、体をまっすぐに保つことで、より良い姿勢や重心を維持することができます。
関節軟骨は、体を動かした際に生じる圧力の変化を通して栄養を取り込むため、長時間まったく動かないことも避けたほうがよいとされています。同氏は、約50分座ったら立ち上がって体を動かし、給湯室まで歩くだけでも関節を動かすことができると勧めています。
5、負担を減らす
同じ関節を長時間繰り返し使い続けると、軟骨や関節の構造が早く変性する可能性があります。例えば、重い物を頻繁に運んだり、過度に運動したりすると、関節の摩耗や炎症につながりやすいため、適切に休息を取り、関節が十分に回復する時間を確保することが大切です。
(翻訳編集 華山律)
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