200歳のサメの目はなぜ衰えないのか 人類の目の老化研究への手がかり

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人の目は数十年使うと老化し始めます。では、200年使っても網膜がなお完全に保たれている目があるとしたらどうでしょうか。科学者たちは、まさにそのような目を見つけました。

カリフォルニア大学アーバイン校の博士課程学生エミリー・トム氏は、200歳のグリーンランドサメの目を調べ、高齢にもかかわらず網膜の各層がなお完全で、明らかな退化の兆候が見当たらないことを発見しました。暗闇で光を感じる視覚系も、なお機能していました。

この目は、なぜこれほど長い歳月に耐えられたのでしょうか。答えが見つかれば、人間の目ももう少し遅く老いることができるでしょうか。

この研究は今年1月、『ネイチャー・コミュニケーションズ』に発表されました。カリフォルニア大学アーバイン校は8月に研究成果を再び紹介し、サイエンスデイリーがその後報じました。
 

ほとんど見えなくなっていると思っていた しかし見当違いだった

グリーンランドサメは北大西洋と北極の冷たく暗い深海に暮らし、現在知られている最長寿の脊椎動物です。成長は極めて遅く、毎年およそ1センチしか伸びません。これまでの研究では、このサメは数百年生き、寿命は約400年に達し得ると推定されています。

しかし、その目は何百年も使えそうには見えません。多くのグリーンランドサメの角膜にはカイアシ類の寄生虫がつき、しかも弱い光の深海に長年暮らすため、科学者たちは以前、このサメの視力はかなり悪く、失明に近いのではないかと疑ってきました。

カリフォルニア大学アーバイン校の生理学・生物物理学准教授ドロタ・スコヴロンスカ=クラフチク氏は、奇妙なことに気づきました。グリーンランドサメの映像を見て、目が光のほうへ動くのを見つけたのです。

本当に見えないなら、なぜ目は光を追うのでしょうか。この疑問が、研究チームにこの「古い目」の実情を詳しく見る決断をさせました。
 

網膜は意外なほどよく保たれていた

研究者たちはグリーンランドサメの目を得ると、網膜の検査を始めました。通常の老化の法則では、長く生きるほど細胞の損傷は増えるはずです。人間を含む脊椎動物では、年齢とともに網膜の光受容細胞は徐々に減り、DNA損傷も少しずつ蓄積します。

グリーンランドサメでは、研究者が予想した状況は現れませんでした。顕微鏡下では、サメの網膜の各層はなお完全に保たれ、光受容細胞のある領域も、視覚信号を処理し伝える細胞層も残っていました。

研究チームはDNA切断もわざわざ探しました。この現象は通常、細胞死と組織の退化に関連します。しかし未処理のグリーンランドサメ網膜試料では、該当する兆候は見つかりませんでした。

論文は既存研究を引用し、人間の桿体細胞は毎年およそ0.2~0.6%減ると推定されると指摘します。研究者たちはそこで興味深い推計をしました。人が400歳まで生き、桿体細胞がこの速さで減り続ければ、そのころには半分以上、さらには九割以上を失っている可能性があります。グリーンランドサメは、この筋書きには沿っていないようです。
 

秘密はDNA修復にあるのかもしれない

グリーンランドサメの目はこれほど長い時間を経ても、なぜこれほどよく保たれるのでしょうか。研究者たちは、さらに追う価値のある手がかりを見つけました。DNA修復です。

細胞は毎日損傷を受け得ます。長く生きるほど、理論上は問題の蓄積も増えます。修復の速さが損傷の速さに追いつかなければ、細胞の機能は徐々に落ち得るのです。

研究チームがグリーンランドサメ網膜の遺伝子活動を分析すると、DNA修復に関わる複数の遺伝子が活発なままで、その中にERCC1とERCC4が含まれていました。そこで研究者たちは一つの可能性を示しました。より強いDNA修復能力が、グリーンランドサメの網膜が長い生涯で損傷を直しつづけ、退化を遅らせる助けになっているのかもしれない、というものです。

ただし、功績をすべてDNA修復に帰すことは、いまはできません。グリーンランドサメは年中冷たい海水に暮らし、代謝はとても低く、これ自体が細胞の衰えを遅らせてもいます。数百年生き、目も長く完全でいられるのは、複数の生理的仕組みが共に働く結果である可能性が高いです。
 

人間の目も、もう少し遅く老いることができるか

これが、この「古い目」を調べるうえで最も人を引きつける点です。年齢とともに網膜も徐々に老化し、加齢黄斑変性などの眼病のリスクも高まります。

グリーンランドサメがこれほど長い生涯で網膜を守る仕組みが分かれば、科学者たちは人間の視覚老化でまだ気づいていない保護の仕組みを見つけ、年齢に関連する網膜疾患の研究へ新たな方向を示し得ます。

しかし、「人の目を抗老化させる」までには、まだ長い道があります。研究は人間で目の老化を遅らせる方法を見つけておらず、特定の遺伝子を人間の眼病治療に直接使えることも証明していません。

 

(翻訳編集 日比野真吾)

楚方明