31歳の周さんが診察室に入ってきたとき、彼女は眉間にしわを寄せていました。「先生、頭が痛くて、もうどうしたらいいのか分かりません」
彼女はこれまで神経内科を受診し、脳の検査も受けましたが、いずれも異常はありませんでした。鎮痛薬を飲むと多少は楽になるものの、薬の効果が切れると、また痛み始めます。頭痛は、頭をきつく締め付ける輪をはめられたようで、後頭部から頭の側面へと広がり、ときには眼窩の奥が圧迫されるような感覚もあるといいます。
台湾の潤生復健科診所院長、王竣平氏は、エポックタイムズの取材に対し、この症例を紹介しました。
王氏は周さんに尋ねました。「頭痛が始まる前に、肩や首がこわばることはありますか? 長時間うつむいていることが多いのではありませんか?」
周さんは一瞬驚き、「先生、どうして分かったんですか? 毎日パソコンを見ていて、首がすごくこっています」と答えました。
さらに詳しく調べたところ、周さんの頭痛は首の動きによって変化し、肩や首、後頭部の付け根にある筋肉も非常に緊張していることが分かりました。王氏は、頸性頭痛と判断しました。X線検査では、まだ31歳の周さんの頸椎に複数の骨棘ができており、その位置から、頸椎の神経を圧迫している可能性も考えられました。
治療は、過度に緊張した筋肉をほぐし、神経への圧迫を軽減することから始めました。王氏は超音波で位置を確認しながら、低濃度のブドウ糖液を後頭下神経の周囲に注射し、周辺組織による神経への圧迫を和らげました。1週間後、周さんの頭痛は明らかに改善し、仕事への集中力や睡眠の質も向上しました。
その後、王氏は周さんに、首の深層筋や肩甲骨周辺の安定性を高めるトレーニングを指導するとともに、パソコンを使うときの姿勢も調整しました。周さんはこのとき初めて、肩や首の不調は、ただマッサージを繰り返すだけでは解決できないのだと気づきました。
王氏は彼女にこう伝えました。「マッサージは一時的に楽にしてくれるだけです。本当に頭痛を減らしたいなら、頭の重さを支えられる体を自分でつくることが大切です」
4週間後の再診で、周さんはうれしそうに話しました。「先週、頭が痛くなったのは1回だけでした。鎮痛薬を何度も飲みたいと思うこともなくなりました」
なぜ首の問題が頭痛を引き起こすのか?
晨星物理治療所の院長、陳季揚氏はエポックタイムズの取材に対し、頸性頭痛とは簡単にいうと、痛みの原因は首にあるのに、痛みを感じるのは頭部である頭痛だと説明しています。
研究によると、上部頸椎と頭部・顔面の痛みの信号は、神経系の中で合流します。そのため、首に生じた痛みが後頭部に現れたり、額や目の周囲にまで広がったりすることがあります。
陳氏によると、頸椎の関節の動きが制限されていたり、首の筋肉が長時間にわたって緊張し、大きな負担がかかり続けたりすると、このタイプの頭痛が引き起こされる可能性があります。
うつむいた姿勢や長時間の座り仕事、首のけががある人は注意
王竣平氏によると、長時間うつむくことや座り続けること、過去に首をけがしたこと、あるいは首に変性が生じていることなどは、頸性頭痛が起こる可能性を高める要因です。
長時間うつむくことや座り続けること:パソコンを使ったり、うつむいてスマートフォンを操作したりすると、頭が前に突き出た姿勢になりやすく、首への負担が増えます。長距離運転では、同じ姿勢を保つことに加えて、継続的な振動も加わるため、首の筋肉が長時間緊張しやすくなります。
頸椎の変性や過去のけが:頸椎の変形性関節症、骨棘、椎間板ヘルニアなどの問題は、周囲の組織や神経を刺激する可能性があります。また、交通事故やスポーツによるけがで起こる「むち打ち症」も、頸性頭痛の原因になることがあります。むち打ち症とは、首が急激に大きく振られることで、筋肉や靱帯などの組織が損傷する状態です。
頸性頭痛を見分ける2つの手がかり
陳季揚氏によると、頸性頭痛にはいくつかの特徴があり、初期判断の手がかりになります。ただし、これらの特徴だけで自己判断し、診断を確定することはできません。
頭痛に首の不調を伴う:頭痛が起きたとき、首のこわばりや痛み、動かしにくさなどを伴うことがよくあります。
首の動きによって頭痛が変化する:首を左右に回す、上を向く、下を向く、あるいは首を同じ姿勢に長時間保つことで、頭痛が誘発されたり、悪化したりすることがあります。
頸性頭痛・片頭痛・緊張型頭痛の違い
王竣平氏によると、頸性頭痛、片頭痛、緊張型頭痛は混同されやすく、いずれも首の不調を伴うことがあります。そのため、1つの症状だけで判断することはできません。
- 頸性頭痛:通常は同じ側に痛みが現れ、後頭部から前方へと広がります。鈍い痛みや引っ張られるような痛みを感じ、首のこわばりや動かしにくさが目立ちます。同じ側の肩や腕に痛みを伴うこともあります。
- 片頭痛:片側に起こることが多いものの、左右が入れ替わることもあります。脈打つような痛みが特徴で、吐き気や嘔吐、光や音に対する過敏さを伴うことが一般的です。
- 緊張型頭痛:両側に起こることが多く、圧迫されるような感覚や締め付けられるような感覚があります。頭をきつく締め付ける輪をはめられたように感じることもあり、首や肩の筋肉の緊張を伴う場合もあります。
注目したいのは、先ほどの症例に登場した頸性頭痛の周さんも、頭痛を「きつく締め付けられるような感じ」と表現していたことです。そのため、痛みの感じ方だけでは頭痛の種類を判断できません。痛む場所や首の症状、首の動きによって頭痛が変化するかどうかなどを踏まえ、医療の専門家が総合的に判断する必要があります。
頸性頭痛を和らげる方法
陳季揚氏によると、医療的な対応が必要なほかの原因が除外されている場合は、無理のない首の運動や日常の姿勢の見直しから始めることで、頸性頭痛の軽減につながる可能性があります。
- あごを軽く引く:頭を無理に下へ向けるのではなく、頭全体を水平に後ろへ引くようにイメージします。首の後ろが軽く伸びる程度で十分です。
- 首を適度に動かす:痛みが出ない範囲で、ゆっくりと左右に首を回したり、上や下を向いたりします。
陳氏は、「どの筋肉がこっているのか」だけに注目し、その部分を繰り返し押し続けないよう注意を促しています。長時間座ったまま仕事をしたり、うつむいた姿勢を続けたりすることが原因に関係している場合は、同じ姿勢を長時間保たないことがより重要です。一定の時間ごとに立ち上がって体を動かし、姿勢を変えるようにしましょう。
ただし、頭痛の原因は人によって異なるため、これらの動きが誰にでも適しているわけではありません。特定の動作によって頭痛が明らかに悪化したり、めまい、吐き気、手足のしびれや脱力などが現れたりした場合は、すぐに中止してください。無理にストレッチやマッサージを続けないことが大切です。
リハビリや姿勢の調整に加え、患者によっては薬物療法、注射、神経ブロックなどの治療が必要になることもあります。どの治療が適しているかは、頭痛の原因や病状に応じて医師が判断します。
こんな頭痛は、よくある頭痛だと思い込まないで
陳季揚氏によると、頭痛を繰り返したり、なかなか改善しなかったりして、仕事や睡眠、日常生活に支障が出ている場合は、医療機関を受診して原因を調べてもらうことが勧められます。
これまで経験したことのない激しい頭痛が突然起こった場合や、意識の変化、ろれつが回らない、視力の異常、手足の脱力やしびれ、歩行時のふらつき、繰り返す嘔吐などを伴う場合は、速やかに医療機関を受診してください。頭や首をけがした後に強い頭痛が現れた場合も、詳しい検査が必要です。
陳氏は、頭痛の原因はさまざまであるため、まず痛みの原因となっている部位を確認し、そのうえで適切な対処法を選ぶことが、自己判断でマッサージやストレッチを行うよりも重要だと注意を促しています。
(翻訳編集 華山律)
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